薄型・軽量モバイルワークステーションで業務は変わるのか?

SOLIDWORKS 2018ユーザー・株式会社飯沼ゲージ製作所 3D CAD推進室長が「ThinkPad P1」を徹底検証

使いやすさで定評のあるダッソーシステムの「SOLIDWORKS 2018」で、レノボの最新ワークステーションのパフォーマンスを検証するというのが、本企画の主旨だ。

今回の検証では、SOLIDWORKSのユーザーであり、液晶ディスプレイ(LCD)製造装置など大型専用機の企画設計から製作、アフターメンテナンスまで一貫したサービスを提供する株式会社飯沼ゲージ製作所の3DCAD推進室室長 土橋美博氏が、レノボの二つのワークステーションに対して、SOLIDWORKS 2018を使ったパフォーマンス検証を実施した。

評価対象となった二つのワークステーションは、手のひらサイズの世界最小ワークステーションの「ThinkStation P330 Tiny」と、薄型・軽量のモバイルワークステーション「ThinkPad P1」。

以下ではThinkPad P1に対する検証結果を報告する。

検証方法と結果

検証方法

「SOLIDWORKS 2018(SP4.0)」にバンドルされているベンチマークテストなどを使い、「ThinkPad P1」のパフォーマンスをチェックする。それとあわせて、今回検証を行った飯沼ゲージの土橋氏が実際に業務で使用しているモバイルワークステーションとのパフォーマンス比較も実施した。

ThinkPad P1の検証結果

  1. SOLIDWORKS 2018による3DCAD / CAEの運用に耐え得る性能を発揮
  2. レンダリング、構造解析・流体解析の性能の高さを確認
  3. SOLIDWORKS 2018の試用中、ファンの起動回数が少なく使用中にストレスを感じるケースが少なかった
  4. キーボードが使いやすく入力ミスが少なく、打感の快適さも確認できた

検証の目的

今回、検証を行ってくれた土橋氏は普段「SOLIDWORKS」「SOLIDWORKS Simulation」「SOLIDWORKS FlowSimulation」の運用を行っており、その中で「CAE(構造解析)などのシミュレーションをすぐにかけて欲しい」といった依頼を出張先で受けることがよくあるという。

そうした状況においては、レノボの「ThinkPad P1」のような携帯性に優れたモバイルワークステーションが必要になる。

「モバイルワークステーションは、オフィスアプリケーションを使った外出先での資料作りやメールの送受も含めて、3DCAD / CAEの運用に携わるエンジニアがデスクトップワークステーション以上に頻繁に使うとても大切なツールです。だからこそ、機能・性能の全ての面で優れていることが大切と考えます」(土橋氏)。

株式会社飯沼ゲージ製作所
管理企画本部 経営企画室
3DCAD推進室 室長
土橋 美博氏

こうした観点から、土橋氏は、現在使用し「特に不満は感じていない」(土橋氏)とするモバイルワークステーション(以下、「現有モバイル機」と呼ぶ)と比較しながら、ThinkPad P1の機能・性能を検証した。

検証2機種の仕様比較

表1は、評価に使用したThinkPad P1と現有モバイル機との仕様比較である。

表1:ThinkPad P1と現有モバイル機との仕様比較
 ThinkPad P1現有モバイル機
本体寸法(幅×奥行き×厚さ)361mm×245.7mm×18.7mm375mm×255mm×21mm
重量約1.71kg約2kg
モニター15.6型FHD IPS液晶15.6型4K UHD
CPUインテル Core i7インテル Xeon
コア数6コア4コア
メモリー16GB32GB
グラフィックスカードNVIDIA Quadro P1000
(メモリー4GB/640コア)
NVIDIA Quadro M1000M
(メモリー2GB/512コア)
稼働時間14時間15分9時間30分

表1にあるとおり、ThinkPad P1は現有モバイル機と画面が同サイズでありながら、狭縁化などによってサイズが一回り小さい。そのため、携帯性はThinkPad P1の方が上だ。「しかも、ACアダプターがコンパクトなので、その点でも外出時や出張時により適した設計になっていると感じます」と、土橋氏は言う。

さらにスペック上の稼働時間にも着目。「移動中の作業などが安全かつ便利になりそうな印象も受けます」と、土橋氏は続ける。

さらに、ThinkPad P1では、GPUを「NVIDIA Quadro P1000」と「同P2000」から選択できるが、どちらを選ぶにせよ現有モバイル機の「NVIDIA Quadro M1000M」よりもGPUの性能が高くなるという。

