地域住民説明会における3Dモデル活用について

2次元図面だけでは住民の方に伝わらない

オートデスクでは、Autodesk Architecture, Engineering & Construction Collection(以下AEC Collection)を通じてさまざまな土木向けのソリューションを提供しています。今回はその中でも地域住民説明会でどのような使い方をすれば効果的で、一般の方が見ても分かりやすいのかを私の実体験をもとにお話しさせていただこうと思います。

野坂 俊司

オートデスク株式会社 マーケティング土木担当

3Dモデルなら理解を深めるだけでなく、思いも伝わる

BIM/CIMの必要項目の中では3Dモデルを使い、合意形成や住民説明会などで活用することが求められていますが、私の実体験は2017年までさかのぼります。

北陸新幹線工事に伴う某所の新設道路工事の住民説明会に参加する機会があり、新幹線高架工事に合わせて片側2車線の県道の新設、工事計画や立ち退き、補償範囲を住民にご説明するという内容でした。当時見せられたのは2次元図面だけで土木知識のない住民にはどのようになるのか想像もできない状況でした。

図1:住民説明会で提示された計画平面図を写真撮影したもの

説明会場には図1の平面図が正面と横に貼られていました。この図面だけが説明用に提示されたものです。別途工期とか補償対象区域などについても説明されましたが、前の区間における道路や鉄道などの住民説明会もたったこれだけの図面や口頭説明で納得していたのかと思うと、驚き以外のなにものでもありませんでした。

住民説明会終了後に「新幹線関連の図面はないか」と担当者に確認したところ、別事業者の担当の方から平面図と縦断図を見せてもらえました。

  • 新幹線平面図

  • 高架の縦断図

説明会の終了後に当日参加した近所の方に聞いてみましたが、工期とか新設される道路の位置は理解したものの、どのような形になるのかは全く理解できていませんでした。

そこで社に持ち帰り、オートデスクのエンジニアに相談したところ「3Dモデルを作ろう」ということになり、事業者の担当者に再度お願いし、道路の計画平面図・縦断図・横断図のデータをいただき、3Dモデル作成にとりかかりました。

以下は大まかな手順となります。

1.事業者から提供された平面図(Civil 3D)

2.事業者から提供された縦断・横断図(Civil 3D)

3.位置を合わせ背景に地図を表示(Civil 3D)

4.国土地理院から各種データをダウンロード

5.10mメッシュ標高データ+オルソ画像(InfraWorks)

6.現況建屋などの合成→広域地形モデル(InfraWorks)

7.2次元平面図の合成(InfraWorks)

8.県道部分へのテクスチャの配置(InfraWorks)

9.住民説明会で事業者から提示された平面・縦断図

10.平面図から高架橋の3Dモデル作成_上部工(Civil 3D)

11.平面図から高架橋の3Dモデル作成_下部工(Civil 3D)

12.作成した上下部工の3Dモデル合成(Civil 3D)

13.高架橋3DモデルをInfraWorksへ配置(InfraWorks)

14.景観や日影シミュレーションなど、合意形成に活用

15.3D走行シミュレーション

InfraWorksのアニメーション機能を使って新設道路の走行シミュレーションを作成し、走行時の景観や新幹線高架がどのように見えるのかを確認しました。

この動画には音声は含まれません。

この動画を近所の方にご覧いただき「完成後はこんな感じになります」とご説明したところ、とても分かりやすいと喜んでいただけました。

事業者の方にもクラウドに置いたモデルや動画をお見せしたところ、非常に驚かれ「本当はこんな感じで見せて説明したい」というお声もいただき、作成したモデルを見せてほしいということで、後日オートデスクにお越しいただきご覧いただきました。

さらに数カ月後の2018年2月、今度は別事業者による「新幹線工事」の住民説明会がありました。このときも非常に驚かされたのは、住民への配布資料です。説明会の議事次第と連絡先の2枚をもらっただけでした。道路の説明会のときと比べると2枚のパースのスライドはありましたが……。

2018年2月24日 北陸新幹線工事住民説明会

スライドで工期とか防音対策などについて説明されましたが、当日は配布資料もなく、住民の強い要望で後日配布されることになりました。この新設道路工事、新幹線工事という2回の住民説明会で感じたのは「これまで新設道路やほかの新幹線沿線への住民説明会もこのような図面や資料で行ってきたのか? それで住民の方は納得できていたのか?」という疑問でした。

この説明会は4年前の話ですが、最近は容易に3Dモデルを作成できるため、分かりやすく説明できます。土木について専門知識のない住民も3Dモデルによって理解が深まると思います。

16.3D統合モデルと点群データ合成

BIM/CIMに対応するためだけではなく、3Dモデルを活用することで、事業者、施工者、住民いずれにとっても理解を深めるだけでなく、思いや優しさも一緒に伝えられたのではないかと思います。まだ3Dモデルを利用していない事業者の方も、3Dモデルを作成、活用して分かりやすい住民説明会にしていただければと思います。

また、今回文中で紹介している「Civil 3D」や「InfraWorks」はオートデスクが土木のお客様向けに公開しているサイト「BIM Design」に多くの動画、チュートリアル、事例なども掲載しています。大塚商会の「BIM/CIM導入ナビ」でも製品紹介、価格、動画が掲載されていますので、ぜひご覧ください。次の機会では、オートデスクのサイトであるBIM Designについて話したいと思います。

野坂 俊司

オートデスク株式会社 マーケティング土木担当

土木工学科卒業。土木関係ソフト他社にてサポート・企画、販売支援業務などを担当。オートデスクでは土木分野のマーケティングを担当し、各種セミナーやBIM Designサイトの企画・運営を行っている。