測定でも再現できない気流・温度を人間の感覚に近づける(快適性指標)

人間の体感と物理シミュレーションの不一致を解消する

FlowDesignerで実施する物理シミュレーションは、人の感覚をたよりに実施すると不一致となる場合があります。

「送風時の感覚」を例にすると、人間は空調の送風モードでも涼しく感じますが、シミュレーションの温度分布では、温度が一定の場合には当然ながら分布も一定となります。結果として何もおかしくありませんが、人間の体感とはかけ離れてしまいます。

断熱性能と体感温度(作用温度)の関係

冬期の暖房室などで、室内の気温が同じでも断熱が不十分である場合には、熱貫流によって外壁の室内側の表面温度が低下し、放射による人体からの熱損失が大きくなり、寒く感じることがあります。

断熱性能と体感温度(作用温度)の関係

快適性指標の一つ、SET*(標準新有効温度)とは

温熱要素の人間側の要素としては、代謝量と着衣量があります。体感の仕方はこれらによって異なります。代謝量は軽作業時よりも重作業時の方が大きくなることが知られています。また、着衣量によっても温熱の体感は異なります。これは衣服の断熱性能で表されます。

SET*(エスイーティースター)とは、気温・湿度・気流・放射・着衣量・代謝量の6要素を融合した温熱指標です。SET*の単位は℃で表されるため、快適な温度範囲を把握しやすくなっています。

この指標を定めたASHERAE(米国暖房冷凍空調学会)では、SET*が22.2~25.6℃の状態を、80%以上の人間が環境に満足感を覚える快適範囲としています。ほかにも快適範囲から外れた場合の温冷感や生理学的状態を表のように定めています。

標準新有効温度(SET*)と温冷感、生理学的状態の関係
SET*(℃)温冷感生理的状態
>37.5非常に暑い、非常に不快体温調整ができない
34.5~37.5暑い、許容できないおびただしい発汗
30.0~34.5暖かい、不快発汗
25.6~30.0やや暖かい、やや不快軽い発汗、皮膚血管拡張
22.2~25.6快適、許容できる中性
17.5~22.2やや涼しい、やや不快皮膚血管収縮
14.5~17.5涼しい、許容できない軽い体冷却
10.0~14.5寒い、非常に不快ふるえ

どのような結果が表示されるのか?

室内に室温と同じ温度の通風を取り込んだ場合、シミュレーションソフトでは、どのような結果表示になるのか、やってみます。まずは図1のような状態のシミュレーションを実施してみます。

図1:シミュレーションサンプル例

通常のシミュレーション結果で流速分布は図2となります。

図2:通常のシミュレーション結果(流速分布)

また、通常のシミュレーション結果による温度分布は図3となります。温度分布は当然ながら、30℃で一定となってしまいます。

図3:温度分布シミュレーションでは一定の結果となってしまう

そこで、快適性指標を用いて、SET*の分布を示すと図4のようになります。風速の大きい出口付近では、SET*が23℃程度となり、快適であるとの結果が示されます。この結果表示は、気流・温度を人間の感覚に近づけた表示方法といえます。

図4:SET*を用いたシミュレーション

FlowDesignerの快適性指標を使おう

標準新有効温度は、FlowDesignerの「日射・輻射・快適性オプション」によって求められます。SET*のほかにもPMVなど別の指標を利用しての解析も行えます。

FlowDesignerの快適性指標を利用することで、設計者やエンジニアは建築物の設計において人々の快適性を考慮した意思決定を行えるようになります。また、省エネ提案にもつながりますので、ぜひご利用ください。

FlowDesigner オプション

快適性指標を用いた事例