With/Afterコロナ時代に求められるIT機器について ~レイアウト意匠の活用方法~

第1弾でレイアウト意匠権については少し触れたが、第3弾の今回は「レイアウト意匠とは?」「レイアウト意匠の活用方法は?」というご質問に対し、セイコーエプソンの事例を基に答えていきたいと思う。

近年、この意匠取得にいち早く取り組んでいる企業の一つが長野県にあるセイコーエプソン株式会社である。3月の発売と共に業界をざわつかせた「大判インクジェットプリンター新製品の意匠権取得の背景」について今回特別に話を聞いた。

エプソンに聞く レイアウト意匠権取得の背景

2020年4月1日に国内における改正意匠法が施行されました。この改正意匠法により、意匠法の保護対象が拡充され、新たに建設物の外観や内装デザインの意匠登録が可能となりました。これを弊社ではイメージしやすいように「レイアウト意匠権」と呼んでいます。レイアウト意匠権により、モノそのもののデザインだけでなく、建物内に配置した独創的なレイアウトについても意匠登録ができるようになりました。

アップルやダイソンなどの欧米企業が、自社独自の技術や強みをデザインで表現し、製品価値や企業価値を高め自社ブランディングを行っている一方で、「日本企業はデザイン力を生かしきれていないのではないか」と有識者会議にて課題提起されたことがありました。それをきっかけに、日本でもレイアウト意匠が必要だと考えられるようになりました。

例えば欧米では、アップルは独創的な空間を「アップルストア」として展開しブランディングを行っており、その店内はレイアウト意匠として保護され、保護されていることにより独創性を維持しています(図1)。しかし当時の日本では、レイアウトを意匠権で保護できず、空間デザインの創作力の促進やブランディングにつながっていない現状がありました。そのような状況を踏まえ、最終的には欧米同様にレイアウトが意匠権の保護対象となりました。

図1:Apple Inc, Cupertino, CA,(US)の米国意匠権

改正意匠法により、新たにレイアウトが意匠権の保護対象となったことで、エプソンのプリンターを用いたレイアウト意匠が大判プリンター市場初の登録となりました(注1)。その商品がSC-T7750Dです。

この商品はスタンドと本体が一体となったシンプルでスッキリしたデザインとなっており、お客様のさまざまな設置環境にマッチします。このプリンターの設置レイアウトの独創性を確認するため、レイアウト意匠の出願を行いました。その結果、国内外の公知意匠と比較しても新規性があり・創作が容易でないことが特許庁により認められ、下記14点の登録につながりました。

  • (注1)2021年12月12日時点で公開されている内装意匠の日本意匠登録公報において、大判プリンター市場では初(エプソン調べ)。

図2:SC-T7750Dの外形寸法

エプソンのレイアウト意匠登録

これらのレイアウト意匠は、SC-T7750Dおよび同等デザインのエプソンプリンターの設置レイアウト時に、自由にご使用いただけます(購入・リースを問わず)。また、上記レイアウト意匠を用いず、従来通りお客様の使用環境に合わせて自由に設置いただくことももちろん可能です。

この製品の魅力の一つがレイアウトです。その魅力をお客様に伝えたく意匠登録を行い、従来にはなかった独創的なレイアウトの裏付けとなり、自信を持ってお客様に提案ができるようになりました。登録事例を公開することで、お客様自身で自らの使用環境に最適なレイアウトを創作するきっかけになればと期待しています。

また、レイアウト意匠の出願を通じて「製品を使った『効率的な作業環境』や『使いやすい環境』を創造・ご提案する」という社内意識強化の狙いもありました。そこで、さまざまな部門の代表者約30人が集まり、お客様の使用環境や要望を基に設置レイアウトを検討も行いました。

今回のレイアウト意匠登録により、新しい製品を作り・お届けするだけではなく、環境提案への社内意識もかなり高まったなと感じています。

エプソンでは、今後もモノづくりやモノを用いた使用環境の提案・提供に組んでいきます。是非ご期待いただければと思います。

第1弾は「デザイン」、第2弾は「遠隔」に続き、第3弾は「レイアウト意匠」をテーマにお届けしてきた。いかがだっただろうか?

意匠権という言葉はあまり聞きなれない言葉かもしれないが、今回その魅力・価値に少しでも気付いてもらえたらこの上ない。きっと新たな発想やビジネスにつながっていくこともあるだろう。モノがあふれている現代、コトでの販売訴求は大変重要になってきているのだとあらためて感じる。今回の事例は多くの企業・担当者に参考にしてほしいと思う。

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