SolidWorks Simulationは超音波を目で見ることができるので、開発期間とコストが大幅削減されました

株式会社 岳将

株式会社 岳将

福岡県春日市の岳将(たけしょう)は、精密加工用の超音波ロータリー加工機メーカー。超音波の応用技術が評価され、経済産業省による「2007年度明日の日本を支える元気なモノづくり中小企業300社」に選ばれるなど各業界から注目を浴びている。半年前に解析ツールSolidWorks Simulationを導入し、既に大きな成果を上げているという同社を訪問、詳しく話を聞いた。

岳将について ~超音波応用加工機の設計製作~

岳将の業態をお聞かせください。

岳将は、超音波応用加工機の設計製作に独自の技術を持っています。主力商品である「40kHz超音波ロータリースピンドル」は、40kHz超音波を使った世界初の加工機で、一般機械に比べて加工速度が2倍以上、工具(ダイヤモンド砥石)寿命が3倍以上、切りくずのハケがよく目詰まりしにくいという利点があります。

主に半導体製造装置や光通信機器のセラミックス、石英ガラス精密部品の小径穴加工専用機などに使用されています。また、ハイテクメーカーや加工会社から依頼を受け、新素材の受託加工や試作品づくりにも協力しています。社員数は16名、売上高は3億8000万です。

(左)ワークを削るツール(スピンドルの先端部分)の一例。材質と目的によりさまざまな形状がある。 (右)超音波スピンドルによる加工例。通常加工では難しい斜め方向の穴なども容易にあけることができる。

(左)ワークを削るツール(スピンドルの先端部分)の一例。材質と目的によりさまざまな形状がある。
(右)超音波スピンドルによる加工例。通常加工では難しい斜め方向の穴なども容易にあけることができる。

SolidWorks Simulationを解析に活用

岳将ではSolidWorks製品をどのように活用していますか。

岳将では2008年10月、解析ツールSolidWorks Simulation Professionalを1本、SolidWorksを1本の計2本導入しました。現在、全ての製品について64bit搭載のワークステーションを使って解析を行っています。

超音波スピンドルは、右図のように四つの部分から構成されています。ワークを削る先端のツール([4]の部分)が超音波振動を連続させるには「共振」の状態を保ち続ける事が必要です。ワークの材質によって超音波振動の伝わり方が違うため、どんな加工に使うかでツールの構造を変えなければなりません。そこで、 SolidWorks Simulationによる固定値解析で、共振の状態をチェックし、チューニングをしながらツールの長さや形状、構造を決めています。

SolidWorks Simulation導入以前はどうしていたのですか。

ダミーで現物を作り、チューニングをして最終製品を作っていました。実績のある製品ではこのやり方でもさほど問題はありませんでしたが、難易度の高い製品や新しい製品ではダミーを4回も5回も作り直しをしなければならないこともありました。

ダミーを作って調整するこのやり方は、材料コストだけでなく時間もかかり、開発が前に進まず、場合によっては1~2カ月かかることもありました。

また、お客様との仕様決めの際、要望を聞いても「やってみないと分かりません」という回答しかできないこともありました。これはお客様にとっても、当社の営業推進上にとっても大きな問題でした。

[1]超音波振動子 [2]支持ホーン [3]超音波ホルダーホーン [4]ツール(ダイヤモンド電着ツール等)

[1]超音波振動子
[2]支持ホーン
[3]超音波ホルダーホーン
[4]ツール(ダイヤモンド電着ツール等)

SolidWorks Simulation導入の経緯

今回、SolidWorks Simulationを導入した経緯をお聞かせください。

実は以前から解析ツール導入の検討はしており、3年前にも大塚商会にデモをしてもらったことがあります。しかしその時は設備投資の優先順位が他のもののほうが高かったために見送りました。

しかし先ほども述べた通り、商談時に製作可能かどうかをデータで示して営業をやりやすくするには解析ツール導入の必要性があり、2008年の5月頃から本格的に導入を検討しはじめました。大塚商会には再度デモをお願いし、SolidWorks Simulationをはじめ3製品について見積もりを依頼し、検討しました。

3製品の中でSolidWorks Simulationに決めた理由は何ですか。

SolidWorksはハイエンドの解析ツールと比べて価格面でも納得ができ、充実したサポートを受けられるという期待がありました。

そして決め手となったのは、操作が複雑すぎない点です。岳将には解析専門の技術者はいません。設計者がそれぞれの業務を行いながら使いこなす解析ツールである必要があったため、あまり専門的過ぎるものではダメでした。その点、SolidWorks Simulationは3製品の中で最も操作がしやすかったことが決定の理由でした。

「設計者全員が使いこなせる解析ツールということでSolidWorksを選びました」白石氏

室長代理 白石博文氏

「設計者全員が使いこなせる解析ツールということでSolidWorksを選びました」

導入コンサルティングはどのように行われたか

導入時に不安だったことはありますか。

やはり、解析結果と製品が合うかどうかということが最も不安でした。「導入したけど使い物にならない」というのでは困ります。そこで導入に際し、大塚商会による導入コンサルティングを受けることにしました。

