設備CADを2Dから3Dへ転換し、設計品質を格段にレベルアップ。新規案件の受注にもつながる
株式会社川瀬設備設計
- 業種
- 設備設計
- 事業内容
- 空調設備、電気設備、衛生設備などの設計、積算、建設現場管理
- 従業員数
- 10名(2021年12月時点)
導入事例の概要
株式会社川瀬設備設計は、取引先に提供する設備設計データの整合性を高めるため、建築設備専用 3D CAD「Rebro」を導入。フロントローディングのメリットが設計品質への信頼性を高め、取引先の案件受注も増加した。操作性の高いRebroを活用することで作業効率がアップするなど、生産性向上にも結び付いている。
導入の狙い
- フロントローディングを実現し、設計データの信頼性を高めたい。
- 設計の作業効率を改善したい。
導入したメリット
- 正確な設計データの納入により、設計の整合性が取れ手戻りが減少。
- 3Dモデリングで正確に把握できるようになり、空調・衛生・電気設備の干渉チェックが容易に。
導入システム
規模や種類にかかわらず、あらゆる物件の設備設計を行う
東京都江東区の株式会社川瀬設備設計(以下、川瀬設備設計)は、空調設備、電気設備、衛生設備などの設計や積算、建設現場管理などを行う設計事務所だ。1979年に設立され、1995年に株式会社となった。現在10名の社員が勤務し、そのうち約6名が設計業務を行っている。
請け負う工事案件は新築と改修がほぼ半分ずつ。床面積15万m2のショッピングモールから2階建て2,000m2のオフィスビルまで、顧客の要望に応じて大きさや建物の種類を問わずあらゆる全国の物件の設備設計を手掛けている。
「取引先は大手ゼネコンやサブコン、建築事務所などで、いずれも長いお取引があります。さまざまな物件の設備設計を請け負ってきたので、蓄積された経験とノウハウには自信を持っています」と語るのは、同社の川瀬雄一氏である。
コロナ禍に際しては、社員の3分の1をリモートワークにするなど、取引先からのニーズに応えるため柔軟な勤務体制を確立。
川瀬雄一氏
「巣ごもり需要の拡大によってオンライン通販を支える物流倉庫の概算設計依頼が増えており、コロナ禍でも全体の業務量は大きく減っていません。時代ごとに求められる建物のニーズに的確に対応できるのが当社の強みだといえます」
直感的な操作性と充実した機能で、Rebroを導入
川瀬設備設計は2017年ごろに、大塚商会を通じてNYKシステムズが開発した建設設備専用3D CAD「Rebro」を導入した。
その理由について川瀬氏は「3D CADの特性として設計の整合性が挙げられます。いわば設計初期段階に負荷をかけて事前に設計検討や問題点の改善を図るフロントローディングの実現によって、当社が提供する設計データへの品質を高めたかったからです」と説明する。
従来、同社は2Dの設備設計データをゼネコンやサブコンなどの取引先に納入していた。しかし2Dでは、配管やダクトの干渉などを完璧にチェックすることは難しく、作業の手戻りの原因となっていた。3Dモデリングによってあらかじめ干渉チェックを済ませた設計データを納入すれば現場の施工はスムーズになり、手戻りの数も減る。取引先の作業負担を減らすことで同社への信頼が高まるだけでなく、同社自身の業務効率向上も同時に実現できる。この一石二鳥の効果を得るために「いずれは3D CADを導入したいと考えていました」と川瀬氏は振り返る。
大塚商会の展示会に足を運びRebroを選定
そんな折、長年取引のある大塚商会の営業担当者が川瀬氏にRebroを紹介。その後、大塚商会が開催する3D CADの展示会に足を運び、実際の操作方法や3Dモデリングの仕上がりなどを確認した。川瀬氏は操作性の良さや機能が充実している点を高く評価。ほかの3D CADと比較検討することなく、手始めにRebro1ライセンスを導入した。
