株式会社オチアイネクサス
株式会社オチアイネクサスでは、これまで取引先との設計情報のやり取りはを2次元CADを中心に行ってきたが、ビジネス環境の変化にともない3次元CAD中心に移行してきた。 高品質で効率的な3次元設計環境を目指し、CATIA V5を導入。トータルでみた開発工数の大幅な削減を実現している。また、設計の初期段階における関係者間の検討の際に、ノートPC等で直接3次元データを見ながら打ち合わせができるため、生産性の向上・コストダウンにもつながっている。
本ページは大塚商会が発行している 「αソリューション」 から転載したものです。
3次元CADで設計されたガントリーローダー。工作機械へのワークの投入や取り出しをするための搬送機器だ
導入事例の概要
導入の狙い
- 取引先とのデータ授受の円滑化と干渉チェック漏れによる手戻り作業の削減
導入システム
- 『CATIA V5(HD2/MD1/MD2)』
- 『CATIA PLM Express』
導入効果
- 取引先とのデータ授受の円滑化と干渉チェック漏れによる手戻り作業の削減
データ授受のために導入したCATIAを複雑な形状をもつ組付機の設計に利用
「当社の二本柱である搬送機器と組付機は、お客様の要求に合わせた一品一様のものが多く、その8割は新規設計です」と機械設計セクションの小宮 智輝氏は主な業務内容について語る。
同社では、もともと設計業務には2次元CADを使用していたが、得意先の自動車メーカーからワーク情報などを3次元CADデータで受け取ることが多くなってきたため、3次元CADデータの授受を目的として、2004年7月にCATIA V5ハイブリッド・デザイン2(HD2)を新規に導入。「以前からお付き合いのあった得意先の部署がCATIA V5で設計環境を構築することになり、当社もそれに合わせてCATIA V5を導入することにしたのです。当初は3次元CADデータを2次元化するための受け渡しツールのような形で導入したのが始まりでした」と小宮氏は語る。しかし、その後、実際の設計業務にCATIA V5を徐々に活用するようになり、2005年4月にCATIA V5 メカニカル・デザイン1(MD1)、さらに2005年9月と2006年5月にメカニカル・デザイン2(MD2)を増設。主に形状が複雑な組付機の設計にCATIA V5の活用をスタートさせた。
「最初は、形状が複雑なタイヤ締付補助装置などを設計対象として選びました。というのも、2次元では表現しにくい形状を、CATIAを使えば容易に表現できるようになると思ったからです」と機械設計セクションの中野 陽雄氏は語る。
株式会社オチアイネクサス 機械設計セクション 小宮 智輝氏
「CATIA PLM Expressでのチーム設計環境が実現すれば、ユニットごとに設計を分担して行い、そのすり合わせもうまくできると思うので、そういう使い方をしたいですね。現在CATIAの設計チームは本社工場の同じフロアにいるのですが、設計者数の増加に伴い、今後は設計拠点を分散化していく傾向にあるからです。また、設計業務の負荷を分散化できる効果もあると思います」
2次元図面をモデリングして3次元設計へスムーズに移行
同社はハイエンドの3次元CADシステムを導入したものの、その導入コストと年間のメンテナンスフィーが高価なことに悩まされ、開発担当者全員の割り当てには踏み切ることができなかった。
3次元での設計業務開始を受け、CATIA V5を増設するにあたり、オチアイネクサスは導入時の研修を充実させることが重要と考え、大塚商会をビジネスパートナーに選んだ。「CATIA V5を増設するときに、大塚商会さんからの提案が一番コストメリットがあり、なおかつ、コンサルティングやサポート面も充実していたので、2台目以降は、大塚商会さんから購入して研修を受けることにしたのです」と小宮氏は語る。
しかし、設計業務を2次元から3次元へ移行した当初は、多少の苦労もあった。「2次元CADのときは、過去の図面データを流用して設計していましたが、移行した当初は3Dモデルの作成時間が必要となり、どうしても時間がかかっていました。大塚商会さんの研修を受けてCATIA V5を操作できるメンバーが増えた現在は、若手の女子社員に、過去の制作物で参考になる2次元CADのデータをCATIA V5を使って3次元にモデリングしてもらい、設計者がそれを改良しながら3次元設計をするという流れで業務を行うようになりました」と中野氏は振り返る。
株式会社オチアイネクサス 機械設計セクション 中野 陽雄氏
「CATIA PLM Expressの重量チェック機能はよく活用しています。自動車メーカーの生産ラインに組み込まれる組付機は人が扱います。重量が増えると利用しづらくなるため、重量をすごく気にされるのです。以前は手計算で重量を出していたので、時間がかかったり誤差が大きかったのですが、素材を決めておけば、自動的に正確な重量や重心が表示されるのでとても役立っています」
コラボレーション環境を目指してCATIA PLM Expressを導入
2006年8月には、さらなる設計業務の効率化を図るため、大塚商会に設計改善に関するコンサルティングを依頼し、CATIA V5での現状の設計方法と課題・要望についての洗い出しを行った。その結果、最初に取り組んだのは設計部品の標準化だ。「個々の設計者が作った部品をファイルサーバで統合管理し、みんなで共通に使えるものは使っていこうということです。その一番の目的は、設計品質を均質化することです。毎回、3次元設計を一から行うと、設計者の力量によって品質にもばらつきが生じる可能性があります。しかし、あらかじめ共通で使える部品データを揃えておけば、そうした問題も解消されるからです。さらに、部品を標準化することは設計工数の短縮にもつながります。共通の部品データを使って、必要な個所だけ修正すれば作業がスピーディに進みますからね。そのため、大塚商会さんと一緒に標準モデルをつくり、その部品データの登録作業を進めていったのです」と中野氏は語る。
