初心者でも使いやすい3D CADで配管やダクトの位置を事前にチェックし、特殊空調施設の設計時間を半分に短縮

津福工業株式会社

業種
産業空調設備業
事業内容
産業空調(精密・特殊空調、試験室・クリーンルーム・手術室・恒温恒湿室)の設計・施工、冷熱空調機器製作、メンテナンス、冷熱・空調システム設計
従業員数
26名(2022年10月現在)
サイト
https://tsubuku.co.jp/

導入事例の概要

福岡県久留米市に本社を構える津福(ツブク)工業株式会社は、特殊空調施設の設計業務の効率改善を図るため、BIM対応建築設備専用3D CAD「Rebro」を導入し、2次元設計の課題を解消。3Dモデルで配管やダクトの位置を事前に確認できることで設計時間を半分以下に短縮するなど、顕著な導入効果をもたらしている。

導入の狙い

  • 設計業務の効率改善と時間短縮を図りたい。
  • 設計図面を3D化して空調設備の配置を見やすくしたい。
  • 顧客や施工スタッフとの意思疎通を円滑にしたい。

導入したメリット

  • 設計時間を以前の2分の1に短縮。
  • 3Dモデルにより、顧客や施工スタッフとの意思疎通が円滑に。

導入システム

高度な空調管理が求められる、特殊空調施設のエキスパート

津福工業株式会社(以下、津福工業)は1963年に創立された産業空調のエキスパート企業だ。特に特殊空調と呼ばれる空調施設の設計・施工を得意としており、具体的には、大学や製造系企業の研究室、病院のクリーンルームや手術室、農業試験場の実験室などに必要不可欠で高度な空調管理が求められる環境づくりを行っている。

単に空調設備を設置するのではなく、特殊空調の空間全体を作り上げて既存の施設内に設置するソリューションを提供していることが大きな強みだ。例えば研究室では、年間を通じて温度や湿度を一定の数値に維持しなければならなかったり、逆に急激に変化させる必要があったりする。その中には、新製品を開発するために、気温80℃から一気にマイナス20℃まで引き下げてヒートショックの試験を行っている過酷な環境もあるという。一方、病院のクリーンルームでは、室内に浮遊する粉じんを制限し清浄度を維持しなければならないという難しさがある。特にコロナ禍では、部屋の入り口で気圧を調整することで病原菌・ウイルスの出入りを防ぎながら換気をよくするために、排気と吸気をコントロールするニーズが増えているという。

そうした中、3D CADを新たに導入。従来の2次元設計の課題を解消し、設計業務の効率改善と意思疎通のスピードアップを図った。

設計課長 第一種冷凍空調技士 奥村和也氏

「私は主に特殊空調施設の設計業務を行っています。営業担当がお客様からヒアリングしてきた要求事項を基に、最適な空調機を選定してシステムを構築。そのうえで、配管やダクトの位置を考慮しながら部屋全体を設計し、施工部門に引き渡しています」

2次元設計の課題解消を目的に、使いやすい3D CADの導入を検討

以前は、他社製の2次元CADを導入し、サポート契約が終了した後も継続して利用していた。しかし、業界全体が3次元設計に移行する中で、従来の2次元設計では効率が悪く、そのまま使い続けることに違和感を覚えるようになった。

「特殊空調施設は、複数の配管やダクトが入り組んでいます。そのため、2次元の平面図と断面図だけでは部屋全体の設備の配置をイメージすることが難しいので、3D CADで設計図面を立体にして、施工スタッフやお客様に全体像を一目で理解してもらえるようにすることが大きな課題の一つでした」(奥村氏)

そこで、3D CADへの移行を目的に、数社の製品を比較検討するようになった。しかし、いずれも導入費用が高く、なかなか導入には至らなかった。そうした中、候補として急浮上したのが、大塚商会から提案を受けたBIM対応建築設備専用CADソフトRebroだった。

「大塚商会さんにRebroを提案していただいたときに、操作がシンプルで使いやすいという印象がありました。当社が求めていた機能と性能を十分満たしていたので、これなら3D CADを使ったことがない社員でも、すぐに使えるようになると確信しました。コスト面も他社製品に比べてリーズナブルでした」(奥村氏)

Rebroは、通常の買い取りライセンスプランに加え、1カ月単位で気軽に導入できるレンタルプランを利用できる利点もあった。そこで、まずはレンタルプランで試験的に導入し、BIM対応の3次元設計環境を整備することになった。

CAD操作未経験の新人社員も、研修なしでも直感的に操作可能

もともと3D CADは操作が難しいというイメージを抱いていたため、当初は実案件で使いこなせるのか不安もあったという。しかしRebroは、従来と同じように平面図と断面図を作成すると、そのデータが自動で反映されて3Dモデルができる仕組みになっているので、すぐに不安は拭い去られた。

