3Dプリンターで治具を作るメリット
製造現場において、3Dプリンターの用い方は大きく二つに分かれます。試作品やモックアップの作成に用いる場合とDDM(実製品)の作成に用いる場合です。今回は、DDMの中でも治具の作成に3Dプリンターを用いるとどのようなメリットが生まれるのかを事例と共にご紹介します。
治具を3Dプリンターで作るメリット
- 軽量化:軽い治具だと体の負担を減らせるため、ヒューマンエラーの削減につながる
- 最適化:角を丸くしたり、持ちやすい形に仕上げたりできるため、けがの予防や作業の効率化に
- 早く作れる:製造現場が遠隔地の場合、治具データを送り、類似した材料で3Dプリンティングすれば治具が完成する。現物を送る時間やコストを削減できる
これからのメリットからもたらされる効果は、「新たなアイデアやワークフローの改善が生まれる」ことです。「治具をこうしたら作業がしやすい」「こんな形はどうか?」という小さな声をすばやく形にし、トライ&エラーを繰り返すことで現場の改善というベネフィットにつながります。
実例 ~3DプリンターでDDMを作成~
機械設計業務を主体としているトライエンジニアリング様は、Stratasys F370で樹脂製治具を作成されました。重い金属でできていたスタッドボルト溶接位置合わせ治具を樹脂製治具にすることで、軽さと耐久性を実現。また、取っ手の位置も作業者が使いやすいように前面に施しています。
エンブレム貼り付け位置合わせ治具では、持ちやすく、視認性の良い色に仕上げました。
エンブレム貼り付け位置合わせ治具
日置電機株式会社様では、開発初期段階で製品のデザイン検討のために、カラー出力できる3Dプリンターでサンプルを出力(写真の例はハンディテスタ)。実製品に非常に近いカタチで仕上がるため、実際に手に取り、持ちやすさや表記内容、操作性などの評価・改善がしやすくなります。
ハンディテスタ(左)とサンプル(右)
使える治具を作るには…
日置電機株式会社様のテスタ事例を除き、そのほかのDDMは、FDM方式(熱溶解積層法)を採用しているStratasys FORTUSシリーズで作成されました。FDM方式とは、1980年代後半にStratasysが特許を取得した造形方式で、ABSやポリカーボネートなどの実製品と同じ工業用樹脂素材を用いて、耐久性や耐熱性などに優れた治具を作成できる点です。
- ABS:耐高張力、衝撃強度、曲げ強度、環境安定性に優れる。
- ASA:耐候性があり、表面の美観に優れる。
- ポリカーボネート:耐熱性に優れる。
- ナイロン12:耐疲労性、衝撃強度、耐薬品性に優れる。
- ULTEM1010:耐熱性、耐薬品性に優れる。
FDM方式を採用しているF370レビュー
2018年2月に行われた実践ソリューションフェアにて、F370を触ってみました。
F370はPLA、ABS-M30、ASA(注1)、PC-ABS の4 種類のモデル材に対応し、0.330 mm、 0.254 mm、 0.178 mm、 0.127 mm の4 種類の積層ピッチ(注2)から選択できるプロフェッショナル3Dプリンター。
第一印象は、プロフェッショナル独特の圧がない…と感じました。そして、造形中にも関わらずとても静か。オフィスにも置けるサイズと静粛性を備えていると感じた。
- (注1)ASAは2018年中対応予定。
- (注2)PLA 使用時は0.254 mmのみ対応。
W 864×D 711×H 1,626mm /215kg
操作性については、タッチパネル上に完成サイズや完成までの時間、使用している素材情報が示され、シンプルな操作性で初心者の方にも非常に分かりやすい。
プリンティングモードが二種類(ドラフトモードと標準モード)あり、ドラフトモードは標準モードよりも平均して3 分の1 の材料の消費で、かつ約2倍のスピードでの造形できる。
見やすい高さにあるタッチパネル
材料の交換は引き出し方式。1・2のケースには素材を2種類まで格納でき、3・4にはサポート材を格納できる。材料の交換には、ノズル口の付け替えなどの調整が必要だが、F370で自動で位置調整をしてくれるため、人が調整する必要はなく、テスト出力も不要とのこと。
交換にあたり、位置調整はF370が自動調整してくれる
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