【USB経由の脅威と対策】3Dプリンターを守るOTセキュリティ

エアギャップでは防げない。USB経由の攻撃を止めるOTセキュリティ

3Dプリンターの運用で見落とされがちなリスクがあります。それは、設計データを転送する際に使うUSBメモリーです。PCがクリーンでも、3Dモデル(スライスデータ)を3Dプリンター本体へ転送する際に使用するUSBメモリーこそが、製造現場(OT環境)への最大のマルウェア侵入経路になっていることをご存知でしょうか?

本記事では、オフライン運用に潜む危険性と、USB経由の脅威を防ぐためのOT専用セキュリティ対策を解説します。

USBが最大の侵入経路となる理由

USBメモリーは、設計データの転送に不可欠ですが、同時にマルウェア感染の「最短ルート」でもあります。

外部業者の持ち込みリスク

保守担当者や外部ベンダーが持ち込むUSBが感染している場合、検査なしでOT環境に侵入します。

社内での使い回しによる汚染

社内で共用されるUSBが別の現場で感染し、「中間媒介」となるケースが多数報告されています。

エアギャップは本当に安全?

「ネットワークから隔離されているから安全」という考え方は危険です。エアギャップ環境でもUSB経由でマルウェアが侵入し、システムに常駐する事例は多くあります。

特に3DプリンターはOSが簡易的なため、一般的なセキュリティソフトを導入できず、感染後の検知・駆除が困難です。

3Dプリンターセキュリティ対策の重要性 ―OT資産を守る最新ガイド

市場動向と規格情報

なぜ今USB対策が重要なのでしょうか?

2024年以降、製造業ではUSB経由のランサムウェア感染が急増しています。特にLockBit系の攻撃は、エアギャップ環境を狙った事例が多数報告されています。さらに、国際規格IEC 62443では「外部メディア管理」が必須要件とされ、USB対策はOTセキュリティの基本となっています。

こうした背景から、世界的にOT環境へのセキュリティ投資が加速しており、USB対策は最優先課題となっています。

有効な対策は?

1.USBポート制御(ホワイトリスト方式)

ホワイトリスト方式は、あらかじめ「安全と確認されたUSBデバイス」だけを登録し、それ以外のデバイスは全て拒否する仕組みです。

実装のポイント

  • OT専用のポート制御ソフトを導入。
  • デバイスIDを登録し、認証済みUSBのみ利用可能に設定。
  • 一時的な許可は管理者承認制にすることで、現場の柔軟性も確保。

2.持ち込みメディアのスキャン

外部から持ち込まれるUSBメモリーや外付けHDDなどの記録媒体を、OT環境に接続する前にウイルスやマルウェアを検査することです。

実装のポイント

  • TXOne Safeportなどのスキャンツールを導入。
  • オフライン環境でも動作する設定を選ぶ。
  • スキャン結果をログ化し、管理者が確認できる体制を構築。

3.社内ルールの徹底

セキュリティ対策は「仕組み+人」で成り立ちます。どんなに優れた技術を導入しても、現場でルールが守られなければ意味がありません。

実装のポイント

  • 持ち込みデバイスの登録制を義務化。
  • 暗号化USBの利用を標準化。
  • TXOne Portable Inspectorを活用し、現場で簡単に検査できる体制を整備。

4.物理的対策

ソフトウェア制御が難しい古い設備や特殊機器では、物理的な封じ込めが有効です。

  • USBポートを物理的にロックするハードウェアキーを導入。
  • 専用ゲートウェイを介してメディアを検査する仕組みを構築。

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