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3DEXPERIENCE SOLIDWORKSを核に開かれた開発環境を創出。農作業用ロボットを創り、持続可能な未来の農業を拓く
株式会社たねまき
- 事業内容
- 農業を持続可能な地域産業として根付かせることを目的とした企画・調査ほか
- サイト
- https://www.tanemaki.co.jp/
導入事例の概要
株式会社たねまきは、日本の農業が抱える課題を解決し、日本各地を元気にすることを目指し事業を展開している。農業用ハウスの施工管理や農業用ロボット・管理システムなどの技術開発、農作物の販売といった、持続可能な農業の実現に向けた取り組みを自社にてワンストップで行っている。また、関連会社であり生産拠点のたねまき常総の活動も本格化し、年間1千トンのミニトマトを生産している。このたねまき常総でも多くの新技術が使われており、現在自社開発中の収穫ロボットも今後導入される予定だ。
導入システム
7haの農場が新技術の検証場
「たねまき常総は国内最大級のミニトマト栽培施設で、年間1千トンものミニトマトを生産・出荷しています。しかし、実は当社はミニトマト栽培のみにはこだわっていません」技術開発部の部長 嶌津尊充氏はそう語る。
同社では今後10年でこうした生産農場を10拠点展開していく計画だが、その全てでミニトマトを作ろうとは考えていない。各拠点でそれぞれ異なる環境条件やマーケットのニーズに合わせ、最適な作物を決めるのだ。実際、たねまき常総のミニトマトもそうして選ばれたのである。
「マーケットや現場の声を聞き議論を重ねて選ばれたのがミニトマトでした。ポイントは、これが通年で作業できる作物だったことです」
収穫にピークがある作物は、その時期に作業が集中するため長期に渡る雇用維持が難しい。だが、通年栽培が可能な作物なら作業量を平準化し安定した通年雇用を生み出せる。スマート農業の展開により地域に新たな雇用を生み出そうという同社にとって、通年栽培でき市場価値も高いミニトマトは最適の選択だった。
「生産性を向上し作業者が働きやすい環境を作るため、たねまき常総ではさまざまに創意工夫しています。例えば6mもの軒高を持つハウスはICTを活用し、24時間体制で場内環境を制御します。また、自社開発の労務・作業管理システムも導入されており、作業者一人ひとりがスマホを持って作業を行っているのも特徴です。現在開発中のロボットもこの農場で検証やデータ収集を行っています。つまり、ここは生産施設であると同時にたねまきの新技術の検証場なのです」
開発途中での3D CAD乗り換え
「3DEXPERIENCE SOLIDWORKSを導入したのは約1年前。ミニトマト収穫ロボットの機械設計のメインツールとして導入しました」
技術開発部のロボット開発担当 小泉諒治氏によれば、当初は他社製3D CADを使っていたが、開発が進むに連れ設計ツールとして機能不足を感じたのである。無論、開発途中でのCAD乗り換えは容易なことではない。しかし、彼らは開発環境の将来を考え、変えようと判断したのだ。では、そもそも彼らはどんな収穫ロボットを目指し、3D CADに何を求めていたのか?
技術開発部のロボット開発担当 小泉諒治氏
「収穫ロボットの基本的な仕組みは、深度カメラでミニトマトを認識し、ロボットアームとエンドエフェクターを制御して収穫動作をします。従来のロボットは実だけ収穫しヘタがないものが多いですが、当社で開発中のロボットは、ヘタを残して収穫できるのが大きな特徴です。これは取引先のニーズに応えるためです。その分収穫ロボットにはより複雑で精緻な動きが求められます。だから、パソコン上でその動作をシミュレーションし繰り返し稼働部分の動作チェックを行う必要があります。以前のCADではその作業も難しくて……。今は何とか対応できても、将来、たねまきの開発プロダクトが増えていけば、そうはいかなくなりますからね」
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この続きは・・・・・・
- 自社の製品開発に3DEXPERIENCE SOLIDWORKSを選んだ理由とは?
