3次元CADデザインレビューの効果により設計者の意見交換が活性化し搬送用ロボットの設計品質向上に貢献

不二輸送機工業株式会社

山口県山陽小野田市に本社を構える不二輸送機工業株式会社は、各種搬送システムを製造・販売しており、特にパレタイジングロボット(パレット積付機)においては国内トップシェアを誇る。同社では、2009年6月に設計品質の向上を図るため、3次元CAD『AutoCAD Inventor Professional Suite』と『AutoCAD Inventor Suite』を導入。その結果、設計後の手戻りがなくなり、無駄な時間やコストの削減に成功するとともに、デザインレビューの段階で多くの人の意見を取り入れられるようになり、設計品質の大幅な向上を実現している。

本ページは大塚商会が発行している 「αソリューション」 から転載したものです。

国内トップシェアを保持するパレタイジング専用ロボット「フジエース」を筆頭に、各種搬送システムをトータルに提供している

導入事例の概要

導入の狙い

  • 3次元CAD設計による製品の軽量化・コンパクト化の促進

導入システム

  • AutoCAD Inventor Professional Suite
  • AutoCAD Inventor Suite

導入効果

  • 設計精度の向上で、取り合い不具合などによる手戻りを削減
  • 一事業部で外注コストゼロを実現
  • デザインレビューの段階での意見交換が活発になり、設計品質が大幅に向上

パレット積付ロボットでトップシェア製造工場の要望にも柔軟に対応

不二輸送機工業株式会社は、1942年に株式会社小野田鉄工として創立、1944年に社名を変更し運搬機械専門工場として発足。当時は、石炭用の運搬車両やベルトコンベアなど、炭鉱向けの搬送機器を製造していた。その後、一般用のベルトコンベアやパレット搬送システムの製造に着手。1963年に、物流業界において高負荷の業務であるパレタイジングを行うパレット積付機「パレッタイザ」を開発した。パレタイジングとは、大量の荷物を一度に効率良く保管・運送できるパレットに、荷物を積み付けること。パレットは企業によってサイズ・仕様が異なり、また積み付ける荷物の種類や形状によっては、適切に積み上げるには独自のコツが必要になる。同社の「パレッタイザ」は袋物や段ボールケース、ポリケースなど各種形状に対応し、幅広い物流業者に導入され、信頼と評価を得ている。

1971年には小ロット製品に柔軟に対応する有軌道台車「トランスロボ」を開発、続けて1977年、パレット搬送専用のエレベータ「リフコン」の製品化に成功し、ビジネス領域を拡大している。通常のエレベータ搬送では、パレットを運ぶ人員が必要になるが、同社の「リフコン」は、ベルトコンベアに荷物を置けば自動的に各階に搬送される。また、人が乗るエレベータとは安全規格が異なり、メンテナンス義務もなく省スペースなため、その分のコストを削減できるメリットもある。

さらに、1982年には現在の同社の基幹事業となる日本初のパレタイジングロボット「フジエース」を開発。「パレッタイザ」開発の豊富な経験と技術を活かし、小ロットのパレタイジングに対応。食料品や飲料、化学、肥料、印刷などの製造工場や電力会社などさまざまな分野で活用されている。

バブル崩壊直後には、新たな市場を求めて多くの有名企業がパレタイジングロボット業界に参入したが、多くの企業が撤退。現在では、同社が常に国内トップシェアを保持している。

同社の売上構成比は国内が約8割、海外が約2割を占めている。国内では、取引先の要望や環境に応じて製品をカスタマイズして提供しており、その柔軟な対応力が同社のアドバンテージになっている。一方、海外市場では安全規格などが異なるため、ロボット単体のみを販売し、現地代理店がカスタマイズして納品する形態を取っている。

「最近では、市場の3分の1ほどがリプレース需要です。長年ご利用いただいた製品の老朽化での更新や、生産効率を高めるために、モーターなどを改善した新製品に刷新する案件が大半を占めています。また、混流生産や高速化など生産ラインの変さらに伴い、システムを入れ替えるケースもあります。例えば、飲料工場ではビンから缶、ペットボトルへと容器が時代とともに変わってきます。そうした変化に合わせた製品をタイムリーに開発し、お客様に迅速に供給しています」と常務取締役 技術本部長の片山 道彦氏は語る。

製品の製造において、社内では、製品設計とアセンブリ、検査を中心に手掛けており、基本的に部品製造業務は外注に依頼している。ロボット1体当たりの構成部品点数は500~600で、周辺機器も含めると2,000パーツにも及ぶ。受注から納品までの期間は約1.5カ月で、大きなものは約3カ月になるという。

常務取締役 技術本部長 片山 道彦氏

「3次元CADの導入で設計の業務効率は格段に向上しています。将来的には作られた3次元データを利用し部品の内作にも取り組んで行きたいと思います。難しいとは思いますが、3次元データの下位互換も実現していただけると助かりますね」

F・M・S事業部 技術部 課長 阿部 貞才氏

「大塚商会さんは、いろいろと小まめに対応してくれるので非常に助かっています。今後もきめ細かなサポートに期待しています。また、3次元CADの効果的な活用方法について具体的なアドバイスをいただけるとありがたいですね」

