第5回 効率的な作業指示書作成による多品種少量生産の実現

ラティス・テクノロジー株式会社 鳥谷浩志社長直筆コラム
作業指示書作成にお困りの方必見!

多様な市場ニーズに迅速に対応し、しかもその製品を短納期で顧客に届けることができれば、その企業の成功は約束されたも同然でしょう。多くの工場では多品種混流生産やセル生産といった複数の機種を並行して製造する手法を導入し、実現を目指してきました。

これを支えるのが多様な作業指示書を迅速に作成し、現場に的確に作業内容を伝えるITの仕組みです。実はここでも設計3Dデータが大活躍します。

効率的な作業指示書作成による多品種少量生産の実現 イメージ

新しい手法で作業指示書を作成している三菱農機株式会社

下記図1をご覧ください。三菱重工業グループの三菱農機株式会社の工場で作業指示書を参照しながら、作業している様子を示しています。

図1 三菱農機における現場への作業指示書展開

図1 三菱農機における現場への作業指示書展開

紙やパソコン、タブレットといったそれぞれの作業者が欲する形で指示書を提供しています。ここでのポイントは指示書にカラー図がふんだんに使われたビジュアルだけではありません。3Dデータを活用した新しい手法によって、指示書がタイムリーに作成される点にあります。

従来の作業指示書作成の課題

これまでも作業指示書や要領書、QC工程表といったドキュメントが製造工場で使われてきました。図面や写真を切り貼りして、分かりやすく作成しようという努力が続けられてきました。しかし、従来の手法では次のような課題がありました。

  1. 設計が完了し出図されないと組立手順の検討に着手できない。作業指示書完成のタイミングが遅れてしまうことがあった。
  2. 手作業で図面と作業工程をひもづけないといけないので、作業が煩雑になり結果的に間違いが混入しやすい。
  3. 海外向けの指示書は日本語版をベースに再度作成することになり、さらに完成のタイミングが遅れ、図面ベースなかなか伝わりにくい。

設計と同時に工程設計も行う手法へ

このような問題を解決するには前回紹介した「3Dデータを参照しながら、組立工程を作成してしまう」という手法です。設計途上のモデルでラフな工程を決めておき、設計完了時には簡単な手直しで工程設計が完了してしまうのです。ラティス社XVL Studioを使うと、各工程と使用部品を対応づけるだけで簡単に工程設計ができます。利用する工具やシールの塗布といった作業も手軽に追加できます。

指示書を自動生成するXVL

作成された工程情報を、3D形状とともにXVLモデル内に保存します。重要なポイントは自社の形式に準拠したテンプレートを定義すれば、XVLから図をふんだんに使った作業指示書を自動生成できる点です。

そしてWeb、Microsoft Office、iPadで参照できます。指示書作成に早期着手できる上に、組立工程を正しく定義することで図と組立工程の整合性のとれた指示書が完成します。工程は多言語でも定義できるので、多言語対応の作業指示書も簡単に作成できます。まさに上記の三つの課題を同時に解決してしまうわけです。

自動生成したExcel帳票の例

図2にLattice3D Reporterという製品を利用して自動作成したExcel帳票の例を示します。

図2 Excelベースの作業指示書の自動作成例

図2 Excelベースの作業指示書の自動作成例

この例では、上段にはある工程での組み付け前と組み付け後のイメージを、下段にはその工程の作業内容の詳細が記載される作業指示書を自動生成されています。このようなテンプレートを定義しておくと、自社様式の指示書を3Dデータから自動作成します。

例では、工程ごとにA4サイズのExcelシートに分けて指示書を作成するように設定しているため、工程に対応した指示書が複数のシートに生成されます。また、Excelシートには3Dデータも内包されているため、必要に応じて参照もできます。

帳票作成自動化を取り入れた三菱農機株式会社

このような仕組みをいち早く導入し、効果を検証したのが三菱農機株式会社でした。図3にその効果を示します。

図3 帳票作成自動化による効果試算

図3 帳票作成自動化による効果試算

帳票作成自動化により、次のようなメリットが生まれました。

  • 「見える化」された工程検討により早期着手ができる。
  • フロントローディングによる手戻りが減少し、品質が向上した。
  • 自動生成のため、帳票作成工数を75%削減しコストダウンを実現。

これらの相乗効果で、納期短縮と品質向上に3Dデータ活用は貢献しているわけです。

生産性を上げる企業、そして社会になるには

リショアリングという言葉をご存じでしょうか?

生産の再上陸、米国での製造業の最新戦略です。生産の米国回帰の背景にあるのは、シェール革命や3Dプリンタ技術の発展、新興国での人件費高騰などでしょう。米国GE社のイメルト会長は米国の製造業復活は本物だと言い切っています。一方、そのGE社では給湯器生産を中国から戻す際に、米国工場の人件費を4割も下げたということです(日経新聞夕刊2014年1月7日)。

製造業の雇用が復活しても、そこで働く労働者の賃金が下がるというのが厳しい現実です。生産性を上げることで世界に対抗できる環境を構築し、格差の少ない社会をどうしたら構築できるでしょうか。3Dデータの効果的な活用も実現するための一つの手段となるかもしれません。