BIM/CIMとGISのクラウドコラボレーション
近年BIM/CIMとGISの連携が進んできていること、ご存じでしょうか?
2017年にAutodesk社とEsri社がパートナーシップを結んで以降、BIM/CIMとGISの間でスムーズな連携ができるようなソフトウェアやサービスが開発されてきていますが、新たにクラウドコラボレーションの機能がリリースされました。
Autodesk社のクラウドサービスには、Autodesk Construction Cloudがあります。データを一元管理し、モデルや図面の閲覧、指摘事項や図面承認などの業務フローを提供する「Autodesk Docs」や、関係者間でのデザインコラボレーション、Revitモデルの同時編集などの機能を持つ「BIM Collaborate Pro」などのパッケージがあります。
ESRI社が提供するArcGIS Onlineでは、クラウド上でGISデータの管理や共有、コラボレーションが行えます。このArcGIS Onlineの拡張機能として2022年春リリースされたのが「ArcGIS GeoBIM」です。
弓場 洋子
大塚商会CADソリューション推進課
ArcGIS GeoBIM
ArcGIS GeoBIMは、「建設のAECプロジェクトと地理空間を結び付けて意思決定を支援する」というコンセプトのもと、ArcGIS Online に共有されているGISデータとAutodesk Construction CloudやBIM360に共有されている3Dモデルや設計図書を“リンク”させてGeoBIMのプロジェクト上で統合し、それをWebアプリで簡単に操作して、関係者間のコミュニケーションと共同作業の効率化を実現します。
クラウドを使用すれば建設プロジェクトの関係者とあらゆるデータを共有できますが、設計者の皆様がプロジェクトで共有する情報としては、図面データ(設計図書)やBIM/CIMモデルは欠かせません。一方で、GISは地図データだけでなく、3D都市モデルデータ、点群データ、統計情報、人流データ、IoTセンサーなど都市に関するさまざまなデジタルデータを統合できます。
BIM/CIMとGISでは利用できるデータ形式が違うことから、それぞれのデータをやり取りする際にデータ変換による情報の欠落やデータ管理の煩雑さなどの課題がありました。例えばGISを共通プラットフォームとして利用する場合、そこに格納するデータは基本的にGISデータにする必要があるためデータ変換のプロセスが発生していました。業務進行中に追加され更新されていく図面の管理を考えると、GIS統合でのデータ変換は大きな障壁でもあります。
ArcGIS GeoBIMは、ArcGIS OnlineとAutodesk Construction Cloudの各クラウドにそれぞれのフォーマットで共有されているものを接続する仕組みのため、データ変換を最小限にすることが可能です。また、ArcGIS Online、Autodesk Construction Cloudのどちらも、サインインして必要な人にだけ必要な情報を共有できるため、重要な情報をセキュアな環境でご利用いただけます。
BIM/CIMとGISのクラウド連携のメリット
ArcGIS GeoBIMによるBIM/CIMとGISのクラウド連携のメリットは、以下のとおりです。
- 統合プラットフォームへと環境を移行させることで、GISとBIMデータにリアルタイムにアクセスでき、データを変換する必要がなくなるためワークフローが効率化される。
- GISをデータ連携基盤とすることで、複数のシステムから最新データを取得して一元管理が行え、意思決定の迅速化が図れる。
活用事例
米国HNTB社
米国インフラ建設会社HNTBは米国最大級の国際空港の港整備プロジェクトにESRI社のGeoBIMを採用しました。このプロジェクトでは、既存の旅客ターミナルを拡張・再開発し、新しいコンコースの追加や航空機のゲートの交換や拡張など多くの機能性便利性向上を目指しています。HNTBは周囲のインフラにどのような影響を与えるか、地理空間を背景とし現実の世界観を元に設計に入りました。チームのメンバーはデジタルツイン(実世界を視覚化し、コラボレーションを容易にする3Dモデル)をまず作成し、インフラの設計が位置情報にも対応できるよう、新しいソリューションであるGeoBIMを採用したのです。GeoBIMを採用したことで、BIM/CIMのデータをプロジェクトのあらゆる関係者が見ることができ、異なるデータやシステムとの接続が可能となり、また情報の共有や進捗の監視がよりスムーズに行えた事例となります。
ArcGIS
Autodesk製品とGIS連携が可能なArcGIS。デスクトップ製品とクラウドサービスがあります。
弓場 洋子
大塚商会CADソリューション推進課
CIMブログ第1弾として弓場が投稿しました。CADのアプリケーションスペシャリストとして、3次元CAD製品の教育および販売支援業務を行っています。主に建設土木業向けのAutodesk製品を担当しています。