- 3Dモデルを共有して、ロボット開発を加速。設計環境イノベーションが始まる
ロボット開発分野のスタンダードとは?
3D CAD選定にあたっては、機能の充実や使い勝手の良さは当然の大前提として、小泉氏が重視したのは「業界スタンダードの3D CADか?」という視点である。「当社は将来、ミニトマト収穫用ロボットだけでなく多様なロボット開発を手掛けることになるでしょう。そうなれば、完全な内製化は難しく、他社との共同開発も必要です」ならば協業相手と同じCADを採用しておいた方が、協業もスムーズに進められる可能性が高くなるわけだ。小泉氏は国内でロボット開発に使われている3D CADのシェアを調査したのである。
「結果、この分野で最も使われていたのがSOLIDWORKSだったんです。まさにロボット業界のスタンダードでした」とはいえ、その点だけでSOLIDWORKSが選ばれたわけではない。実は製品決定には、もう一つ大きなきっかけがあった。「コロナ禍がピークを迎えた頃だったんですよ。ステイホームが一般化し、各自の自宅での作業が急増して……。だったらCADも場所を選ばず使えるクラウドベースの製品が良いだろう、と考えました。幸いSOLIDWORKSにはそれがありました。3DEXPERIENCE SOLIDWORKSです」
クラウドに接続できる3DEXPERIENCE SOLIDWORKSは機能的にはオンプレ版とほぼ同じだが、ネット環境があれば何処でも使え、データの保存や共有もクラウド上で容易に行える。しかも数カ月単位でライセンスを購入でき、そのライセンスは機能ごとに分けられるから必要な機能を必要なだけ使える。現状、ロボット担当は小泉氏含め2名だが、ほかの開発が始まれば増員される。クラウド版ならこうした変化にも素早く対応できるのだ。実際、この3DEXPERIENCE SOLIDWORKS導入と共に、彼らの設計環境は大きく変わり始めた。
設計環境イノベーションが始まる
「実は私たちの設計環境には以前から幾つか課題がありました。例えばメンバー間や取引先、生産現場スタッフともっと意見交換したいという課題です。特に現場スタッフの意見は非常に重要でしたが、彼らとのコミュニケーションを効率的に行うには設計中の3Dモデルを見てもらう手段が必要でした」以前のCADではそれも難しかったが、3DEXPERIENCE SOLIDWORKSの導入により、3D Driveでリンク共有することで手軽に3Dモデルを共有できるようになった。
「また、開発途中の版管理の問題も重要でした。収穫ロボットの3Dモデル点数は数千点以上に及び、修正されるごとに新たな版が生まれます。この膨大な版管理を手動で行うのは難しく、間違えて変更を上書きしてしまうミスも発生していました」だが、この問題についてもSOLIDWORKSに解決策が用意されていた。クラウド上でCADデータを管理することで全てのファイルに版管理プロパティが付与され、一定のルールに基づいて厳密にファイル管理が行われる。結果、上書きなどのトラブルもほぼ根絶されたのである。「それまでは、必要なモデルを検索するのにも結構大きな手間と時間がかかっていましたが、フォルダーライクなファイル管理と自動に付与されるタグによる絞りこみ機能で素早くできるようになりましたし、図面やモデルの承認フローのテンプレート化も実現し承認履歴の確認も容易になりました。私たちの選択は正解でしたね」
SOLIDWORKS運用の本格化と共に収穫ロボット開発は順調に進んでおり、いまやその最終段階を迎えている。「SOLIDWORKSについては私自身まだまだ全てを使い切ったとは言えません。実際、試したい機能もたくさん残っています。例えばロボットアームの配線などにルーティング機能を使ってみたいですね!」(小泉氏)。
技術開発部 部長 嶌津尊充氏
「多くの技術者にとって農業はこれまで目を向けてこなかった分野ではないでしょうか。しかし、同時にここは技術的に未熟な部分も多く、私たちにとって大きなやりがいが潜んでいる世界でもあります。開発環境も一新されたことですし、私たちも一層前向きに取り組んでいきたいですね」
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