Rebroは、高精度な3D設備モデルを作成し、設計から施工、維持管理に至るまでの情報をシームレスに展開できるのが大きな特長だ。さらにコマンドを起動することなく、ハンドル機能によって作図や編集ができる直感的な操作性を備えている。一つの3Dモデルデータから平面図や断面図、詳細図などの各種図面を用途に応じて生成可能だ。
「使いやすさや用途の広さを考えると、従来の2D CADに比べて、設計作業自体も大幅に省力化できるのではないかと期待しました」と川瀬氏は語る。
使いやすさは想像以上。懇切丁寧な電話サポートも評価
こうしてRebroを導入した川瀬設備設計は、開発したNYKシステムズの講習会に参加して基本的な使い方を覚え、その後は独学で3Dモデリングや設計の方法を学んでいった。実案件の設計にRebroを用い、実践を通じて描き方などを身に付けたのである。
「Rebroの使いやすさは想像以上でした。例えば従来の2D CADでは作図をする際に使用するコマンドが多く、探すのにとても手間取っていました。しかしRebroはコマンド自体が少ないのですぐに見つかり、これだけで大幅な時間短縮につながります」と川瀬氏は語る。
また、2D CADによる平面の設計図では、空間における部材や配管などの配置が認知しにくかった。「Rebroなら、3Dモデルデータの任意の場所を断面にすれば、簡単に配置状況を確認することができるので空間認知が格段に容易になります」と川瀬氏はそのメリットについて説明する。
不慣れな操作はカスタマーサポートに相談して習熟
しかし、いかに操作性が良くとも、それまで作成したことのない3Dモデリングを自在に操れるようになるまでには2年近い時間を要したという。その間分からないことはNYKシステムズのカスタマーサポートに電話で尋ねながら、少しずつ習熟度を高めていった。「電話で相談した後にこちらが作成したモデルをカスタマーサポートに送ると、モデルを確認してから『ここを手直しした方がいいですね』と適切なアドバイスを返してくれます。おかげで独学でもなんとか使いこなせるようになりました」と川瀬氏は振り返る。
その後、川瀬設備設計はRebroを6ライセンス追加導入。現在では同社6名の設計担当者が使用している。過去には週1回程度、社内にて勉強会を行っており「まだ全員が活用できるレベルには達していませんが、2Dから3Dへのシフトを着実に進めていきたい」と川瀬氏は抱負を語る。
3Dへの取り組みが評価され、案件受注が増える
勉強会の成果もあって、Rebroを活用する設計担当者は徐々に増えている。
石田有輝氏
「配管を選ぶ際には中を流れる水の量、ダクトの場合は風量を設定すると、自動的に適切なサイズの候補が表示されるのが非常に便利です」
また川瀬氏は、「空調機器を設置する場合、どの室外機がどの部屋の室内機とつながっているのかという系統分けをする必要があります。Rebroには該当する部屋を色分けしてくれる機能が備わっていて、系統分けも容易に可能です。細かい配慮ですが、とても気配りができていると思います」と評価する。
ほかのシステムとの連携で業務の一層の効率向上を目指す
導入に携わった川瀬氏はRebroを使うようになったことで、取引先からの評価が高まり、案件の受注が増えたことに効果を感じている。
「あるスーパーゼネコンからのアンケートで、『3D CADを利用していますか?』という問いにRebroを利用していると答えたところ、受注を獲得できたケースもあります。フロントローディングに取り組んでいることが、一定の評価を得られたのだと思います」(川瀬氏)
また、現在はRebroと積算用のシステムの連携がされていない。いずれはシステムを連携させて、設計データを作成すれば自動的に積算が行われる仕組みを構築したいという。
最後に川瀬氏は、大塚商会について「建築だけでなく、さまざまな業種とお付き合いがあることが強みだと思います。その経験を踏まえて、これからもITを使った合理化などの提案をお願いしたいです」と語った。