FlowDesignerを用いた結露シミュレーション(浴室編)
結露の発生要因を確認し、浴室内の問題点をシミュレーションで特定する
FlowDesignerを活用した浴室の結露シミュレーションについて解説。高湿度環境となりやすい浴室における結露の発生メカニズムを解明し、シミュレーションを通じて具体的な問題点を特定します。空間構成、湿度分布、換気条件の三つの観点から結露発生要因を分析し、その抑制策を検討します。
結露発生のリスク
結露は次に示すように、多岐にわたる深刻なリスクを引き起こし、その影響は連鎖的に拡大する可能性があります。
1.建材の劣化・腐食
壁内や床下に結露が繰り返し発生すると、断熱材や木材が腐食・劣化し、建物の耐久性が低下。カビの発生源となり、構造体の寿命を縮める要因に。
2.カビ・ダニの繁殖
高湿度はカビやダニの温床となりやすく、アレルギーや喘息などの健康被害を誘発。
3.室内空気質の悪化
結露によって発生したカビの胞子や微粒子が空気中に拡散し、室内の空気環境を悪化させる。換気不足と相まって、シックハウス症候群のリスクも増大。
4.美観の損失
窓枠や壁紙に残る水滴やカビ跡は、居住空間の美観を損ね、快適性を著しく低下させる。
1.空間モデリングと解析準備
結露による室内への影響を把握するため、解析目的に合致した現象を定義します。これに基づき、気流・温度・結露解析に必要な解析領域と要素を抽出します。
図1:実空間のレイアウト
2.シミュレーションモデルの構築
ステップ1で抽出した要素に基づき、シミュレーションモデルを構築します。FlowDesigner内での解析を可能にするため、解析用の境界条件の設定、メッシュ分割、物性値の定義を行います。
今回のモデルは、浴室と洗面所が隣接する単一空間として構成されています。両空間は扉で区切られていますが、上部がつながっているため、空気や湿気は空間を自由に移動できる条件で解析を進めます。
図2:解析モデルのレイアウト
3.換気扇の有無による解析結果比較
構築した解析モデルを用い、換気扇のあり・なしでの解析結果について比較しました。
換気扇なしでの解析結果
換気扇がない場合、シミュレーション結果は壁面に高湿度領域が集中し、表面結露量が高い分布を示すことが確認されました。換気不足により湿気が滞留し、結露リスクが高まることを示唆しています。
図3:換気扇なし
換気扇ありでの解析結果
浴室の天井面に換気扇を設置した結果、空気の流動が促進され、温湿度が均一化することが確認されました。結露抑制効果が示され、換気による湿気排出の重要性が確認できました。
図4:換気扇あり
4.FlowDesignerで高ビジュアルシミュレーションを実現!
FlowDesignerは、高度なビジュアル表現を得意とするシミュレーションソフトウェアです。形状モデル表面へのテクスチャーマッピング機能や、空間内のライティング設定により、室内の照明表現まで再現できます。
高ビジュアルシミュレーションは付帯機能ではありますが、メリットとデメリットについて説明します。
メリット |
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デメリット |
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高ビジュアル3Dモデルによる空間再現
FlowDesignerを用いて、一般住宅のユニットバスを想定した浴室モデルを作成します。洗面台、トイレ、シャワーエリアを含む空間を忠実に再現し、鏡や棚、便器、洗面台などの主要な形状だけでなく、引き出しの取手などの細部もテクスチャーマッピングによって表現します。これにより、空間の視覚的な認識が容易になり、解析の専門家でもない方でもシミュレーション結果が直感的に伝わりやすくなります。
湿度分布結果の重ね合わせによるリスク位置の特定と評価
FlowDesignerで実行した解析結果は、現況の相対湿度分布として可視化されます。空間内の任意の断面を切り出し、湿度分布を色分けして表示することで、結露リスクの高い領域を特定できます。これにより、空間内の現象把握が容易になり、評価結果も効果的に伝わります。
今回の解析では、シャワーエリアに高湿度が集中しており、換気・断熱設計の重要性が浮き彫りになりました。
まとめ
FlowDesignerは、結露シミュレーションに有効なツールです。湿度分布の可視化により、結露の発生位置と問題点を把握できます。さらに、高ビジュアルシミュレーション機能を用いることで、施主へのプレゼンテーションも同一ソフトウェア内で完結させることができ、現象に対する考察を一つの空間モデル内で視覚的に確認できるようになります。
FlowDesignerの具体的な操作性やビジュアルシミュレーションは、実際の画面でご確認いただくのが近道です。大塚商会では、随時オンラインデモを開催していますので、お気軽にご参加ください。
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