ペーパーレスソリューションによる情報共有と業務効率化

株式会社シティプラスチック

業種
製造業
事業内容
半導体装置部品加工・大型機械部品加工・微細部品加工・量産部品加工 および、
総合手加工(曲げ・溶 接・接 着)・プラスチック素材総合
従業員数
204名(2019年1月現在)
サイト
http://www.city-plastic.co.jp/

導入事例の概要

株式会社シティプラスチックは切削加工に特化したプラスチック部品製造企業だ。高品質で高機能な機械部品を、低コストかつ短納期で生産できる切削加工の強みを生かし成長を続けてきた。しかし、少量多品種で、かつリピート生産の多いビジネスモデルは、製造加工情報の共有管理という課題を抱えていた。同社は、その課題を解決するため、製造現場で容易に運用できるiPadを活用する新たな情報共有の仕組みを構築。手書きや紙ベースの帳票運用から移行したことで、省力化と情報共有の双方で大きな成果を上げている。

導入の狙い

  • スムーズな情報共有を図りたい
  • 帳票作成の効率を向上したい
  • 業務を標準化したい

解決策

  • i-ReporterとiPadを社員のフロントエンドツールにした情報共有基盤の構築

導入製品

  • ConMas i-Reporter
  • eValue NS 2nd Edition ドキュメント管理/スケジューラ
  • TECHS-S
  • iPad

導入したメリット

  • 情報を正確に管理し、部署間でスムーズに共有できるようになった
  • ペーパーレス化により業務効率がアップした

業界No.1レベルの規模でプラスチック切削加工をリード

株式会社シティプラスチック(以下、シティプラスチック)は、切削加工による高機能プラスチックに特化した精密機械部品製造企業だ。一般的にプラスチックは、成型と呼ばれる加工法で製造される。それに対して、材料を工作機械で削り出す切削加工は型を必要としないため、特に小ロット生産においてコストメリットが大きい。

近年、半導体や自動車、産業機械、医療などさまざまな産業分野で、軽量性や絶縁性、耐薬品性という特長を備えたプラスチック製品が注目されている。その一例が、金属イオンを嫌う半導体製造装置だ。この分野では、金属からプラスチックへの移行が急速に進んでいる。だが小ロット部品の場合、金型による成型加工ではコスト面で折り合いがつかないことも多い。こうした中、高精度な切削技術でプラスチックの多様な加工ニーズに応え、1991年の創業以来、成長を続けてきたのが同社である。

その強みとして挙げられることが多いのが、業界トップレベルの設備力だ。切削加工による安定的な製品供給は、同社の企業規模によって支えられている。国内製造拠点の海外移転の潮流によって、プラスチック部品の調達も海外へのシフトが続く。それに伴い、成長が続く半導体製造装置分野への転身を図ろうとする同業他社も多く、競争は激しさを増している。そんな中、営業部 課長の河村俊治氏は今後の方向性をこう解説する。

「特に半導体製造装置分野では過当競争ともいえる状況が続いていますが、当社では安易なコストダウンや過剰な生産設備増強で対応しようとは考えていません。むしろ、目下の顧客に対して、どのような価値を新たに提供できるかを深く掘り下げ、顧客満足度をますます向上させる取り組みを着実に続けていきたいと考えています」

営業部 課長 河村俊治氏

「ものづくりの根幹を担うだけに「架け橋ーと」の運用は最後になりました。運用がスタートしてまだ日が浅いのですが、既に、営業と製造の確実な情報共有に対して効果が出ていることを実感しています」

「情報を財産に」を合い言葉にナレッジ活用の取り組みがスタート

こうした中、同社では顧客満足度向上のため、従業員一人一人が実践的に考え行動できる環境の整備に取り組んできた。そこで浮かび上がってきたのが、従業員間の情報共有に関する課題だった。

同社の受注はリピートが約70%を占める。安定的な品質レベルを維持するうえで、加工に使ったプログラムや刃先の種類など、製造工程の多様な情報の利活用がポイントとなる。これまでも加工情報の蓄積には力を入れてきたが、保存の業務ルールが統一されていないため、担当者によって情報管理の方法にばらつきがあった。

図面管理についても同様の問題が生じていた。これまで紙ベースの図面は複合機でスキャンしファイルサーバーで管理してきたが、ファイル管理のルールが徹底していなかったこともあり、検索の難しさ、誤操作によるファイルの消去、重複保存による版管理の困難さなどの課題が発生していた。社内情報管理システムの構築を先導した、事業推進部 部長の六十部(むそべ) 学氏は当時をこう振り返る。

