海外メーカーや国内メーカーの海外拠点との取引が増加するとともに、同社に対する3次元CAD対応への要望が増加してきたという。それというのも、台湾や中国などでは、既に3次元CADが普及していたからに他ならない。「海外では、既に3次元CADが主流となっていました。5年ほど前から、アジアの拠点から、日本ではなぜ3次元CADを使っていないのか、と言われる状況でした。そして、部品の設計開発において、海外の拠点と国内との間でデータ交換などの際に、システムが統一されていないために、作業に支障をきたすこともありました」と開発設計部部長代理の橋本 隆之氏は語る。
そこで同社では、海外拠点とのシステム連携を図るため、2003年1月頃から3次元CADの導入に向け、具体的なシステム導入の検討を始めた。「当社ではもともと『AutoCAD』を使っていました。そこで、そのデータをうまく使い、3次元化に応用できれば導入コストを抑えることができる方法はないか、大塚商会さんにご相談し、今回のシステムをご提案いただきました」と開発設計部第二課技師補の田島 秀哉氏は当時の模様を語る。大塚商会からの提案で同社が選定したシステムは、『Autodesk Inventor Series』だった。
『Autodesk Inventor Series』は3Dメカニカル設計のためのソフトウェアで、同シリーズには『AutoCAD』をベースとした、2Dメカニカル図面作成機能搭載の『AutoCAD Mechanical』や、設計データの管理機能に有効な『Autodesk Vault』などが含まれる。同社ではこれらのツールを使い、2次元CADから3次元CADへの移行を進めた。そして、海外とのシステムの連携を強化するとともに、CADデータを営業管理部門や生産技術部などの他部門へも活用することが、新システム導入の大きな目的であった。
「しかし、社員は2次元CADに慣れていましたから、相当反発がありました」と田島氏は語る。そこで、同社では大塚商会による企業スクールを開催し、研修を行うことで、社員のスキルアップを図った。「オリジナルで部品の設計を行う場合、どうしても設計面で応用が必要となる部分が出てきます。そうした操作などが、どうしても分からないような場合でも、大塚商会さんのヘルプデスクを利用するなど、随分と助けていただきました」と田島氏は続ける。
導入当初は、従来の『AutoCAD』と『AutoCAD Mechanical』を併用していたという。「平日には、なかなか研修を実施できないため、毎週土曜日に研修を行うなどして、新しいシステムの浸透を進めてきました」と橋本氏は語る。2003年9月時点の『Autodesk Inventor』の使用率はわずか2割ほどだったという。その後、大塚商会による問題点のヒアリングやフォローアップを受け、導入後1年ほどで運用が軌道に乗ってきたという。
その他、営業管理部門には、板金部品見積りシステムを導入している。この板金見積りシステムは、『AutoCAD Mechanical』をベースとしており、板金部品の展開図から見積りを作成できるように、カスタマイズされている。「このシステムの導入にあたっては、CADデータをベースにして、見積りに使用する元データを作成しようという、会長の判断がありました。ところがそれを実現するためには、まず3次元CADを使いこなす必要がありました。そこで、社員は3次元CADの利用に、積極的に取り組むようになり、結果的には、トップの判断が新システムの運用を後押しし、社内に良い影響を与えたということです」と橋本氏が、当時の社内の様子を語る。
このような努力が実を結び、今では部品の試作なども『Autodesk Inventor』で行うほど、設計の主力として使われるようになった。