主な内容
- 一般的なPCとワークステーションの違い
- ワークステーションを構成するパーツCPU
- 3D CADに適したワークステーション
業務には適した性能を持つワークステーションを使おう
ビジネス・プライベートを問わず、今ではあらゆるシーンで使われているパソコン。特にビジネスシーンでは、これがないと仕事にならないほど重要なツールになっていますが、実際にパソコンを購入する際、皆様は利用目的に合わせて選定されていますか?
パソコンは、CPUやグラフィックボードといった多くのパーツで構成されていますが、それらが適した性能を持つものでなければ、思うようなパフォーマンスが得られない場合があります。特に3D CADの利用では、設計データを開けなかったり、動作が遅かったりなど、業務に支障をきたす事態を招きかねません。
確実な運用には、業務利用を想定して設計された「ワークステーション」が最適です。そこで今回はワークステーションを構成するパーツの最新情報と3D CADを利用するうえで重視すべき要素をご説明します。
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最近では高精細なCG映像を描画できるゲーミング用マシンなど、ハイスペックな性能を持つパソコンも多く存在します。ワークステーションも業務利用を想定した高い処理能力を搭載していますが、それだけではありません。
3D CADなどの業務用アプリケーションの利用に適したグラフィックボードの搭載や高負荷・長時間利用への耐久性・安定性に配慮した設計など、一般的なパソコンと異なる特長があります。
パソコンにおける「頭脳」に例えられるCPUは、パソコン上の命令を解釈して実行する最も需要なパーツです。主要なメーカーとしてIntelとAMDがあります。
Intel社製のCPUでは、一般利用から業務レベルまで幅広い用途で利用されている主流製品「Intel Coreシリーズ」や業務用ワークステーション・サーバー向けの「Xeonシリーズ」といったCPUがあります。
Intel Coreシリーズは、さらにCore3~Core9と異なるシリーズがあり、エントリーからハイエンドレベルまで用意されています。
Celeronシリーズ Pentiumシリーズ | メール、簡単な事務作業、インターネット閲覧など | ||
---|---|---|---|
Coreシリーズ | エントリー | Core 3 | 性能を抑え、低価格化を実現したCPU |
ミドル | Core 5 | ビジネス向け環境に多く利用。動画編集、画像処理などの業務にも利用可能 | |
ハイエンド | Core 7 | ゲームプレイや3D CG、3D CAD、高負荷の業務に対応 | |
Core 9 | Coreシリーズの最上位モデル。高負荷な業務に対応 | ||
Xeonシリーズ | Aディープラーニング、画像映像編集イラスト作成、3D CAD、高度なシミュレーション、サーバー運用などの業務向け |
CPUの性能は主にクロック数、コア数、スレッド数に依存します。
クロック数はCPUが1秒間に処理できる回数を示す値(GHz)になり、プロセッサーの処理速度を表します。Intel社のCPUではターボブーストテクノロジーにより、定格の周波数よりもさらに早くCPUを動かして高速処理できるものもあります。
コア数はCPUの核となる部分になり、コアが多いほど同時により多くの命令を並列処理できます。クロック数は向上が難しいため、近年のCPUではコア数を増やすことでCPU性能を向上させることが主流になっています。
また一つのコアを仮想的に二つのコアに見せかけ、二つのスレッド(命令)を処理できるマルチスレッティング機能を搭載したCPUでは、コア数以上のスレッドを並列処理できます。
CPUには世代があり、新しい世代になるにつれて性能が向上します。ワークステーションでは、最新のCPUを搭載している製品が多く存在します。
第12世代のIntel Coreシリーズでは、2種類のコアが組み合わさった「ハイブリッドアーキテクチャ」デザインを採用し、高性能な「P-コア」と高効率の「E-コア」を搭載したCPUが登場しました。E-コアは省スペースでコアを増やせるため、従来よりも多くのコアを搭載できます。
動画編集やゲーム、3D CADなどの負荷の大きな処理をP-コア、ダウンロードやウイルスソフトなどバックグラウンドで行われる処理をE-コアで行うことで、コアによる処理を効率化し、処理速度が向上します。
同じく第12世代のIntel Coreシリーズで搭載された「インテル・スレッドディレクター」では、ハイブリッドアーキテクチャのCPUに対して負荷の大きな処理をP-コアに、負荷の軽い処理をE-コアに自動で割り振り、より効率的にタスクを処理できるようにします。
パソコンの処理を引っ越しに例えると、力持ちのスタッフに重い荷物を割り振り、一般のスタッフに軽い荷物や軽作業を割り振る……というイメージで、力持ちのスタッフに効率的に働いてもらえます。
