ラティス・テクノロジー株式会社 鳥谷浩志社長直筆コラム
XVLは単なる軽量3D表現ツールではない!
製造業の競争力を支える全社3Dデータ活用を考える上で、データを軽量化することがますます大事になってきています。XVLという軽量化技術が誕生して既に14年が経ちましたが、この間にパソコンも64ビット化し、数ギガバイトという大きなメモリも当たり前のように搭載されるようになりました。
ネットワークも電話回線からADSL、光回線、さらにはLTEのように無線でもブロードバンド環境が提供される時代になりました。しかし、なぜこのようにハードウェアやネットワーク性能が格段に向上した時代に3Dデータの軽量化が必要なのでしょうか?3DCADデータをそのまま使ってしまえばよいのではないでしょうか?
3Dデータ軽量化の必要性
図1は三菱農機株式会社で設計したコンバインの3Dデータを示しています。全部品の細部まで3D設計した場合、およそ2GBのデータ量になるそうです。このデータ量をCADでサクサクと表示することは非常に困難です。一方、軽量なXVLでは約30MBとなり、ノートPCでも表示できるサイズになります。実際、最近のノートPCは高性能なグラフィック処理ができるので、かなり軽快な表示も可能でしょう。
![図1:3DCADデータとXVLの容量比較(データ提供:三菱農機株式会社様)](//oi.otsuka-shokai.co.jp/cw/topics/feature/lattice/img/140130_3ddata_02.jpg?sr.dpm.path=pc868sp618)
図1:3DCADデータとXVLの容量比較(データ提供:三菱農機株式会社様)
データ共有はCAD用パソコンだけではない
全社での3Dデータ活用を考えたとき、設計部門にあるCAD用のパソコンではなく、普段はメールやExcelしか使わないようなオフィスや工場にあるパソコンで3Dデータ処理ができなければなりません。間もなくマイクロソフト社が Windows XP サポートを打ち切るということで、ようやくマシンの置き換えが進んではいますが、継続して使用するという製造現場も多いのではないでしょうか?
データを軽量化することで、このような環境でも3Dデータの活用が可能になります。Webで3Dデータを共有したり、Excelで部品表と連携して3D表示させるといったことが可能になります。
さらに、最近はアップル社のiPadに代表されるタブレットPCの台頭があります。タブレットPCは携帯性を高めるためにできるだけ軽く、そして省電力に設計され、低コスト化も必須です。当然、性能やメモリ容量にも制限が出てきます。ここでもXVLの軽量性が活きてくるのは当然のことです。工場やサービス部門がiPadやiPhoneで3D形状を参照しようとすれば、軽量化が必須になるわけです。
では、これまでのデータの軽量化が必須となる話をまとめてみましょう。
- 3D設計の普及によるデータの大容量化
- 後工程に残された貧弱なパソコン環境での3D活用
- 台頭するタブレットPCでの3D表示
データの軽量化ができれば十分なのか?
実は、設計者が入力する情報と生産技術や工場やサービス部門といった後工程の人たちが必要する情報は異なっています。設計者は製品形状と製品の構成情報を入力します。一方、工場では製品を組み立てる手順や発注単位、サービス部門ではモジュールや部品の交換の単位といったように、見たい情報のくくり方が違うのです。
つまり、CADの3Dデータをそのまま後工程に渡すと、製品形状は理解したとしてもそれ以外の情報は見たい状態にはなっていないのです。
データ軽量XVL導入前後における工程検討の変化
図2をご覧ください。三菱農機株式会社において、XVL導入後に工程設計がどのように変わったかを示しています。
![図2:三菱農機株式会社における工程検討の手法の変遷](//oi.otsuka-shokai.co.jp/cw/topics/feature/lattice/img/140130_3ddata_03.jpg?sr.dpm.path=pc868sp618)
図2:三菱農機株式会社における工程検討の手法の変遷
現場の見たい形で情報を伝える仕組み
工程設計の見える化が可能になったのは、XVLの中に組立手順を表現する仕組みがあるからです。
- どういう単位で部品を調達するか
- どういう手順で組み立てていくか
- どのような軌跡で部品を組み付けるのか など
このように定義しておけば、工場の人は自分がどのような手順で製品を組み上げていくのかを直感的に確認できます。まさに、後工程の人が見たい形で情報を伝達することができるのです。
各部門の見たいに応えるXVL
このような情報のくくり方をITの世界では、BOM(Bills of Material:部品表)とよばれます。
それぞれの部門が独自の部品表を持ち、製品設計と製造を進めていました。それらのデータを3Dと統合するには大変高価なPLMシステムが必要でした。一方、XVLには製造の部品表に加え、サービスの部品表も表現する機能があります。3Dデータと部品表のデータを統合するだけで、高価なシステムと同等の情報を安価に入手できるのです。
軽量3D表現から情報インフラへと進化
CADの軽量表現として誕生したXVLはいかにCADデータを忠実に再現するかが大きな課題でした。そして今、CADでは表示できない大規模3Dを扱い、部品表の構造までもカバーするようになり、CADでは見えないものを見える化するまで進化を遂げたのです。
このように後工程が必要とする形で、3D情報を展開できるようになったXVLは3Dデータ活用の情報インフラへと進化しました。まさに、グローバルに拡大する製造業が情報武装する際になくてはならない武器になったのです。
次回からは具体的な3D活用の嬉しさを見ていきましょう。
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