3Dプリンターの治工具活用・静電気放電対策

3Dプリンターの治工具活用課題

いまや3Dプリンターで試作や機能確認用モデルを作ることは珍しくない光景となり、最近は治工具なども3Dプリントされる方が増えてきています。リードタイムやコスト削減だけでなく、人間工学に基づいた設計による作業者の負担軽減、最適化設計による軽量化なども注目されています。

しかし、3Dプリンターで作成した治工具を活用する中で、使用ケースによっては静電気放電による弊害が課題として挙げられています。

静電気放電の弊害

電子部品とアセンブリの多くは、ESD(静電気放電)により損傷を受けたり、性能が低下したりする恐れがあります。また、帯電したゴミ・ホコリ・ダスト・ちり・製造現場で発塵した微粒子は、静電気で表面に引き寄せられ、付着する原因にもなります。

これにより、後工程で部材の品質を損なう原因となるほか、ダウンタイム増加・生産停止・不良率増加などの原因につながる恐れがあります。

3Dプリンターで一般的に使われているABS樹脂は絶縁体のため帯電しやすく、静電気対策が必要な環境では活用が難しいという課題があります。

Stratasys社製ABS-ESD7樹脂でできること

Stratasys社の3Dプリンター用材料「ABS-ESD7」樹脂はABS樹脂にカーボン粒子を配合した静電気散逸性材料です。表面抵抗値は「10(6)-10(9)ohms」(注1)となり、除電に適切な静電気散逸性を持っています。

このABS-ESD7樹脂を使うことにより、3Dプリントの強みである最適化設計を静電気対策が必要な環境でも生かせます。また、水溶性サポートに対応しているため、造形後のサポート除去を考えずに自由設計ができ、3Dプリントのメリットを生かした治工具作成が可能です。

以前はStratasys社製ハイエンドFDM 3Dプリンター「Fortusシリーズ」でしか対応していなかったABS-ESD7樹脂ですが、現在はFortusシリーズよりもオフィス環境で使いやすく安価なStratasys社製 FDM 3Dプリンター「F370」でも対応するようになり、よりお求めやすい材料となりました。

ABS-ESD7で作った基盤の固定治具

  • (注1)カッコ内の数字は累乗を表す。