では、実際の処理性能はどうだったのか──。次にその検証結果について見てみたい。

ベンチマークテストによる性能チェック

土橋氏が行ったThinkPad P1のパフォーマンス検証の一つは、SOLIDWORKSにバンドルされているベンチマークテストを使ったものだ。このテストは、SOLIDWORKSのツール「SOLIDWORKS Rx」から実行することができる(図1)。

図1:「SOLIDWORKS Rx」によるベンチマークテストの実行画面例(キャッシュが残っている状態であると正しい計測値が得られない可能性があるため、SOLIDWORKSのパフォーマンステストは再起動後の実施を推奨する)

このベンチマークテストの内容については、別枠『SOLIDWORKSベンチマークテストの概略』を参照いただくとして、ここではThinkPad P1と現有モバイル機とのベンチマークテストの結果を示したい。それは表2のとおりである。

表2:ThinkPad P1と現有モバイル機とのスコア比較
 ThinkPad P1現有モバイル機
グラフィックス9.8秒14.8秒
プロセッサー22.5秒30.1秒
I / O32.5秒61.5秒
レンダリング7.0秒12.1秒
RealViewパフォーマンス9.6秒31.7秒
Simulation50.3秒57.9秒

表2にあるように、ThinkPad P1は、ベンチマークテストの全項目において現有モバイル機のスコアを上回っている。

現有モバイル機は土橋氏が既に2年使用しているものであるため、状況は評価用のThinkPad P1とは異なる。「とはいえ、先ほど述べたとおり現有モバイル機でも特に大きな不満はないので、それ以上の性能を持つThinkPad P1には、3DCAD / CAEの運用をさらに快適にしてくれる可能性を感じます」と土橋氏は評価する。

例えば、ThinkPad P1は、第8世代インテル Corei7 プロセッサーを採用し、CPUコア数も六つと現有モバイル機よりも多い。その点でSOLIDWORKS 2018による構造解析・流体解析などの「Simulation」でも優れたパフォーマンスを発揮する可能性があり、「それは今回のベンチマークテストの結果にも出ています」と土橋氏は付け加える。ただし、ほかの評価項目での両機のパフォーマンス差に比較してSimulkationでの差は相対的に小さい。これは今回評価に用いたThinkPad P1のメモリーが16GBしか搭載していなかったのに対し、現有モバイル機が32GB搭載しており有利に働いたためと推測される。

さらにThinkPad P1の場合、GPUが高性能なNVIDIA Quadro P1000とNVIDIA Quadro P2000の二つから選択できる点もSOLIDWORKSユーザーにとっては魅力的と土橋氏は言う。

「グラフィックスカード(GPU)の性能が高いと、SOLIDWORKS 2018のレンダリングやReal Viewerの処理が高速になる可能性が大きくなります。さらに、SOLIDWORKS Visualizeを使用する場合にも良い効果が望めます。これにより、SOLIDWORKS 2018を使った構造解析や流体解析の運用効率がさらに上がることが期待できます」

3Dモデリング、構造解析、流体解析のパフォーマンス検証

上のような期待感から、土橋氏はThinkPad P1とSOLIDWORKS 2018によるモデリング、構造解析(CAE)、および流体解析(Flow Simulation)のパフォーマンスと使用感をさらに検証した。

具体的にはSOLIDWORKS 2018のモデリング、構造解析、流体解析のパフォーマンスをThinkPad P1上で点検したのである。それぞれの実施イメージは、図3~5に示すとおりだ。

図3:3Dモデリングの実施例

図4:SOLIDWORKS Simulationによる構造解析の実施例

図5:「SOLIDWORKS FlowSimulation」による流体解析の実施例

土橋氏によれば、ThinkPad P1を使ったこれらの操作は非常に快適に行えたという。しかも、これらの解析(構造解析・流体解析)は社内ではなく外出先で行った。「このように高度な解析計算が社外でできることは非常に魅力的です。それだけでThinkPad P1には導入価値があると言えるでしょう」

