紙の製品検査記録をi-Reporterで電子化することでワークフローが改善。従来の検査業務が90%以上効率化されました

株式会社熊平製作所

業種
製造
事業内容
金庫、入退室管理システム、セキュリティゲート、監視カメラシステムなどの製品開発・製造を行うトータルセキュリティ企業
従業員数
493名(2018年4月時点)
サイト
https://www.kumahira.co.jp/

導入事例の概要

株式会社熊平製作所は、金融機関向けの金庫設備から一般ビル向けの入退室管理システム、セキュリティゲートなどのトータルセキュリティシステムを開発・製造している。近年は出入国管理などに使用される隠匿物検知セキュリティシステムにも注力している。800種類以上もの製品を扱う同社は、その全ての製品検査記録を紙に記入していたが、作成・保管・検索の手間や記入漏れなどのミスを解消するために、電子帳票ソリューションi-Reporterを導入。業務の大幅な効率化と共にペーパーレス化を実現し、検査業務の品質が大幅に向上している。

導入の狙い

  • 製品検査記録を電子化して、作成・保管・検索の手間を減らしたい。
  • ペーパーレス化によって記録の保管スペースを解消したい。

解決策

  • 紙による製品検査記録の作成・保管・検索をi-Reporterで電子化

導入製品

  • ConMas i-Reporter
  • i-Reporter PLUS

導入したメリット

  • 記録準備から保管までの時間が96.5%短縮した。
  • 検査業務の品質が向上した。
  • 記録の検索に要する時間が99.2%短縮した。

金融機関向け金庫設備で国内トップシェア

広島県の株式会社熊平製作所(以下、熊平製作所)は、金庫や入退室管理機器などのトータルセキュリティシステムを提供する企業だ。中でも金庫は1940年に旧満州で製造を開始して以来、約80年にわたって作り続けており、金融機関向け金庫設備では国内で8割のトップシェアを誇る。ほかにもオフィス金庫、文化施設収蔵庫、原子力施設の大型遮蔽(しゃへい)扉、研究所や発電所向けの水密扉など、さまざまな金庫・保管・保存設備を製造。また、一般ビル向けの入退室管理システム、セキュリティゲート、映像監視システム、鍵管理システム、セキュリティキャビネットなども開発・製造しており、幅広い顧客から厚い信頼を集めている。

近年、同社が注力している製品の一つが、空港での出入国時のセキュリティチェックなどに使用される隠匿物検知セキュリティシステムだ。訪日観光客の増加と共に空港以外にも設置が広がっており、2020年の東京五輪・パラリンピックや2025年大阪万博の開催によって、さらにニーズが高まりそうだ。今後は海外にも隠匿物検知セキュリティシステムを積極的に売り込んでいく考えである。安全性や実用性に優れているだけでなく、数多くの製品がグッドデザイン賞に輝くなど、高いデザイン性を備えているのも熊平製作所の製品の特徴だ。同社はこれからも安心して過ごせる社会を作るため、技術のさらなる研さんや時代が求める製品作りに取り組んでいく。

金庫や入退室管理機器などのトータルセキュリティシステムを提供。近年では空港での出入国時のセキュリティチェックなどに使用される隠匿物検知セキュリティシステムなども提供している

紙で管理していた製品検査記録を電子化する

金庫設備やセキュリティシステムなど「セキュリティ」に関わる幅広い製品を手掛ける熊平製作所。その製品数は、一品一様のオーダーメード品を除いても800種類以上にも及ぶ。しかし、この種類の多さは、製品ごとの検査記録を作成・保管するうえで大きな「壁」となっていた。

同社ではかつて、全ての製品検査記録を紙で処理していた。まず800種類以上ある専用の検査記録フォーマットの中から該当の検査記録表を探し出し出力する。そして、各製造部門の製造担当者(兼検査員)が製品ごとの検査結果を記入し、品質保証部 検査グループに提出するという流れであった。

「上がってきた製品検査記録は、部門ごと、製品ごとなどに仕分けし、月に1回段ボール箱に入れて保管庫に収めるという、非常にアナログなやり方で処理していました」と語るのは、同グループ グループ長(参与)の盆子原哲氏である。「毎日大量の記録が送られてくるので、仕分けするだけでもひと仕事ですし、後から『何月何日に作ったこの製品の記録が見たい』と言われても、探し出すのに時間がかかります。何とか合理化できないものかと思いました」(盆子原氏)

ようやく記録を探し出しても、見たい項目が空欄になっていたり、記入内容が間違っていたりするものもあった。そうした手書きによる記入漏れや記入ミスもなくしたいと考えた。

品質保証部 検査グループ グループ長(参与) 盆子原哲氏

「紙による製品検査記録の手間や無駄を何とかなくしたいと思いました。i-Reporterによる電子化で大幅な時間短縮やペーパーレス化が実現したことに満足しています」

電子帳票ソリューションi-Reporterと、iPad43台を導入

そこで同社は、紙による製品検査記録を電子化することにした。導入したのは、シムトップスが開発した電子帳票ソリューション「ConMas i-Reporter(以下、i-Reporter)」である。これは、iPadなどのタブレット端末を使って記録を入力し、そのまま電子記録としてサーバー上に保管できるシステムだ。紙のように物理的な保管を必要とせず、仕分けや検索も簡単・迅速にできるのが大きな特徴である。

