PTC NEXT Chicago 2026 イベントレポート ~AI時代のPLMとCADはどう変わるのか?~

PTCが提示した次の一手 ──分断から統合へ
2026年6月9日・10日に「PTC NEXT Chicago」が、アメリカ・シカゴで開催された。PTC NEXTは、PTC社の今後の戦略とプロダクトのポートフォリオをまとめて公開していくイベントだ。
従来は個別製品ごとに発信されていた情報が、この枠組みによって一本化され、より明確なメッセージとして整理されている。その中心にあるのが、単なる機能進化ではなく「製品ライフサイクル全体で価値を生み出す」という思想だ。背景にあるのは、製造業が直面する共通課題 ──複雑化する製品、分断されたデータ、そしてAIを活かしきれない現場の実態である。
キーコンセプト:「インテリジェント製品ライフサイクル」

今回のPTC NEXT Chicagoで繰り返し強調されていたのが「Intelligent Product Lifecycle(IPL)」という概念だ。これは設計・開発・製造・サービスといった一連のプロセスをデータとAIによって横断的につなぐ考え方である。
重要なのは、AIを単なる付加機能として扱うのではなく、最初から業務の中に組み込む“前提”として設計している点だ。
PTCはこの実現のために、
- 製品データ(Data)
- AIモデル(Model)
- AIエージェント(Agent)
という三層構造のアーキテクチャを提示し、意思決定そのものを高度化していく方向性を示した。
全ては「データ基盤」から始まる
AI活用の成否を分けるのはデータだ ──これは多くの企業でも認識されているが、実際には設計や製造、サービスでデータが分断されているケースが少なくない。PTCはこの課題に対し「製品データ基盤(Product Data Foundation)」の重要性を強調した。
単なるデータ管理ではなく、
- CAD / PLM / ALM / サービス情報の統合
- ライフサイクル全体でのトレーサビリティ
- AIが理解できる構造化データ
を実現する基盤であり、その中核を担うのがWindchillである。
- * ALM:Application Lifecycle Managementの略。企画・要件定義から開発、テスト、リリース、運用改善までの工程を情報とプロセスの両面で一元管理する考え方およびその仕組みのこと。
Creoの進化:設計現場に入り込むAI

CAD領域では、Creoの進化が象徴的だ。最新版では、設計者の作業効率を高めるだけでなく「設計そのものの進め方」を変えようとしている。
中でも注目されるのがAIアシスタントの進化で、
- 設計の提案(Advice)
- 操作の支援(Assist)
- 作業の自動化(Automate)
という段階的な機能強化により、エンジニアの作業を補助するだけでなく、一部は置き換えるレベルに達しつつある。
さらにCreoは、設計・解析・製造を一体化したエンジニアリング基盤として位置付けられており、日常業務レベルでの効率化(パフォーマンス改善、操作性向上など)も着実に進んでいる。
Advice機能
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この続きは・・・・・・
- AIの活用によって、設計作業の効率化やミスの削減はどこまで進むのか?
- Windchillは、必要な情報を素早く探し出し、製品開発の判断をどう支えるのか?
- Creo・Windchill・AIを組み合わせることで、製造業の仕事はどう変わるのか?
Assist機能
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Automate機能
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Windchillの進化:PLMから「意思決定の中枢」へ
一方、PLMであるWindchillも大きく変貌している。これまでの「データを管理するシステム」から、意思決定を支えるプラットフォームへと進化している点が最大のポイントだ。
具体的には、
- 情報検索の高速化
- 類似部品の検索
- エージェントによるエラー削減
など、AIが業務フローの中に組み込まれている。
さらに、SaaS型の「Windchill+」によってクラウド化が進展し、運用負荷の軽減やスケーラビリティの向上も図られている。その結果、設計部門に閉じない「企業全体のデータ基盤」としての役割が強まっている。
情報検索の高速化
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類似部品の検索
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エージェントによるエラー削減
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コラボレーションの再定義:Jetstreamの登場
もう一つの注目トピックが、新たなコラボレーション基盤「Jetstream」だ。製造業においては、設計レビューや外部とのやり取りがメールやファイル共有に依存し、履歴や意思決定の追跡が難しいという課題がある。
Jetstreamは、CADやPLMデータを中心に、
- レビュー
- フィードバック
- 意思決定
を一元化することで、社内外の協業を効率化する環境を提供する。
Jetstream
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真の価値は「組み合わせ」にある
今回の発表を通して明確になったのは、単体製品の優劣ではなく「組み合わせ」による価値創出という考え方だ。
- Creo:設計・解析・製造
- Windchill:データ統合・管理
- AI:全体最適化
これらが連携することで、設計からサービスまでをつなぐ「デジタルスレッド」が現実のものとなる。この統合こそが、PTCの競争力の源泉である。

まとめ:製造業はどこへ向かうのか?
「PTC NEXT Chicago 2026」から見えてきたのは、製造業における明確な変化の方向性だ。
それは、
- ツール中心からプラットフォームへ
- 部門最適から全体最適へ
- 人の判断からAI支援型意思決定へ
というシフトである。
PTCは、CreoとWindchillを軸としたデータ基盤にAIを組み込むことで、この変革を現実のものにしようとしている。今後、製造業における競争力は、こうした“データとAIを前提とした製品開発プロセス”をいかに構築できるかにかかってくるだろう。

編集後記
今回のPTC NEXT Chicagoは「AIがすごい」という話ではなく、「AIを使う前提で、どこまでデータとプロセスを整備できているか」が問われる内容だった。
つまり、CreoやWindchillの導入そのものよりも、
- データのつながり
- 部門間の連携
- 運用プロセス
といった“使い方”こそが成果を左右するフェーズに入ってきていると言える。製造業DXは次の段階へ ──PTCはその方向性を明確に示した。