Intel Inside 飛躍的な生産性を第11世代インテル Core i プロセッサー
第11世代インテル Core プロセッサー・ファミリーは、かつてないほど調和のとれたパフォーマンス、新しいコアとグラフィックス・アーキテクチャー、AI搭載のインテリジェントなパフォーマンス、クラス最高のワイヤレス接続と有線接続で、ノートブックPCとデスクトップPCのパフォーマンスをさらなる高みへ押し上げます。
3次元CADユーザーでCADやPCのパフォーマンスが気にならないという人はいないだろう。
この記事では、数多くの企業で設計部門の3次元設計立ち上げとそのためのワークステーションの選定を行ってきた筆者が、LenovoのハイエンドモバイルワークステーションThinkPad P15で、SOLIDWORKS 2019、2020、2021のベンチマークを実施した結果を報告する。3次元設計には欠かせないPC選定における社内でのベンチマークの参考にもしてもらいたい。
太田 明
デジプロ研 CAD / CAEコーディネーター
Intel Inside 飛躍的な生産性を第11世代インテル Core i プロセッサー
第11世代インテル Core プロセッサー・ファミリーは、かつてないほど調和のとれたパフォーマンス、新しいコアとグラフィックス・アーキテクチャー、AI搭載のインテリジェントなパフォーマンス、クラス最高のワイヤレス接続と有線接続で、ノートブックPCとデスクトップPCのパフォーマンスをさらなる高みへ押し上げます。
毎年コンピューターは性能向上するが、ここ数年の変化は特に大きい。いや、逆にPCのサイズでいえばかなり小さくなった。これは単に小さい機種が出てきているというだけではなく、これまでの性能を維持しながら劇的に小さくなっている。
特に、CPUの低消費電力化と熱設計の最適化、電源の小型化がこれを推し進めている。これはテレワークと打ち合わせと現場を行き来する設計者にとってはなんとも嬉しいトレンドだ。そんな設計者の今の常識はモバイルワークステーションである。
モバイルワークステーションのエントリー/ミドル/ハイエンドの各機種を比較した関連記事もあるので、気になる方はこちらもぜひ見ていただきたい。
Lenovoモバイルワークステーション
P15(GPU Quadro T2000)
ベンチマークツール
SOLIDWORKS Rx 2019、SOLIDWORKS Rx 2020、SOLIDWORKS Rx 2021
昨今の新しい世代のCPUやメモリー・ストレージは温度や負荷に応じて無駄なく性能を引き出す技術が何重にも施されているため、安定的かつ客観的にベンチマークをとるのが難しくなってきている。今回も予想外の結果が出てベンチマークの難しさを実感した。
数ある3次元CADの中でもSOLIDWORKSを知らない設計者はいないだろう。PCの進化もさることながら、ソフトウェアの進化もとどまるところを知らず、SOLIDWORKSの毎年の新バージョンや新機能の発表にワクワクしている人も多いのではないだろうか。
そして、CADとPCスペックとの技術的な歩調や相乗効果が性能を左右する重要なポイントであることも、現代のエンジニアには周知の事実であり、たびたび話題になる。
SOLIDWORKSはエンジニアに使われてきた歴史が長いだけあり、必要な機能があらゆる面でそろっている。SOLIDWORKSにはSOLIDWORKS Rxというベンチマークツールが付属しており、これ一つで必要な数値が全て得られる。そしてそのスコアの単位は感覚的に分かりやすい「秒」である点もとても使いやすい(他ベンチマークツールでは独自のスコアを採用している例も多い)。
今回は2019バージョンを基準(1倍)として2020、2021バージョンがそれに比べて何倍性能向上しているかという視点でまとめた。
ベンチマークの結果は以下である。毎年性能向上するはずのSOLIDWORKSがまさか、最新の2021で大きく性能が落ちている!?
2019 | 性能比 | 2020 | 性能比 | 2021 | 性能比 | |
---|---|---|---|---|---|---|
グラフィックス | 9.9s | (1倍) | 6.3s | 1.6倍 | 22.4s | 0.4倍 |
プロセッサー | 22.4s | (1倍) | 22.5s | 1.0倍 | 23.4s | 1.0倍 |
I / O | 19.2s | (1倍) | 20.4s | 0.9倍 | 22.8s | 0.8倍 |
レンダリング | 4.7s | (1倍) | 4.4s | 1.1倍 | 7.7s | 0.6倍 |
RealViewパフォーマンス | 17.6s | (1倍) | 5.8s | 3.0倍 | 20.8s | 0.8倍 |
Simulation | 53.9s | (1倍) | 49.2s | 1.1倍 | 26.6s | 2.0倍 |
いや、ここは冷静になって一つずつ見ていこう。
まずはグラフィックス。これは3Dモデルのビューを移動・回転・ズームする際のレスポンスのよさを示す指標であるが、2020で大きく性能向上している。これは2020以降を使用したユーザーであれば実感している人も多いのではないだろうか。2020の新機能に関するドキュメントには以下のように記述がある。
「SOLIDWORKS 2020 では、次のようにパフォーマンスとワークフローが改善されています」
より詳細は公式のドキュメントを見ていただければと思うが、例えば「以前のバージョンで保存されたほとんどのアセンブリと図面は、新しいバージョンで保存する必要なく、素早く開くことができます。 複数のコンフィギュレーションで参照構成部品を使用するアセンブリでは、より大きな改善が行われています」といった機能向上や、それまでベータ機能であったGPU性能を最大限生かすオプション「グラフィックパフォーマンスの拡張」がデフォルトで有効になった。今回のベンチマークでも1.6倍もの向上を見せているため明らかに体感できるだろう。
以降の「プロセッサー」はモデルの更新、「I / O」はデータの保存とオープン時間に関する指標であるが、この3バージョンの中では大きな変化はないようだ。