そのうえで、設計者間のコラボレーションが円滑に行える環境の構築を目指し、CATIA PLM Expressを2006年12月に新たに導入することにした。
CATIA PLM Expressは、既に導入済みのCATIA V5と全く同じでありながら、ワークベンチの見直しがされたソリューションで、安価に導入ができ、また今までと同様にCATIAの高度なモデリング機能をフルに活用できるだけでなく、ノウハウを共有できるナレッジウエア再利用機能などが標準で含まれている。また、ENOVIA SmarTeamによるデータ管理・排他制御機能も標準機能として搭載されているため、チーム設計環境が導入と同時に整うのも魅力だ。
同社では、このチーム設計環境の実現に特に大きな期待を寄せている。「今まではひとりが最初から最後まで設計を行っていたのですが、CATIA PLM Expressでは、ユニットごとに設計を分担して行い、そのすり合わせもうまくできると思うので、そういう使い方を是非行いたいですね。現在CATIAの設計チームは本社工場の同じフロアにいるのですが、設計者数の増加に伴い、今後は設計拠点を分散化していく傾向にあるからです。また、設計業務の負荷を分散化できる効果もあると思います」と小宮氏は語る。
同社がCATIA PLM Expressを新たに導入した理由は、もう一つある。それは、CATIA PLM ExpressがCATIA V5の豊富なモジュール群の中から業界や業務に合わせて必要な機能が選び直され効率的に導入できるパッケージ製品でありながら、今までのCATIA V5に比べてコストパーフォーマンスに優れていると判断したからだ。
小宮氏は「設計業務におけるCATIA V5の活用が軌道に乗り、その効果が着実に現われてきたことから、経営陣がCATIA V5の設計者の数を増やしていくことを判断しました。ちょうどそのタイミングで大塚商会さんから購入しやすい価格で今までのCATIA V5と同じくハイエンドならではのCATIAのモデリング機能をフルに活用できるCATIA PLM Expressを紹介していただきました」と経緯を振り返った。
今回、同社では、CATIA PLM Expressの基本構成であるCATIA Team PLM(CAT)に、機械設計業務向けのオプション・パッケージを同時に導入した。
修正工数が86%削減
現在、オチアイネクサスではCATIAの適用範囲も拡大し、導入時の目標であった設計工数の削減を実現するなど大きな効果を実感している。「組付機には軽いものから重いものまでさまざまなバリエーションがありますが、今では組付機の3割くらいをCATIAで設計しています。また、ガントリーローダーなどの搬送機器の一部でも3次元設計に着手しています」と中野氏は語る。
もっとも顕著な効果として修正工数の削減を挙げている。以前は実際に組み立て作業を行ってから部品同士が重なってしまうことに気づき、設計の修正作業を行う手戻りが生じていた。しかし今では、設計段階で干渉チェックが容易に行えるため、見落としが減り、設計後の修正作業が飛躍的に軽減している。「例えば、自動車にタイヤを搭載するときに使うタイヤ搭載補助装置やハブナット締付装置は、部品形状がとても複雑なため、個々の設計者の勘と経験で図面を作成し、現物が出来上がってからチェックし直すケースが多くありました。しかし今では、思いがけないところが干渉していることが分かるようになりました。その結果、組付機の中には修正工数が86%も削減できた製品もあります。実際、設計後のつくり直しは本当に少なくなりました。形状が複雑であればあるほど、その効果は顕著に発揮されています」と小宮氏は証言する。
このように同社では、設計への手戻りが激減し、トータルの開発工数も削減できるようになった。このほか、定性的な効果として、正確な重量算出や、データを加工データとして利用可能になった点を挙げている。
見やすい3次元CADによりコミュニケーションも円滑化
さらにCATIA PLM Expressの導入後は、取引先とのコミュニケーションが円滑に行えるようになった。「お客様のところに設計データを持ち込んで打ち合わせをすることがあるのですが、3次元CADだと見やすくて分かりやすいので、その場でコミュニケーションが取れ、お客様からも喜ばれています。また、初期設計の段階でお客様と関係者全員が参加して、3D画面を見ながらの検討作業ができるため、生産性の向上、さらにはコストダウンへとつながっています。得意先の自動車メーカーでは、デジタル化によって工場での作業工数を減らすデジタルファクトリー化を進めていますが、当社もその流れに乗っていると思います」と小宮氏は語る。
タイヤ締付補助装置の3Dモデル。自動車生産ラインの作業者がタイヤを締め付ける際に補助する装置
シミュレーションも導入して今後は設計環境を統合
同社では、3次元モデルのメカニズムの動的なシミュレーションを行うため、CATIA PLM Expressのレビュー/最適化業務向けのオプション・パッケージのCATIA コラボレーティブ・プロダクト・レビューの導入も検討している。小宮氏は、「今はコンパスを使って3D上で実際の動きを確認していますが、それだけでは限界があるので、コスト面も考慮しながらシミュレーション機能を導入していきたいです」と今後について語る。 さらに同社では、3次元設計が快適に行えるハードウェア環境の整備も重要だと考えている。そのために、CATIAのWindows Vista64ビット版への対応にも大きな期待を寄せているところだ。
同社は国内いち早くCATIA PLM Expressを導入し効率的な設計環境を整備しつつある。そして今後は設計環境を全てCATIAで統合したいと考え、その導入や提案に関して大塚商会に大きな期待を寄せている。
実際のタイヤ締付補助装置
株式会社オチアイネクサス
業種 | 輸送用機械器具製造業 |
---|
事業内容 | 自動搬送装置、自動移載装置、自動ストック装置、自動組付装置、組立補助装置などの設計・製作・据付 |
---|
従業員 | 100名 |
---|
サイト | http://www.ochiainexus.co.jp/ |
---|