水熱源個別空調機のパイオニア企業が自社製品の気流を可視化し、顧客への提案力が格段にアップ
日本ピーマック株式会社
- 業種
- 空調機メーカー
- 事業内容
- 空調機の設計・製作・輸出入・設備工事および保守管理
- 従業員数
- 300名(2021年7月現在)
- サイト
- https://www.pmac.co.jp/
導入事例の概要
水熱源個別空調機のパイオニア企業である日本ピーマック株式会社は、これまで外注していた気流解析を内製化するため、熱流体解析ソフトウェアFlowDesignerを導入。直感的な操作性とモデリングの容易さからスピーディーな活用を実現し、自社製品の気流を可視化することで顧客への提案力が格段に向上している。
導入の狙い
- 自社製空調機の気流分布図の作成を行いたい。
- 気流測定のための実機試験の外注コストを抑えたい。
- 自社製品の気流を可視化して営業力を強化したい。
導入したメリット
- 専門性の高い空調機の気流解析を内製化。外注費がゼロに。
- 自社製品の気流を可視化し、営業力がアップ。
導入システム
大気への排熱を最小限に抑える。環境に優しい空調機で社会に貢献
日本ピーマック株式会社(以下、日本ピーマック)は、1972年に設立された空調機メーカーで、国内9拠点で事業を展開している。大気の熱を利用する空気熱源式の空調機が主流の中で、水熱源式の空調機「PMACシリーズ」をメインに開発・販売していることが大きな特長だ。その一方で、室外機と室内機を一体化した空気熱源式の製品も取り扱っている。
「水熱源式は、地下水などを利用することで大気への排熱を最小限に抑えられるので、ヒートアイランド現象を抑制する効果があります」と技術本部の木下誉也(たかや)氏は語る。
また、室外機と室内機を一体化した製品は、天井の中に設置することで外気にさらされることがないため、製品寿命が長いことが大きな利点。会社設立当時に納品した同社の製品が現在も稼働しており、建築設備技術遺産に登録されたこともある。直近では、コロナ禍のニーズに応えるため、空気清浄機「エール」の販売を開始。主に大学や病院など大勢の人が集まる場所へ導入実績がある。
コロナ禍では社内をフリーアドレス化したほか、従業員にモバイルPCを支給し自宅からVPNで社内のサーバーにアクセスして業務を行うことで、働き方改革を推進している。
気流測定をデジタル上で内製化し、顧客の多様なニーズに応える
日本ピーマックは空調機メーカーとして50年間蓄積してきたノウハウを生かし、個々の顧客の要望に応じて空調機をカスタマイズして提供できる技術力と体制を整備していることが大きな強みだ。現在は、国連が推進しているSDGsに寄与するため、これまで以上に人や環境に優しい製品作りに努めている。
その一方で、同社は業務上の課題解決にも着手。空調機の中には、設計や設置段階で吹き出し口からの気流を測定した気流分布図の提出が求められるケースがある。それによって、空調機の設置場所や数量を事前に把握することができるからだ。しかし、従来、空調機の気流測定を行うためには、気流測定用の暗幕を張った大型の試験室と可視化用部材などさまざまな試験設備を導入する必要があった。そのため、以前は、気流測定の試験室がある業者に外注しており、多くの時間とコストがかかっていた。
そうした中、気流解析を行えるシミュレーションソフトの品質向上に伴い、顧客から気流分布図の提出を求められるケースが増えてきた。そこで、気流解析用のシミュレーションソフトを自社に導入し、従来の課題を解消する取り組みを開始した。「気流測定をデジタル上で内製化することで、お客様の多様なニーズに応え、空調機の最適化を図ることが主な目的でした」(木下氏)
技術本部 木下誉也(たかや)氏
「気流測定のデジタル上での内製化と新製品の魅力をリアルに伝えられるツールとして、熱流体解析ソフトウェアFlowDesignerを導入しました」
直感的に操作できる熱流体解析ソフトウェアを導入
木下氏は、気流解析用のシミュレーションソフトの導入に向けて、インターネットで情報を収集。その中で大塚商会のCAD専門サイト「CAD Japan.com」にたどり着く。そこで紹介されていた熱流体解析ソフトウェアFlowDesignerに着目し、大塚商会に資料請求したことが今回の導入のきっかけだった。
「FlowDesignerは、グループ会社で既に導入されており、出向いて試しに使用し、直感的に操作できることに魅力を感じました。以前、ほかのモデリングソフトを使ったこともあるのですが、それらと比べても簡単に素早くモデリングができるので、これなら役に立つと確信しました」(木下氏)
モデリングの容易さを生かし、作業効率を高める工夫を実践
日本ピーマックは、2016年にFlowDesignerを導入。基本的な使い方は操作ガイドで習得し、簡単な気流解析なら1日かからずに行えるようになったという。その後、より高度な機能をマスターするために、FlowDesignerのセミナーに積極的に参加。そこで実践的なノウハウを身に付けていった。
「気流解析は、空調機のCADデータをインポートしてから行うことが多いのですが、それ以外にも空調機の寸法や風量など、大まかなデータを基に行うケースもあります。そうしたさまざまな活用法を覚える際に、メーカーのセミナーや大塚商会さんの活用事例が役立ちました」(木下氏)
実際にFlowDesignerを活用していく中で、気流解析の効率向上のために独自の工夫も行っている。例えば取り込んだCADデータの中で、気流解析に影響のある箇所のみFlowDesignerのデータ修正機能で抽出。処理時間の短縮を図った。
「最近は、モデリングが簡単に行える特性を生かし、空調機の仕様を基にFlowDesignerで簡易な外観モデルを作成し、事前に気流解析を行っています。その解析結果を後から取り込んだCADデータ上に表示することで作業効率を高めています」(木下氏)
気流解析の外注費をゼロに抑え、視覚的なツールで営業力をアップ
日本ピーマックは、FlowDesignerを活用し気流解析の内製化を実現したことで、これまで外注していた費用がゼロになり、コスト削減に成功した。そのうえ最大の導入効果は、気流解析したデータを自社製品のリーフレットや販促用ツールに掲載することで、以前よりも営業力がアップしたことだ。
「空調機の気流を可視化することで、これまで見えなかったものが一目で分かるようになったので、お客様への機能説明がしやすくなります。営業部門の要請を受けて気流分布図の動画を作成したこともあります。コロナ禍でお客様とWeb会議で商談する機会が増えましたが、そのときに動画を見せることで空調機の最適配置の提案がしやすくなります」(木下氏)
一方で、気流解析したデータは、新製品の開発にも役立っている。例えば、空調機の風量を幾つかのパターンに設定し、それぞれの気流解析を実施。その結果を開発部門にフィードバックし、吹き出し口の大きさなどを調整することで、設置する部屋の規模や用途に応じた最適な製品作りが効率よく行えるようになった。
営業担当者にも活用してもらうことで競争力を強化
今後は、FlowDesignerの多彩な機能を活用して、気流をより分かりやすく色分けして表示するなど、さらなる活用を目指している。また、将来的にはXR(Extended Reality)の活用も視野に入れているという。新製品のデザインレビューを、ネットワークを通じて遠隔地の拠点で実施する際、XRの技術を用いることで新製品の特長をよりリアルに伝えることも可能になる。
「コロナ禍の働き方改革で、社員のITリテラシーも向上しています。今後は営業担当者にもFlowDesignerを操作してもらいながら、会社全体で気流解析のノウハウを蓄積し、企業競争力をより一層高めていきます」(木下氏)