軽量化やコンパクト化に有効な3次元CADを全社に水平展開

同社は、以前より大塚商会から導入した2次元CADの『Intelli CAD』や『AutoCAD LT』を活用する傍ら、3次元CADを一部試験的に運用していた。

「もともと『Autodesk Inventor』の前身である『Autodesk Mechanical Desktop』の時代から試験的に使っていました。構造解析のソフトを同時に入れ、構造解析によるコストダウンやトラブルの原因解明を目的に利用していましたが、当時はまだ3次元CADがそれほど有効なツールだとは認識していませんでした。その後、ある事業部のプロジェクトでロボット本体の開発に『Autodesk Inventor』を利用することになったのです。すると、設計段階で立体的な収まりを可視化でき、本体のみならず周辺機器の軽量化やコンパクト化を図る上でも極めて有効なツールであることを実感しました。タイミング的にもPCのハードウェアの価格が下がってきたことから、3次元CADの他の事業部への水平展開を決めました」と片山氏は語る。

「以前は、設計した製品ができ上がった時点で、予想以上に重量が重くなることがしばしばありましたが、3次元CADの場合は、設計段階で重量の積算もできるので、そうした問題も解消されます」と産業用ロボットをメインに製造しているF・M・S事業部 技術部課長の阿部 貞才氏は語る。

3次元設計データは一目で全体像を把握できるため、担当以外の製品にも意見を出しやすくなり、社員間のコミュニケーションが活発になった

3次元CADの運用については、ファイルの格納方法やファイル名の付け方など簡単な社内ルールを決めた上で、新入社員にある程度自由に使わせながら徐々に浸透させていった。

「実際に開発部門で作成された3次元の立体モデルを他の部門のスタッフが目にすれば、やはり自然に興味がわきますよね。また集合研修までいきませんが、各事業部の新人を開発部門に集めて、実際に3次元CADを使った設計をOJTで体感してもらいながら、徐々にスキルを身につけていきました。特に新入社員は先入観がなく、設計の仕事とはこういうものだと思って取り組んでくれたので、あまり苦労はありませんでした。『Autodesk Inventor』には学習ツールもついているので、ちょっと勘のいい人なら、特にこちらから教えなくてもすぐに使えるようになります。最近では、逆にそんな便利な機能があったのかと、僕たちが新人から教わることもあります」と阿部氏は語る。

現在、3次元CADを使って設計を行っている人員は約10名。それでも当初は設計データの共有化という面で苦労があったという。しかし、『Autodesk Inventor』に同梱されているデータ管理ソフトウェア『Autodesk Vault』を活用し、作業中の設計データや関連ドキュメントを管理するようになってからは、データ共有時のトラブルもすぐになくなった。

多くの人の意見が反映でき設計品質の大幅な向上を実現

3次元CADを導入して1年近くが経過した同社では、設計段階でリアルな完成イメージが確認できるので、部品同士の干渉による設計ミスが格段に少なくなった。また、空間のイメージがつかみやすいため、多くの部品を効率よく組み込んで設計でき、製品の小型化も容易に実現できるようになるなど、設計品質が大幅に向上している。

「試作品や部品などができ上がってから、いろいろな不都合が見つかると、また最初から設計しなおさなければなりません。しかし、3次元CADを使うようになってからは、手戻りの発生が激減したので、余分な時間やコストをかけずに済むようになりました」と阿部氏は語る。

さらに片山氏は「3次元設計は、2次元と比べて内容の濃さが違います。製品の品質向上に直結するので、開発にかかる時間を短縮しようとは思っていません。3次元による設計は精度が高いため、設計以降の工程の時間が減るので、生産リードタイムは確実に短くなっていますね」と3次元設計によるメリットを断言する。

また、3次元CADの導入によって設計効率が格段に向上した結果、段ボール取り扱い専用ロボットをメインに製造しているSA事業部では、従業員を増やすことなく、外注設計費をゼロに抑えるなど、製品開発におけるコストダウンにも大きく貢献している。

とりわけ、デザインレビューの段階で、数多くの人の意見が製品開発に反映できるようになったことが、3次元CADを導入した最大のメリットだという。2次元設計の時代は、製品や事業部単位で個々に製品開発を行っていたのが実情で、それぞれの設計者が相互にコミュニケーションを取る機会はほとんどなかった。しかし、3次元CADが全社共通のコミュニケーションツールとしての役割を果たすことで、設計者間の壁を打ち破り、他部門の意見も参考にしながら、設計品質に磨きをかけられる新たな設計文化を生み出したのだ。

「3次元CADの導入によって、経験豊富な設計者の意見が全ての製品に反映されやすくなりました。例えば、通りすがりに新人のパソコン画面をちょっと覗いて、ここはこうした方がいいよと即座にアドバイスできるようになりました。その結果、入社したばかりで設計経験の少ない人でも、先輩のアドバイスを聞きながら、それなりの形に仕上げることができます。ところが、2次元設計の頃は、図面をよく見て頭のなかで組み立てないとならないので、自分の担当以外の設計には簡単にアドバイスはできませんでした。しかし今は、設計者が自分の担当以外の製品設計にも関心を持つようになり、設計者の意識も大きく変わりましたね」と片山氏は語る。

今後は、部品の強度を測る構造解析に加え、設計段階でロボットの動作を検証する機構解析も行いたいという。しかし、そのためには既存の3次元CADのマシンスペックを上げる必要があり、その辺をいかに整備していくかが今後の検討課題となる。

設計業務の標準化と、スピーディで効率的な設計のために、部品ライブラリの整備にも意欲を示している。また、一部では3次元データを展示会のプレゼンテーションに活用したり、組立作業の確認用に3次元CADビューワの完成イメージを利用したりしている。こうした3次元データの他部門への有効活用にも、いっそう積極的に取り組む考えだという。

不二輸送機工業株式会社

業種製造業
事業内容各種産業用パレタイジングロボットの製造・販売、搬送システムの製造・販売、貨物用エレベータの製造・販売、その他各種荷役運搬省力化設備の製造・販売
従業員209名(2010年5月現在)
サイトhttps://www.fujiyusoki.com/