「実際に使ってみると、難しいという感じることは一切ありませんでした。むしろ簡単に3Dモデルを作成できるので、積極的に活用するようになりました」(奥村氏)

そのため、3D CADの導入は初めてだったにもかかわらず、特別な操作研修などの社内教育は実施していない。マニュアルやWeb上の情報を参照することで、設計やCAD操作の経験がない新人でも、直感的な操作で使えるようになったという。

設計課 近藤晃人氏

「設計スキルがゼロの状態でRebroを使い始めたのですが、平面図に寸法や高さを指定して入力するだけで3Dモデルが簡単に作成できるので、とても使いやすいです。ほかの3D CADを使っていたら、作業量が増えて操作を覚えるまでにもっと時間がかかっていたと思います」

Rebroで作成した3Dモデル。画面上に人を配置し、部屋全体のサイズ感を分かりやすくする工夫を施している

Rebroで作成した断面図

ライセンスとレンタルプランを使い分けて有効活用

Rebroは社内で好評だったので、日常業務で頻繁に活用する設計部門3名はレンタルプランから買い取りライセンスプランへ移行。その一方で、施工部門のスタッフ4名と東京事業部のCADオペレーター1名は、3D設計の案件を受注したタイミングでレンタルプランを適時利用することで、無駄のない運用を実現している。設計課 主任の杉本勲氏は、Rebroの導入メリットについて次のように語る。

設計課 主任 杉本勲氏

「2次元CADで平面図と断面図を作成していたときは、空調機と配管やダクトがぶつからないように、頭の中で全体の設備の納まり具合をイメージしながら設計作業を行う必要がありました。その点、Rebroは頭の中でイメージしていたものがダイレクトに3Dモデルとして表示されるので、非常に便利です。設計段階で設備の納まり具合を事前に確認できるので、施工現場から、この図面では設備が納まらないので書き直してほしいと言われる心配がなくなりました」

3Dモデルで全体の配置を事前に確認。設計時間を以前の半分以下に大幅短縮

今やRebroは設計業務に必要不可欠なツールとして同社に大きな効果をもたらしている。例えば、特殊空調施設は、既存の建物内の一部エリアを撤去して設置するケースが多い。そのため建物の平面図を基に、Rebroで特殊空調施設の平面図と断面図を新たに作成する。その際、設計段階で空調機や配管、ダクト、メンテナンスの作業スペースなどを確保しなければならず、これまで2次元設計のときは平面図と断面図を何枚も作成しないと、全体の配置を把握することが困難だった。今では、Rebroで3Dモデルに変換することで、その作業が一気に軽減された。

「寸法や高さを入力して3Dモデルを作成すれば、平面図や断面図では見えにくい天井裏の作業スペースも一目で確認できます。そのため、設計図面を後から書き直す手間が省けるので、設計時間は以前の半分以下に短縮されました」(奥村氏)

3Dモデル。設計段階で配管やダクトの位置をチェックしてから実際の設備を設置している

実物の施工例

特に設計段階で設備の納まり具合をチェックできるようになった効果は大きいという。「例えば、特殊空調施設のスペースが小さい場合は、その中に必要な設備を納めるのは至難の業です。もしも3Dモデルで配管やダクトの配置を確認しながら微調整ができなかったら、うまく納まらないケースがほとんどです」(奥村氏)

顧客や施工スタッフとの意思疎通も円滑化

完成したリアルな3Dモデルを見せることで、顧客や施工スタッフとの打ち合わせもスピーディーに行えるようになった。

「2次元図面では室内が広く見えても、実際に施工すると狭く感じることが多々あります。しかし、事前に3Dモデルで確認してもらうことで完成形をイメージしやすくなります。その際、3D画面にあえて人物を配置する工夫を行っています。それによって、全体のサイズ感が伝わりやすくなるからです」(奥村氏)

現在は、3D CADを導入している施工業者も少なくない。そのため、施工先の隣の現場で作業をしている別の施工業者と3Dモデルを見せ合いながら効率よく作業を進めるケースもあるという。双方で3Dモデルを確認しながらダクトの位置を50ミリ移動してもらうなど、施工業者間の意思疎通が円滑に行えるようになった。

今後は、大手設備会社とBIMデータをやりとりするケースが増えてくるので、Rebroのユーザー数を順次増やしながら、BIMに対応できる人材を育成することが課題だという。同時に、Rebroの機能を最大限に活用することで設計業務のさらなる効率改善を図る。

「例えば、現地の写真と3Dモデルを合成して、VR空間で特殊空調施設のプレゼンテーションを行うことも可能なので、将来に向けてぜひ実現したいです」(杉本氏)

Rebroの導入を機に、津福工業の設計環境は急速に進化を遂げている。