熊平製作所は2017年11月にi-Reporterを導入。さらに製造担当者が使用する入力端末として、iPadを43台導入した。

検査記録の準備から保管に至るまでの時間が従来よりも96.5%、記録の検索に要する時間は99.2%短縮。紙の記録がなくなり、ペーパーレス化と記録保管スペースの大幅削減が実現した

既存の生産管理システムとの連携運用をオリジナルツールでサポート

熊平製作所は、i-Reporterの導入を決定するまでに複数の電子帳票ソリューションを検討した。品質保証部 検査グループと共に選定に当たった情報管理部 情報管理グループ 主幹の大林正和氏は、「Excelで作成した従来の帳票フォーマットをそのまま使える点が、i-Reporterを選んだ大きな決め手でした」と語る。同社では、製品ごとの検査記録用帳票をExcelで作成し、文書管理システムで保管していた。製造担当者は、製品を作るたびに必要な帳票をプリントアウトし、そこに手書きで検査記録を記入するという流れであった。

「既存の帳票がそのまま転用できるのはi-Reporterしかなく、ほかの電子帳票ソリューションに比べて販売シェアが高いということも知って最終決定に至りました」と大林氏。

i-Reporterはさまざまなベンダーが提供している。同社は3社の提案を検討し、その中から大塚商会を選んだ。大林氏は、大塚商会を選定した理由について「過去の実績や見積りも評価しましたが、何より万全のサポートが期待できる点に安心を感じました」と語る。

熊平製作所が使用している実際の画面。製品の寸法測定結果を数値で入力し、あらかじめ設定された数値と合っているかどうかで自動的に合否判定する工夫している

情報管理部 情報管理グループ 主幹 大林正和氏

「i-Reporterをカスタマイズしやすい連携ツールを提供していること、そのツールまでこちらの要望に応じてカスタマイズしてくださる大塚商会さんの柔軟性を高く評価しました」

i-Reporter PLUSによって短期間でカスタマイズ

同社はi-Reporterの導入に当たって、既存の生産管理システムと連携させて運用することを考えた。「生産システムにあらかじめ登録されている製品名、型式、検査担当者などのデータがそのまま検査記録の帳票に自動入力されるようにすれば、入力の手間が大幅に解消されます。省ける工数は極力省くため、生産管理システムと連携させることにしたのです」と語るのは、品質保証部 検査グループ 主幹の藤村大助氏である。

連携にはカスタマイズが必要だが、大塚商会はi-Reporterのカスタマイズを容易にするオリジナル連携ツールi-Reporter PLUSを提供していた。しかも、熊平製作所の要望に応じて連携ツールであるi-Reporter PLUSをより使いやすくカスタマイズするなど、心配りの効いたサポートを提案していたことが、大塚商会を選んだ最大の決め手となった。約1カ月という短期間でカスタマイズを完了し、製品検査記録の電子化は正式にスタートした。

品質保証部 検査グループ 主幹 藤村大助氏

「生産性向上はもちろんですが、電子帳票システムだからこそ設定可能な自動合否判定などによって、検査の品質そのものが大きく向上したことは大きな成果です」

検査業務そのものの品質向上に満足

i-Reporterの導入によって、熊平製作所の製品検査記録のプロセスは大きく変わった。まず、生産管理システムで工事着手を実施すると、i-Reporterが該当製品に適合した検査記録フォーマットが自動で選択され、製造担当者のiPadに表示される。従来は文書管理システムから該当帳票を出力し、それに手書きするというプロセスであったが、iPadの画面上で呼び出し・入力・保存ができるようになった。

「紙の帳票のときは、A4用紙1枚に全てを書き込むので記入欄が小さくなってしまいましたが、電子帳票なら画面上でスクロールすればいいので、帳票のフォーマットをゆったりとしたデザインに変更しました。おかげで確認や入力がしやすくなり、現場の作業が楽になりました」と藤村氏は語る。

一品一様の製品についても検査記録の電子化を目指す

このほかにもi-Reporterの導入を機に、製品の寸法測定結果を数値で入力し、あらかじめ設定された数値と合っているかどうかで自動的に合否判定する仕組みや、検査記録をテキストだけでなく画像でも残せるようにするなど、電子化したからこそできるさまざまな工夫を凝らした。

i-Reporterの導入効果について、「検査記録の準備から保管に至るまでの時間が従来よりも96.5%、記録の検索に要する時間は99.2%短縮されました。紙の記録がなくなり、ペーパーレス化と記録保管スペースの大幅削減が実現したのも大きな成果です」と盆子原氏は語る。しかし「何より、自動合否判定の仕組みを採り入れたことで、記録ミスや記録漏れがなくなったことのメリットが大きい。検査業務そのものの品質が向上したことに大変満足しています」と藤村氏も笑みを浮かべる。

今後の課題としては、「一品一様の製品についてはまだ紙で対応しているので、この電子化を実現したい。また、現場によっては手が汚れてタブレットにタッチできないので、音声入力にも対応できる仕組みを作っているところです」と藤村氏。また盆子原氏は、シムトップスへの要望として「製品検査記録はコンスタントに更新されるので、版管理、履歴管理ができる仕組みを取り入れてもらえるとありがたいですね」と話を締めくくった。

『i-Repoer』の導入によって業務効率の向上はもとより、検査業務そのものの品質向上につながっている