失敗から学ぶ、FlowDesignerのモデル化テクニック(室内温度解析編)
FlowDesignerの特徴を知り、うまく使おう!
FlowDesignerは、その直感的な操作性から室内温度解析をはじめとした、さまざまな流体解析に広く利用されています。しかし、その手軽さゆえに、初期設定の重要性を見落とし、誤った解析結果を得てしまうケースも少なくありません。
本記事では、室内温度解析(定常解析)においてよくある失敗例と注意点について解説します。
解析領域の境界面設定を初期値のまま進めてしまうと……
FlowDesignerの解析領域の境界面は、初期設定では「完全断熱」となっています。これは、解析領域と外部との間で熱のやりとりがないことを意味します。
しかし、実際の建物は外気や隣接する部屋との熱交換が行われるため、この設定を誤ると、シミュレーション結果が大きく歪んでしまいます。
よくある失敗例:エアコンモデルを用いて室内の温度分布を確認したい
実際によくやりそうな失敗として、エアコンパーツを室内に配置した場合の温度分布を確認する場合です。完全断熱だと、エアコンから放出される冷気が室内に閉じ込められ、温度が極端に低下してしまいます。
失敗例と対策
条件
幅 5×奥行 4×高さ 3m
エアコン:流入・流出流量ともに7.2m3 / min、冷房一定能力で1,411Wとして設定
そのほかの条件を何も変更せずに解くと、次のようなメッセージが出てしまいます。
解析計算は終了しましたが、結果は次のようになります。
なんと、カラーバーの最小値は「-159.4℃」、最大値は「-147.9℃」です。これは現実的ではありません。解析領域の境界面が完全断熱のため、エアコンから発する冷機は室内にとどまり、繰り返し計算の回数分、室内温度が下がったことになります。
そこで、部屋の2面が外気に接する面として、この2面については外気の影響を考慮します。
発生パネルの設定:外気温「36℃」、熱通過率「6.45W / m2℃」
外部から室内に侵入する熱の影響が考慮されるため、室温が安定するようになりました。カラーバーの最小値は「8.3℃」、最大値は「22.5℃」です。空調能力が高いため、だいぶ涼しい結果ではありますが、マイナスの結果にはなりませんでした。
外気との熱交換以外にも、隣接部屋との熱交換、日射熱負荷など設定することで、より現実的なシミュレーション結果を得られます。
まとめ
FlowDesignerは、設計者のための使いやすいシミュレーションソフトではありますが、初期の設定条件が理解していないと、非現実的な結果を出してしまうこともあります。初期の条件を正しく理解し、便利な道具として活用しましょう。
大塚商会では、随時オンラインデモを開催しており、FlowDesignerの実際の画面をご確認いただけます。導入ご検討中の方、オプション追加などでお悩みの方はぜひご参加ください。
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