処理の割り振りはOSが行いますが、インテル・スレッドディレクターは処理内容や各コアの使用率を監視し、各コアに適切な処理を割り振れるようサポートします。インテル・スレッドディレクターはWindows 10環境でも機能しますが、Windows 11環境で利用することで、最も高いパフォーマンスを発揮できます。
最新の第13世代 Intel Coreシリーズでは、E-コア増加、ターボブーストクロックの引き上げなど、ハイブリッドアーキテクチャが相当進化しています。インテル・スレッドディレクター機能も改良され、さらに効率的にコアを利用できるようになっています。
CPUが多数のコアを搭載していても、アプリケーションが対応していなければマルチコアは使われません。SOLIDWORKSでは一部処理でマルチコアに対応していますが、モデリング中の計算など基本的な処理はシングルコアで行います。
マルチコアに対応しているのは次のような処理です。
解析やレンダリングを高頻度で使用する場合は、コア数の多いCPUが有効ですが、設計やモデリングを中心とした使用では、コア数よりもクロック数の高いCPUの方が作業効率が高くなる場合があります。
グラフィックボードは画像・映像処理に特化したパーツになり、CGや3D CADソフトを使用する場合は必須の要素になります。グラフィックボードには「NVIDIA GeForce」シリーズに代表されるゲーミングパソコン向けと「NVIDIA RTX」シリーズなどの設計やデザインといったプロフェッショナル向けのものがあります。
単純な性能スコアだけを見ると、同じ価格帯ならGeForceシリーズの方が高いスペックのものがあります。しかし、GeForceシリーズはグラフィックスAPIに「DirectX」を使っており、3D CADなどの「OpenGL」を使っているアプリケーションには最適化されていません。一定以上の性能であれば起動はできるでしょうが、思うようなパフォーマンスが出せないなど、安定性に欠けます。
ワークステーションでは、ほとんどの製品でプロフェッショナル向けのグラフィックボードを搭載しています。
コンシューマモデル | プロフェッショナルモデル | |
---|---|---|
主な用途 | ゲーミングパソコン | 3D CAD・クリエイティブ作業 |
シリーズ名 | NVIDIA GeForceシリーズ | NVIDIA RTX Adaシリーズ NVIDIA RTX Aシリーズ NVIDIA Tシリーズ(旧NVIDIA Quadroシリーズ) |
Radeon RXシリーズ | Radeon Proシリーズ | |
カラー | RGB 各色10Bit 約1,677万色 | RGB 各色8Bit 約10億6,433万色 |
グラフィックスAPI | DirectX | OpenGL |
SOLIDWORKSでは、NVIDIA製のグラフィックボードに組み込まれている並列計算機能「CUDA」に対応しており、機能を有したグラフィックボードを使用することでより高いパフォーマンスを得られます。レンダリングツールSOLIDWORKS Visualizeでは、CPUとGPUを併用した処理を行うことができ、より速いレンダリング出力が可能です。
CAD画面では、グラフィックボードによる処理を行うオプション設定によりモデルの描写性能を向上できます。モデルの移動・回転させたときのフレームレート(1秒間で表示を更新する回数)を改善し、よりスムーズな画面操作ができるようになります。
SOLIDWORKS RXで実行できるベンチマークテストの結果を比較してみます。比較マシンには、SFFとZ4を使用します。
CPU | Intel Core i9-12900 |
---|---|
コア数 | 16コア(Pコア8、Eコア8) |
クロック数 | Pコア:3.20~5.10GHz Eコア:2.40~3.90GHz |
グラフィックボード | NVIDIA RTX A2000 |
CPU | Intel Xeon W3-2425 |
---|---|
コア数 | 6コア |
クロック数 | 3.00~4.40GHz |
グラフィックボード | NVIDIA RTX A4500(20GB) |
HP Z4の方が上位シリーズであるXeon CPUを搭載していますが、HP Z2のCore i9の方がクロック数やコア数の高いCPUになります。そのため、クロック数が影響するプロセッサー項目やマルチコアに対応しているSimulation項目ではHP Z2の方が速い結果となっています。
反対にグラフィックボードについては、NVIDIA RTX4500とHP Z4の方が高性能なものを搭載しているため、レンダリング項目やVisualize によるGPUを使った処理でHP Z4の方が速い結果となっています。
3D CADではモデルの描画やCPU処理、解析、レンダリングとさまざまな負荷が発生するため、高性能なCPU、GPUを搭載するほど快適な環境での作業が可能になります。
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業務で利用するワークステーション環境の解説
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