モデル作成に必要な基本データは、ボーリングデータです。ただし、対象地域においては常にボーリングデータが多く収集できるわけではありません。既存の断面図、フィールドデータ、物理探査データ、公開データなどがあれば、それらを組み合わせてよりよい結果が得られます。
しかし、それぞれのデータを組み合わせる場合は分類を同じにしなければなりません。そのためには、地盤境界を同定する必要があります。例えば、ボーリングのある境界が物理探査データのある境界に同じであるといった解釈が必要になります。
専門知識が必要な地盤地質モデル
CIMにおいて地盤地質データは「必須」というわけではありませんが、特定のプロジェクトやシステムによっては必要となる場合があります。地盤地質モデルの作成は、地層の配置、岩石の種類、地質学的な構造、地下水の状態などが関与し、さらに時間経過による変化なども考慮しなければなりません。専門知識が求められる業務になりますが、「GEORAMA for Civil 3D」を用いるとどのようなメリットがあるのでしょうか?
山根 裕之
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 建設ビジネス部
BIM/CIMの利用時には3Dモデルを作成する必要ありますが、地盤地質モデルと構造物モデルではその作成過程において少し意味合いが異なります。
構造物は当初から形状が決まっているため、設計図などから3Dモデルを作成して全体像を確認することができます。一方、地盤地質モデルは地表の下にあるため、全体像を確認することはできません。そのため、地盤地質モデルではボーリングなどの断片的な調査データから図面を作成し、「推定」を行うことで3Dモデルを作成します。つまり、構造物にはない「推定」というプロセスが入ることになります。
地盤地質モデルでは、推定するための調査データが多くなればなるほど精度が上がります。
例えばダム工事などでは、数年にわたり調査を行い、データを累積して地盤地質モデルの精度を上げていきます。実際の施工ではある程度まで調査を実施した後、地質技術者の解釈を取り入れて推定を行い、地盤地質モデルを作成することになります。そのために重要なことは次の3点であると考えています。
モデル作成に必要な基本データは、ボーリングデータです。ただし、対象地域においては常にボーリングデータが多く収集できるわけではありません。既存の断面図、フィールドデータ、物理探査データ、公開データなどがあれば、それらを組み合わせてよりよい結果が得られます。
しかし、それぞれのデータを組み合わせる場合は分類を同じにしなければなりません。そのためには、地盤境界を同定する必要があります。例えば、ボーリングのある境界が物理探査データのある境界に同じであるといった解釈が必要になります。
モデル作成前に多くのデータを収集しても、地盤地質分野では対象領域に対してデータは少ないことが多いです。それを補うためには断面図作成や数学的な補間が必要になります。
ボーリングを断面図上に並べることで解釈を行い、CADなどを用いて断面図を作成します。作成した断面図やデータを元に数学的補間法を用いてモデルを作成します。断面図を作成することで、後でモデルが合理的であるかどうかを判断することで検証できます。断面図を作成せずにデータから直接推定することは、検証や修正作業を困難にします。
モデル作成後データ追加や解釈違いなどでモデルを修正しなければならない場合に、簡単に修正できることが必要です。モデルを修正する場合は、断面図などがあればどの部分を修正すればよいかが分かりやすいと考えられます。また、数学的補間法で推定した形状がうまく整合的ではない場合は仮想データなどを追加してモデルを更新します。
GEORAMA for Civil 3Dでは、これらの考え方と従来の紙ベースでの地質図面作成手順を踏まえて、次の手順で地質モデルの作成プロセスをシステム化しています。
調査データ入力
地形データやボーリングなどのデータを入力します。
断面図作成
入力したデータを元に断面図を作成します。
解釈(推定)
断面図を元に地質構造を解釈して境界テーブル(地質構造を表形式で示したもの)として保存します。境界テーブルを保存することでモデル作成者本人以外の技術者でも作成者の意図を理解することにつながります。
地盤地質モデル作成
入力データ・解釈データから数学的補間法を用いてモデルを作成します。
地盤地質モデル作成のためのプロセス(GEORAMA)
CTCとしてはこれらの考え方を基本にして、BIM/CIM分野における地盤地質モデルの普及を促進していきたいと考えています。
山根 裕之
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 建設ビジネス部
地盤地質分野を中心に長年活動。土木・地盤・地質、BIM/CIM分野での開発・営業に従事している。