導入コンサルティングはどのように行われたのでしょうか。

SolidWorks Simulationで解析を行うには、まずSolidWorksでのモデリングが必要になるため、SolidWorksの操作を学ぶ必要がありました。設計者全員が大塚商会で開催されている4日間の基礎スクールを受講しました。

ここで一通りの操作を学んだあと、解析に移りました。実際に業務で使用しているデータをコンサルタントにお渡しし、それを教材として、静解析と動解析の流れ、チャート、解析結果の評価方法などをテキストにまとめてもらいました。

その上でコンサルタントに来社していただき、数日間にわたり実際の業務における解析の講習を受けました。

その後はどんどん実際に解析を行っていきました。分からないところは「たよれーる」などに電話をして問い合わせをして解決していき、導入から半年が経過した現在はフルに活用しています。

当初の懸念事項であった解析結果との整合性はいかがでしょうか。

ぴたりと合うものが大半ですが、形状によっては残念ながらはずれるものもあります。今後は実績を重ねていきデータを増やしていくことで解析と製品の整合性を高めていきたいと思っています。

「まず大塚商会で行われた操作の講習に参加しました」 森永氏

森永真吾氏

「まず大塚商会で行われた操作の講習に参加しました」

SolidWorks Simulationの導入効果

SolidWorksの導入効果をお聞かせください。

SolidWorksを導入しての効果は以下四つです。

1.振幅の方向が見えるようになったこと

解析結果がグラフで出てくるので、「共振」の状態を目で見ることができるようになったことは非常に大きな導入効果です。こちらが望む方向と大きさが出ているのか、均一性があるかなど、これまでは実績とカンに頼らざるを得なかった共振の状態が一目瞭然で分かるのでチューニングが非常にやりやすくなり、望む製品の精度に到達するまでの時間が30~40%早まりました。

2.共振周波数が見えるようになったこと

振幅だけでなく周波数も見ることができます。岳将の製品は40kHzの超音波を使用しますが、これまでは手探りで探していた共振周波数をすぐに探せるようになりました。

3.製作工数と期間、コストが削減されたこと

ダミーを作って検証し、だめならまた次のものを作っていくというやり方だと、製作工数も期間もかかります。そのため納期が短い場合には、開発期間短縮のため2~3種類のダミーを一度に作って検証を行っていました。しかし、このやり方だと今度は材料コストがかかります。SolidWorks Simulation導入後はダミーを作らずに済むため、工数、期間、コスト全てが削減されました。

4.営業がやりやすくなったこと

もうお客様からの問い合わせに「やってみないと分かりません」と言わなくてもすむようになりました。実物がなくても解析の結果をもとに商談が進みます。もう既に進行中の案件がいくつかあります。

超音波加工機の先端部分:SolidWorksSimulationProfessionalによる固有値解析

超音波加工機の先端部分:SolidWorksSimulationProfessionalによる固有値解析
(左)周波数ごとのモード形状(ベクトル)結果。この解析により超音波加工時の振動の方向、振動の伝わり方を確認することができる。
(右)同じく周波数ごとのモード形状(コンタ図) 振幅の分布を確認することができる。

「振幅が見えるようになりチューニングの時間が早まりました」 

技術開発室 室長 村上幸男氏

「振幅が見えるようになりチューニングの時間が早まりました」

大塚商会への評価と今後の展望

大塚商会への今後の期待をお聞かせください。

大塚商会の導入コンサルティングは非常に分かりやすかったです。実際のモデルを使って、業務に即した手順でやってくれたので、みなすぐにやり方を覚えました。2カ月後の昨年12月には精密工学会の九州地方講演会において、SolidWorks Simulationの動画を使って発表をしたほどです。わずか2カ月で立ち上げることができたのは、コンサルティングによるものが大きかったと思っています。

また、セミナーなどを開催して情報を提供してくれるのも大塚商会の良い点です。今後はツール加工のためCAMを入れていきたいと考えていますので、引き続き良い提案をしていただきたいと思います。

今後の展望をお聞かせください。

セラミック関連の業界にとって超音波はよく知られていますが、それ以外の業界ではまだまだ広まっているとは言えません。今後は、超音波技術をより多くの人に知っていただき、使っていただけるように活動していきたいと思います。また、今後も引き続き新たな超音波応用機を開発し続けていきたいと思います。大学と協力して研究しているテーマもいくつか進行中です。

もちろん解析に関しては、データを集めてより精度を上げていき、お客様のニーズに応えていくつもりです。今後ともどうぞよろしくお願いします。

「これから超音波技術をますます広めていきたいと思います」 岳氏

常務取締役 岳将士氏

「これから超音波技術をますます広めていきたいと思います」