次に、2020のRealViewパフォーマンスの向上は3倍ものパフォーマンスを叩き出しているが、実は新機能のドキュメントには記述がない。これはソフトウェアの仕様変更とPCとの技術的な歩調が合ったよい例ではないだろうか。前述のグラフィックスにおけるGPU性能を生かす仕様と同様、これもGPUの活用があるだろう。このような思いがけないよい結果が出るからベンチマークはいつもワクワクする。
そして、Simulationである。これは2021で2倍の性能を出している。これは計算時間が単純に半分になるということで、解析を使う設計者にはシンプルに一番嬉しい機能ともいえる。ドキュメントの記述は以下。
「SOLIDWORKS Simulation Professional と SOLIDWORKS Simulation Premium のパフォーマンス改善」
「接触計算およびマルチコア メッシュの改善により、シミュレーションが高速化されます」
そして最後に体感である。ベンチマーク結果はともかく、体感では各所で明らかに高いパフォーマンスが感じられた。ハードウェアも数年前のものに比べてはるかに快適に進化していることは間違いない。
さて、問題はここからである。ここまで上げた項目は旧バージョンと同等か大きな向上があった。
しかし、次の3項目においては、2020でせっかく性能が上がったのに、2021でガクッと性能が落ちているグラフになっているではないか。
一方、体感では明らかにパフォーマンスが上がっているのも確かだ。私もこれに驚いて調べてみた。まず、この3項目がいずれもGPUに関わる項目であること、そして、計測時間が現在数秒であることに気付いた。
PCのGPU性能はどんどん向上し、その技術に対応してソフトウェアも進化する。これをこの数年間繰り返していくうちに、計測時間がベンチマークツールが当初想定していた時間よりもずっと短くなってしまっているのだ。計測時間が短すぎると、計測結果のバラツキが大きくなるものであるが、確かに近年はその傾向を強く感じていた。
このような考察や関係者の協力のもと調べていくと、以下のドキュメントの記述にたどり着いた。
「SOLIDWORKS Rx パフォーマンス ベンチマーク テストを更新」
「パフォーマンス ベンチマーク テストの更新により、~略~これらの変更により、パフォーマンス テストを使用して SOLIDWORKS 2021以前のバージョンとの間でグラフィックスと RealView のパフォーマンスを比較することはできません。 比較できるのは、同じバージョンの SOLIDWORKS を実行している 二つのシステム間だけです」
すなわち、ベンチマークツールのルールが変わったということである。GPUに関わる性能が上がりすぎたため、負荷を高くして測定の精度を確保したということだ。
例えば、オリンピックの短距離走がもし100mではなく50m走だったら、スタートのタイミングだけで勝敗がほぼ決まったり、バラツキも多くて、スポーツとしては成立しないのではないだろうか。そして、何よりそんな短い競技では実力も出せずドラマも生まれず、面白くないだろう。逆にいえば100m走もタイムが劇的に縮まり、決勝の選手が全員3秒でゴールするようになれば、ルールは変更されるだろう。生身の競技ではそうそうあり得ないかもしれないが、道具を使う競技では、道具の進化によるルール変更はたびたびある。
私も最初にベンチマーク結果を見たときは驚いたが、事情を知って素晴らしく前向きな嬉しい仕様変更であると感じた。
では実際2021バージョンはどれほど性能向上しているのか。ドキュメントの記述はこうだ。
「モデルの表示パフォーマンスの向上」
「SOLIDWORKS 2021では、隠れ面消去、シルエット エッジ、および図面のパフォーマンスが向上しています。 コンフィギュレーションを素早く切り替えることができます」
これは確実に性能向上していると見ていいだろう。しかし、これまで性能向上しすぎたおかげで残念ながらこのバージョン間では数字で比較ができなかった。実際のパフォーマンスはぜひ皆さんが自ら、自分たちのモデルで体感していただくのが確実だろう。
「2021はグラフィックパフォーマンスが大幅に落ちた!?」のではなく、逆に大幅に上がったことで、グラフが落ち込む結果になっていたのだった。
最後にベンチマークで格闘中の私が感じたThink Pad P15の性能以外のよいところを五つ上げる。
Webや写真だけでは評価できないものはぜひ借りて触って確かめる。
セキュリティは確保したいがパスワードはわずらわしい。スマートフォンもPCも指紋認証がやっぱり一番便利。高性能モバイルワークステーションが生み出すデスクトップからの移行組にはこんな感動もある。指紋認証速度も高速でストレスは全くない。
充電時間は実はかなり重要。使ってみないと分かりにくいし、書いていない製品も多い中しっかりスペックとしてあげてあるところがよい。
PC本体がいくら小さくてもACアダプターが大きくては元も子もない。さらにいえば、その前後のケーブルも含めた一式のサイズが重要。この機種はケーブルもすっきりまとめられて便利なので、そのときのサイズも測定した。
ACアダプター一式をまとめたときのサイズ:約150×78×21mm
テレワークやリモート会議が増える中物理的にカメラを隠すシャッターは大きな安心感。シンプルながらセキュリティとしても重要な機能。
以上、Think Pad P15とSOLIDWORKS 2019、2020、2021によるベンチマークから分かったことが皆さんの活躍のヒントになれば幸いです。
太田 明
3次元設計/CAE導入立ち上げコンサルタント、元半導体製造装置エンジニア
Inventor & Fusion 360勉強会、SBD利用技術研究会(SOLIDWORKS系CAEユーザー会)幹事のほか、SOLIDWORKSユーザー会、AUG-JP(Autodesk系ユーザー会)、CUG(土木系BIM / CIMユーザー会)などにも積極的に参加。ユーザー同士の学び合いを通して本当に使える3次元設計のノウハウを日々探求している。