米国国防総省が最近取引先に導入を推進している「MBE(Model Based Enterprise)」という考え方をご存じでしょうか?MBEとは「詳細に定義された3Dの製品モデル上に構築され、企業全体で共有される完全に統合された協調環境」と定義されています。
具体的には3Dモデルには寸法や注記など、ものづくりに必要な情報がすべて付加され、CADを持たない人でも簡単に再現できる情報環境と考えられます。
ラティス・テクノロジー株式会社 鳥谷浩志社長直筆コラム
CADを持たない方でも情報共有する方法
米国国防総省が最近取引先に導入を推進している「MBE(Model Based Enterprise)」という考え方をご存じでしょうか?MBEとは「詳細に定義された3Dの製品モデル上に構築され、企業全体で共有される完全に統合された協調環境」と定義されています。
具体的には3Dモデルには寸法や注記など、ものづくりに必要な情報がすべて付加され、CADを持たない人でも簡単に再現できる情報環境と考えられます。
MBEはまさにこれまで説明してきたXVLのコンセプトと全く同じです。
XVLのコンセプト
実際にMBEを導入したところ製品開発コストの50~70%削減、製品を市場に投入するまでの時間もほぼ半減し、その効果に着目した国防総省が新たな契約案件から導入を進めてきたという経緯があるようです。
今回は分かりやすいMBE入門として、Excelで3Dモデルを扱うことの利点を考えてみましょう。
図1をご覧ください。これはLattice3D Reporterというツールを利用して、3D単独図をExcelで表現したものです。
見たいまたは見せたい場面のイメージ図(スナップショット)をクリックすると、3Dビューがそれに応じて変わり3D図面が再現されるようになっています。これがあれば、図面がなくてもExcelで3D図面が手軽に再現できるようになります。次の動画で3D単独図の分かりやすさを実際にご覧ください。いとも簡単に現場展開ができることが理解できるでしょう。
「Excelで3D参照する」これこそMBEの本質ではないかと私は考えています。これまでは多くの現場ではCAD上のイメージをExcelに切り貼りして、指示書や帳票を作成しているところがほとんどではないでしょうか。せっかく3DCADで設計しても、3Dモデルがただのイメージになってしまいます。
これではMBEの考え方から外れてしまいます。情報伝達が遅れ、データの再入力により誤りが混入ということが起こり、MBEによってもたらされるはずの効果が半減してしまうのです。
それであれば「Excelの中で3Dを再現できないか」という意図で開発したのが軽量XVLをExcelに埋め込むLattice3D Reporterです。実際、導入されたユーザ様からは「最近のExcelは3Dも回るのか、これは分かりやすい!」という反応をいただき、自然に現場に導入できました。日本の製造現場にも密かに、そして確かにMBEが浸透してきているといえるでしょう。
図2にもう一つ別の例を示しましょう。これは3Dモデルを利用したデザインレビューの議事録を3DとExcelで作成したものです。
Lattice3D Reporterを利用するメリットには次の3点があります。
関心をお持ちの方に図1と図2の実際のExcelのサンプル(3D単独図とデザインレビュー議事録)をご用意しました。次のサイトより実際に体験いただけます。
前回までにXVLには組立工程が定義できるということをご紹介しました。Lattice3D Reporterを利用すれば、次のようなフローで作業工程指示書を作成できます。
XVLに定義された属性も取り込めるため、これまで大規模な全社PDMシステムがないと再現できなかったような工程と連動する組立手順がExcelだけで再現されるようになるのです。実際にXVLからExcelでの作業指示書を作成する様子を動画でご紹介します。
このようなExcelと3Dで現場を変革する先進事例は次のように数多くあります。
作業指示書作成 | CADイメージを切り貼りしていたものをExcelだけで作業ができるようになった。 |
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配管物量システム | CADの持つ配管の長さをExcelに集計させることで、最適な量の発注ができるようになった。 |
いかがでしょうか。米国でトレンドとなろうとしているMBEという考え方が既に日本の製造現場で実践されてきたというのは驚きでしょう。実は、MBEのような考え方を全社統合システムで実現しようというのは無理があります。設計ためのPDMや、経営管理のためのERP、生産や物流管理のためのSCMといったシステムは扱う情報の構造が異なるのでこれらを統合するには無理があるからです。
そうであれば、XVLという軽量3Dデータに各システムから必要な情報を取り出して、Excelで流通させてしまえばいいのではないかという逆転の発想がLattice3D Reporterです。CADやBOMといった基幹のデータはしっかり管理しておいて、改善改善で日々進化する現場には迅速にXVLで情報を展開してしまうのです。皆様の職場でも、MBEのもたらすメリットをいち早く体感してみてはいかがでしょうか。