FlowDesignerで行う屋外解析 (気象データ活用方法)

屋外の解析では、解析対象となる地域の気象データを活用しよう

FlowDesignerを用いた室外解析では、対象地域の気象データと方位の設定が必要となります。気象条件、周辺の地形条件、および建物条件を用いて解析を実施することで、その地域ならではの気象状況が再現されます。

FlowDesignerが気象データを持たない理由

室外解析を実施する際に、お客様からよく「気象データは、ソフトの中に入ってないのですか?」と聞かれることがあります。

FlowDesignerには、気象データそのものは入っていません。地形条件と建物条件は、CADデータなどから入手することもできますが、気象条件は、解析対象となる地域の気象データを用いる必要があります。

理由:多様な解析ニーズに対応するため

ユーザーによって必要な気象データの種類や期間が異なるため、ソフトウェアにあらかじめ全てのデータを内蔵することは現実的ではありません。

平均風速を例にすると、年単位、月単位、日単位、時間単位、30分単位とそろっている地域もあれば、そろっていない地域もあります(風以外も同様)。

  • Aさん:解析領域内の年平均風速のデータがほしい。
  • Bさん:FlowDesignerで設定可能な16風向全てほしい。
  • Cさん:夏場の年間の最大風速(30分平均)があればよい。

また、気象庁が公開するアメダスデータなどの公開データを参考にする、あるいは、対象建物周辺で現地観測を行ったデータを用いるなど、ユーザーによって利用したいデータを柔軟に設定画面に入力できる形をとっています。

  • * ある気象データについてはインポートできる仕組みもあるため、それについては別途ご説明します。

参考:FlowDesignerの外気風設定

例1:風速3.5m / s、観測点高さ10m、対象区域:平原の設定

図1:外気風設定画面

FlowDesignerの外気風設定画面は、図1のようになっています。対象区域の粗度区分は任意での設定となりますが、風向きと風速、観測点高さは気象データを参考に入力を行います。

実際によく用いられている気象データを幾つかご紹介します。

1.アメダスデータ

最も有名な気象データは「アメダスデータ」です。アメダス(AMeDAS)は、「地域気象観測システム」の略称で、気象庁が全国に設置した無人観測施設のネットワークです。約1,300カ所の観測点で、気温、湿度、降水量、日照時間、風向、風速などの気象要素を自動的に観測し、そのデータをリアルタイムで収集しています。ビル風解析で用いる風向・風速データは、全設置数1,311のうち、852と全体の約65%になります。

過去の気象データ検索(気象庁)

2.拡張アメダス EA気象データ・設計用気象データ

拡張アメダス気象データ(以下、EA気象データ)は、気象台およびアメダスで観測されたデータを、株式会社気象データシステムがより詳細かつ高品質な気象データとなるよう整備したものです。観測された気象データをもとに、異常値と判断されるデータを修正。また、観測されていない気象要素のデータを補充して作成された日本全国の気象データです。

EA気象データには、現地気圧、気温、相対湿度、絶対湿度、全天日射量、大気放射量、風向、風速、降水量、日照時間の10気象要素の時別値および日別値が収録されています。1981~2020年EA気象データが年別に整備されており、収録されている地点数は、年によって多少異なりますが840程度です。

EA気象データ/EPWフォーマット(有償)

EPWは、EnergyPlus Weather Dataの略語で、建築と建築設備によるエネルギー消費量のシミュレーションに広く使用されているEnergyPlusのフォーマットに従った気象データです。EA気象データは、EPWとはフォーマットが異なるため、EnergyPlusで読み込めません。

読み込めるようにするには、EA気象データのフォーマットをEPWフォーマットに変換しなければなりません。EA気象データのフォーマットをEPWフォーマットに変換し、EnergyPlusで読み込めるようにした気象データを「EA気象データ/EPWフォーマット(略してEA / EPW)」と呼んでいます。EA気象データの基本気象要素は10(現地気圧、外気温、相対湿度、絶対湿度、水平面全天日射量、大気放射量、風向、風速、降水量、日照時間)ですが、EA気象データに附属するプログラムなどによって気象要素を追加できます。

EA気象データ/EPWフォーマット(EA/EPW)(MetDS株式会社 気象データシステム Meteorological Data System)

設計用気象データ(無料)

空調設計用気象データには、1981~2000年の20年間 EA気象データに基づく842地点のもの(2000年版設計用気象データ)と、1981~2010年の30年間EA気象データに基づく836地点のもの(2010年版設計用気象データ)があります。それぞれのEA設計用気象データには、空調設計用最大負荷計算に必要な、気温、絶対湿度、法線面直達日射、水平面天空日射、水平面夜間放射、風向、風速(7気象要素)の1日分の時刻別値が用意されています。

この空調設計用気象データには、地点別に暖房設計用6タイプ、冷房設計用5タイプ、計11タイプがあります。

設計用気象データ(MetDS株式会社 気象データシステム Meteorological Data System)

3.EPW(EnergyPlus Weather Data)

EPWは、建築物や都市のエネルギーシミュレーションを行う際に使用される標準的な気象データフォーマットです。国内のデータは少ないですが、ホームページで無償公開されています。

EnergyPlus

EPWデータ活用によって、FlowDesignerで風ランク評価(村上式)を実施する際の入力用CSVファイル作成ツール

風評価ランク用CSV作成ツールEPWファイルからFlowDesignerの「風評価ランク(村上式)用」CSVファイルを作成するツールです(東京大学 前研究室ご提供)。

「風評価ランク(村上式)」用CSVファイル作成ツール(Maelab 前真之サスティナブル建築デザイン研究室)

さらに、日本の気象データが豊富な拡張アメダスデータを上記を用いるためにEPWファイルに変換するツールもあります。

EPW気象データ変換マクロ拡張アメダスデータをEPW形式の気象データに変換するツールです(東京大学 前研究室ご提供)。

EPW変換マクロ(Maelab 前真之サスティナブル建築デザイン研究室)

気象データを用いれば、FlowDesignerの屋外解析は思いのままに

屋外解析の精度を上げるには「解析条件をいかに実物に近づけるか」が重要です。気象データは、実際には解析したい場所のものがない場合もありますが、一つの気象データだけに頼らず、複数の気象データを参考に、条件設定を行ってみましょう。

大塚商会では、随時オンラインデモを開催しており、FlowDesignerの実際の画面をご確認いただけます。導入ご検討中の方、オプション追加などでお悩みの方はぜひご参加ください。

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