「加工情報の蓄積はこれまでも行ってきましたが、図面に直接書き込む人がいる一方、別の紙にメモしファイリングする人もいるなど、記録方法がそれぞれ異なり、統一化できていないという課題がありました。その解決には、社内の多様な情報を一元的に管理する仕組みが必要です。そこで我々は『情報を財産に』をキーワードに、新たな情報共有システムの検討をスタートしました」

事業推進部 部長 六十部学氏

「大塚商会さんとの取引は既に10年以上続いており、その都度のさまざまな提案は、当社の成長の礎になったと考えています。今後もパートナーとして、これまで同様、当社の成長に資する提案をしていただけることを期待しています」

iPadをインターフェイスにした情報共有基盤を構築

そのポイントとして六十部氏が注目したのは、次の四点だった。

  1. 既存システムとの親和性の高さ
  2. 入力操作の容易さ
  3. 検索機能の使いやすさ
  4. 強固なセキュリティ

また、以前から全社員への配布が計画されていたiPadの活用が新システムの前提条件になった。

「まずイメージしたのは、システムに蓄積された情報にiPadでアクセスするだけでなく、加工情報や作業実績の入力についてもiPad上で行うという使い方でした。また社内SNSも含め、あらゆる情報に確実にアクセスできることも重要なポイントでした」(六十部氏)

その実現において大きな課題となるのが、入力デバイスとしてのiPadの活用だった。六十部氏が注目したのが、Excelなどの帳票をほぼそのままの形で電子帳票に置き換えられる、現場記録・報告・閲覧ソリューション「ConMas i-Reporter」だった。機能の制約が少なく、他システムとの連携の柔軟性も高く、長く使い続けられると判断したことも選定の理由だったという。

情報共有サーバーとしてのドキュメント管理システムは、i-Reporterとのスムーズな連携が可能なeValue NS 2nd Edition ドキュメント管理を選定。またi-Reporterと、稼働中の個別受注機械装置向け生産管理システムTECHS-Sの連携も当初から計画されていたものだ。ITパートナーの選定は、システムの概要を固めてから行われた。

「理想とする運用イメージを二社のSIerにお伝えし、ヒアリングやミーティングを繰り返したうえでご提案いただきました。それぞれ全く別の切り口での提案内容でしたが、当社のイメージにより近かったのが大塚商会さんの提案でした。それを受け、大塚商会さんをパートナーに迎え、新たな情報管理システムに取り組むことになりました」(六十部氏)

現場のフロントエンドツールとして多様な部署でi-Reporterを活用

シティプラスチックでは、生産管理TECHS-Sとi-Reporter、eValue NS 2ndが連携した統合システムを、現場社員が活用する社内新情報管理システム「COMPASS SMART CONNECT(略称:スマコネ)」と名付け、2017年6月より運用を開始した。既にさまざまな部署で、その効果が表れ始めている。ここからは、部署別にスマコネ活用状況を見ていこう。

営業担当から製造部門に対する正確な情報伝達に貢献

営業部門では、顧客の要求事項や仕様が案件ごとに全く異なるため、担当者によって、伝達方法に差が出やすい。製造部門に対し、いかに正確に情報を伝達するかが目下の課題であった。図面や口頭のみの伝達から紙ベースに移行したのは今から3、4年前のこと。しかし、「架け橋ーと」と名付けられた製造指示のシートの運用は、担当者による記入レベルのばらつきや手書き文字の読みにくさなど、課題も少なくなかった。

「最も大きな問題が記入レベルのばらつきでした。文書による情報共有では、情報をどのように定型化、標準化していくかが重要なポイントです。『架け橋ーと』はこれまで9回にわたりバージョンアップを繰り返しました。スマコネによる運用を開始したのは最終バージョンからですが、定型化された帳票とi-Reporterの相性はとても良いですね。まだ運用を開始して日は浅いのですが、その効果を実感しています」(河村氏)

また、i-Reporter上の「架け橋ーと」には、TECHS-Sとの連携で受注情報が表示されるので、その他の詳細な伝達項目のみを営業部で入力している。

作業指示書や要求事項、加工情報をiPadで確認し、作業終了後、作業報告書などへの入力をi-Reporterで行うという業務フローが完全に定着している

作業実績などの記録の手間から製造部門を解放

同社に限らず、製造部門では作業実績報告の運用が紙ベースで行われることが今も多い。帳票電子化は、その大幅な省力化にも貢献している。製造部 課長の荒木優氏はこう説明する。