総合評価

モバイルワークステーションは、なくてはならないツールとする土橋氏。同氏は、現有機についても国内外における外出/出張時には常に携行しているという。

「その観点から言って、薄型・軽量で高性能なThinkPad P1は非常に魅力的なモバイルワークステーションです。

このワークステーションを使えば、SOLIDWORKS 2018による3DCAD / CAEの運用が場所を選ばずにできるようになり、自分の行動範囲が広げられると感じます」

また、ThinkPad P1には4K UHDディスプレイのモデルがあり、SOLIDORKSが対応している高精細4K表示を実現できることも可能だ。

「その4K UHDディスプレイモデルとNVIDIA Quadro P2000を組み合わせることで、一層の高精細・高速表示が実現されるはずです。SOLIDWORKSの今後として、“Extended Reality(ER)”を実現していこうという動きが見えています。

これは3Dデータをビジュアル化してVR(仮想現実)の技術とつなぎ、3Dデータをよりリアルに見せたり、そのVRの編集をワークステーションで行ったりというコンセプトです。そうしたことも、ThinkPad P1なら行えるのではないかという期待が持てます」(土橋氏)。

加えて「ThinkPad P1はデザインもスタイリッシュで、その点でも使用にストレスを感じません。現有のモバイル機も当時の最高スペックの製品ですが、全てにおいてThinkPad P1が上です。検証を通じて、ThinkPad P1を導入したいと強く感じています。SOLIDWORKSをさまざまな場所で快適に使いたいと考えている全てのユーザーが、ThinkPad P1に対して、私と同じような感情を抱くのではないでしょうか」

SOLIDWORKS 2018ベンチマークテストの概略

このベンチマークテストの処理内容は、「図面を開く」「3Dモデルの再構築」「(3モデルの)回転と拡大表示」「レンダリング」「拡大表示とパニング」「シミュレーション(Simulation)」で構成され、一連のテストが終了するとパフォーマンステスト結果が表示される。表示される計測値(スコア)の項目は、「グラフィックス」「プロセッサー」「I / O」「レンダリング」「RealViewパフォーマンス」「Simulation」など。これらのスコアは、5回行われる処理の平均値(秒数)を表している。

このベンチマークで得られた結果は、ソリッドワークス社のWebサイト上で公開することができ、計測値を公開されているほかのマシンの計測値と比較することも可能であるという(図A)

図A:計測したThinkPad P1のスコアをほかのスコアと比較した画面

また、各スコア項目の意味は表Aに示すとおりとなる。

表A:「SOLIDWORKS Rx」ベンチマークテストの各スコア項目の意味
グラフィックスモデルの回転、ズーム、およびパニングがどの程度滑らかに行われるかを表す数値。時間が短いほど複雑で大規模なモデルの回転、ズーム、およびパニングがスムーズに実行できる。CPUとGPUに一部依存している。
プロセッサーこのスコアは、コンピューターがSOLIDWORKSソフトウェア内でフィーチャーの再構築や図面ビューなどのCPUベースのアクティビティを完了するために必要な時間。このテストを半分の時間で完了するコンピューターは、部品の再構築を半分の時間で終了すると想定できる。
I / Oこのスコアはファイルのオープン/保存にかかる時間を表している。時間が短ければ短いほど、コンピューターのドライブに対する読み取り/書き込み速度が速い。なお、この計測値は、ネットワーク環境でのファイルのオープン/保存時間を表すものではない。
レンダリングPhoto View 360において、モデルの写実的レンダリングを完了するために必要な時間を表す。
RealViewパフォーマンスこのスコアは、コンピューターにRealViewグラフィックスをサポートするGPUがある場合のみ計測できる。測定時間が短いほど、複雑で大規模なモデルのズーム、パニング、および回転を速く実行できる。
Simulationこのスコアは、コンピューターにSOLIDWORKS Simulationがインストールされている場合のみ静解析スタディの実行時間を測定する。
SOLIDWORKS Simulationは、複数のプロセッサーが存在する場合は複数のプロセッサーを使用し、CPUの数が多く、高速であればスタディを実行する時間が短縮する。SOLIDWORKS Simulationは、頻繁にディスクに書き込む必要があることからこの影響もある。
  • * 上表の内容はSOLIDWORKS 2018のヘルプを参考にしながら、土橋氏が作成

ThinkPad P1のカタログをご用意しています。

ThinkPad P1の特長やスペックをまとめたカタログをご用意しています。また、ご希望の方は次のリンクよりご確認ください。