3次元計測・点群を被災建築物の補修・補強計画に

WingEarth 建築物損傷評価オプション

アイサンテクノロジー株式会社の3次元点群高速編集ソフト「WingEarth」に、「建築物損傷評価」オプションが登場しました。本オプションは、WingEarthに建築物損傷評価メニューを追加し、震災発生後の中破程度以上の損傷がある建築物の被害箇所を被災前後の計測点群の比較分析によって迅速に把握。補修補強計画の立案に活用することを目的に開発されました。

近藤 豊

アイサンテクノロジー株式会社 営業企画部

建築物損傷評価オプションでできること

建て替えの必要性や補修の判断において、現在までは主に足場を用意し、計測・数値化してきた作業をTLS(地上レーザースキャナー)を用いて短期間かつ安全に実施できるようになります。

  • WingEarthの基本機能である被災建築物とその周囲のTLS計測後の点群クリーニングやフィルタリング。
  • 相似変換法を含めた公共測量・作業規程の準則にも沿える点群座標変換や合成処理(局所座標系と平面直角座標系)。
  • 測量座標や図形を重畳・編集できる環境。
  • 被災建築物の残留層間変形角(建物外周から建物の変形を数値化)の算出。
  • 被災前後の点群それぞれから真値推定(点群の最頻値から壁面の状態をメッシュ単位でビジュアル化・数値化)。
  • 差分量計算によって建物のダメージ(浮き・剥落)を簡単にビジュアル化・数値化。

震災、被災建築物への取り組みと開発の背景

搭載機能の妥当性や作業性能においては、国立研究開発法人 建築研究所の「点群データを用いた被災建物の損傷 評価方法の普及に資する検討」プロジェクトへの共同研究参加(2022年8月 当社Webサイト発表)に始まります。

被災建築物の損傷評価方法の妥当性と、知見のとりまとめによる損傷評価手法のマニュアルに沿った機能を実現し、「地上レーザースキャナーを用いた被災建築物の補修補強計画に資する計測および損傷評価の手引き(案)」(2023年7月 国立研究開発法人 建築研究所)に沿った形での分析機能・作業性能を実装しました。

アイサンテクノロジー株式会社からの被災建築物への取り組みプレスリリース

WingEarth 建築物損傷評価の機能

WingEarth 建築物損傷評価では、以下の機能が提供されています。

  1. 被災前後のそれぞれの壁面点群から真値推定により一定基準で現況を数値モデル化。
  2. 差分量計算により、1.の被災前後の比較計算を実施。
  3. 2.の比較結果から浮き・剥落のデータ抽出と数量計算を実施。

これにより、簡単に損傷の度合いをグラフィック化し、各過程の成分を数値化(CSV)することができます。

階層間の変形を把握

複数階層ある被災建物の柱や梁(はり)などの残留変形を点群と座標を使い、一定基準で分析・出力することで損傷評価のワークフローを効率的にします。

複数階層ある建物点群の各階層に代表点(残留変位評価点)を設け、階層間の変形角度(残留層間変形角)や各成分(XY座標・標高)の差分(mm)算出ができます。「2階部分より上で被災前後の変形が大きい」「各階層間の変形角度を一覧化して状態を把握」などを簡単に算出し、グラフィック表示やCSV・クリップボードへの出力ができます。

1階から3階の被災前後の階層間変形をビジュアル表示

階層間の比較と差分・変形角をリスト化、CSVやクリップボード出力に対応

差分解析 建物表面の性状と浮き・剥落

点群によって、そのときの壁面の状態を保存できます。これを被災の前後双方でデータ取得した場合、被災による壁面の性状変化を把握できます。被災建築物の壁面に特徴的に現れる浮き・剥落といった損傷の箇所・大きさ・量を把握できるようになり、WingEarthの建築物損傷評価では先の手引き(案)に沿った一連の流れによって、迅速に損傷評価データが得られます。

被災前の点群と壁面の真値推定+確からしさ(信頼度)の保存

被災前後の真値推定データから差分量計算し、浮きや剥落領域や集計を自動処理

具体的には、被災前後の建物壁面をTLS計測し点群を収集します。被災前後それぞれの壁面点群に対し真値推定をし、細かな分割メッシュごとの「面としての確からしさ」を点群の偏りや最頻値・誤差から自動分析します。

差分量計算によって被災前後の壁面の真値推定データを比較することで、メッシュごとの差分値をまとめ、さらには浮き・剥落の状態をグラフィック化・自動集計することができます。

求められる測量技術

「地上レーザースキャナーを用いた被災建築物の補修補強計画に資する計測および損傷評価の手引き(案)」は、測量法や測量法第34条で定義される作業規程の準則を参考に構成されています。

  • TLSの理解や使用
  • 建築基準点の設置
  • 標定点の設置
  • 平面直角座標系との整合処理(座標変換や点群合成)
  • TS(トータルステーション)を用いた評価参照点の設置・計測
  • 精度管理や品質確保のための考え など最新の測量業務に対応した作業技術が求められます。

アイサンテクノロジー株式会社は、上記のマニュアル策定時より委員として参画し、防災減災、被災後の迅速な判定と復旧に資する技術について、ワンストップでオーダーいただける体制を整えています。お気軽にご相談いただければ幸いです。

近藤 豊

アイサンテクノロジー株式会社 営業企画部

アイサンテクノロジーは、営業・製品企画、販売支援業務などを担当し、各種セミナーやサイトの企画・運営を行っています。