「手書き帳票の場合、顧客名や製品名などの定型情報を幾つも記入する必要があります。しかしi-Reporterは、入力支援機能により冒頭の一文字を入力し、候補を選択するだけで入力作業を終えることができます。それによる作業時間の削減効果も大きく、導入してよかったと感じています」

また、以前から課題だった図面や加工情報の一元管理が実現したことも業務改善に役立った。特に大きな役割を果たしているのが、eValue NS 2ndの優れた検索機能である。

「これまでは顧客名、製品名をファイル名称に設定したうえで、ファイル名検索で情報を検索してきました。このやり方だと目的のファイルにしかたどり着きませんが、eValue NS 2ndの検索機能の場合、顧客名や製品名にひも付けられた多様な関連情報を表示することが可能になります。我々はこれをおせっかい検索と呼んでいるのですが、不具合に関する情報など、これまで見落としがちだった情報も把握できるようになったためとても助かっています」(荒木氏)

製造部 課長 荒木優氏

「iPadをインターフェイスにしたペーパーレス化は、加工情報などの記録作業の効率アップと登録情報の検索性向上という二つの面で業務効率化につながっています」

自由な発想のナレッジ蓄積とスキル伝承に情報基盤を活用

人材教育における活用もスマコネのポイントの一つ。多品種少量生産のビジネスモデルを前提とする同社にとって、人材教育は常に大きな意味を持ち続けてきた。これまで多くのものづくり企業と同様に、OJTを中軸にした教育を行ってきたが、担当者による記入内容や記入レベルのばらつきなどの課題があった。

こうした状況を受け、同社は2016年より社内有志による委員会で、スキル伝承を目的とした「irohaカード」と名付けられたシートを作成し、教育に活用してきた。これもeValue NS2ndによる活用で大きな成果を上げている。irohaカードの運用を担当する品質保証部検査課 主任の冨迫勝志氏は言う。

「irohaカードは原則として、何か問題が発生したらその都度、同じ失敗を繰り返さないために作業の手順を再検討し、それを分かりやすく伝えるという観点で作成しています。カードは現在150項目以上ありますが、以前は検索性の問題もあり、活用が進んでいませんでした。その部分でeValue NS 2ndの充実した検索機能は、とても大きな役割を果たしています」

スマコネ構成イメージ

品質保証部検査課 主任 冨迫勝志氏

「irohaカードは基本的に、現場スタッフを中心とした20名の委員が作成しています。常に意識しているのは、堅苦しいものは見てもらえないという点です。絵や写真によるポップな表現を心掛けています」

iPadのカメラ機能で製品の出来栄え情報をスムーズに共有

協力会社への発注と納品を管理する調達管理部門では、以前は情報共有の仕組みが存在せず、納品の不具合などの情報は各担当者レベルでしか把握できていなかった。この問題を解消するため同社は、不具合や協力会社との協議内容などを記録する「オーダーカルテ」を運用してきた。そこでもスマコネは大きな役割を果たしている。調達管理課 リーダーの谷口裕美氏はこう説明する。

「オーダーカルテ運用では、記載内容の定型化が大きな課題になっていますが、シートの修正にスムーズに対応できる点はi-Reporterの魅力の一つですね。また不具合があった際には、その写真も添付していますが、iPadだと撮影から入力まで1台で対応できるので助かっています」

調達管理課 リーダー 谷口裕美氏

「協力会社との取引を記録するオーダーカルテは、2017年6月の運用開始以来、既に7,000件以上の情報を記録しています。それは協力会社との良好な関係を確実に維持するうえでも、大きな意味を持つと考えています」

帳票標準化との相乗効果でi-Reporter活用を推進

製造部門では現在、作業指示書や要求事項、加工情報をiPadで確認し、作業終了後、作業報告書などへの入力をi-Reporterで行うという業務フローが完全に定着している。

また入力内容は、TECHS-SとeValue NS 2ndに自動反映され、常に効率よく検索が行える。このペーパーレスの情報共有の仕組みを実現した背景には、以前から続く帳票類の標準化に向けた取り組みがある。i-Reporterをフロントエンドツールにした今回の電子化は、業務の標準化に必要な情報管理項目を再整備したともいえるだろう。

今後の目標として同社が掲げるのは、製造管理だけにとどまらないスマコネの活用だ。

「iPadをベースにした情報共有が文化として定着したことで、さまざまな帳票をスマコネに落とし込む環境が整いました。今後は、社員の健康チェックシートの運用なども実践していきたいと考えています。またeValue NS 2nd スケジューラの活用を通した、情報共有の一層の進展もこれからの課題ですね」と六十部氏は言葉を結んだ。