オートデスクの土木インフラ向けソリューションと今後のビジョン

BIM/CIMはデジタル技術による業務プロセスの変革(DX)のための基盤

国土交通省発注の業務では、次の時期からBIM/CIMが原則適用となります。この取り組みにより、近年土木業界でのBIM/CIMの機運は高まりを見せました。

  • 本年度(2022年度)から小規模を除く全ての詳細設計で原則適用。
  • 2023年度からは小規模を除く全ての詳細設計・工事で原則適用。

一方で、発注者から指定されたBIM/CIMに対応すること自体が目的になっていたり、従来の業務に追われ、BIM/CIMに取り組めていなかったりする話を伺うこともあります。

BIM/CIMを海外では「BIM for Infrastructure」と呼んでいますが、BIMという概念は、建設ライフサイクル全体や調査・設計・施工・維持管理の各段階の業務プロセスを大きく変革するものと位置づけられています。最近は建設業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の話題がよく取り上げられますが、業務プロセスの視点で見ると、BIM/CIMは「土木業界のDXの基盤としての役割」を果たすことが期待されていると考えられます。

近年オートデスクは、「デジタル技術によるプロセス変革=DX」の支援を目的とした製品開発に注力しています。オートデスクが提供する建築・土木向けのプロダクトパッケージ「Architecture, Engineering & Construction Collection(以下、AEC Collection)」にはさまざまなツールが含まれており、これらの機能を組み合わせてDXの成功に向けた活用方法を見いだすことができます。

植田 祐司

オートデスク株式会社 技術営業本部

AutodeskソリューションによるBIM/CIMの取り組み

国交省のBIM/CIM原則適用では、主に詳細設計時にLOD 300程度のBIM/CIMモデルの作成が求められています。土木構造物のBIM/CIMモデルを正確に作成するにはユーザー側のソフトウェアスキルも必要ですが、ソフトウェア側にも正確なモデルを作るだけの機能や自由度が必要になります。

AEC Collectionには、CADソフトウェアとして長年の実績を持つ「AutoCAD」をはじめ、AutoCADをベースとしたBIM/CIMソフトウェアの「Civil 3D」、BIMの分野で世界的に普及している「Revit」などが含まれており、複数のソフトウェアの機能を組み合わせることで、複雑なBIM/CIMモデルであっても正確に作成できます。

橋梁上部工モデルをCivil 3Dで作成したキタック様の事例

効率化と付加価値アップによる「攻めの生産性向上」キタックが目指すBIM/CIM働き方改革

LODの高いBIM/CIMモデルの作成は、難しい操作や繰り返し作業が必要となり、多くの時間を要します。オートデスクのソフトウェアには、あらかじめ準備をしておくことで、作業者の負担を少なくするテンプレートやパラメトリックモデルなどの仕組みがあります。

特に、最近では「Dynamo」というローコードのビジュアルプログラミングツールを活用するユーザーが増えています。DynamoはCivil 3DやRevitなどのソフトウェア内で使用できるプログラミングツールで、これまでマウスやコマンドで操作していた手作業をコンピューターに自動で処理させることが可能です。Dynamoは一般的なプログラミングに比べて習得が容易なため、土木技術者自身が自動化のプログラムを作成し、業務時間を短縮する事例も多く見られるようになってきました。

Dynamoを活用した大日コンサルタント様の事例

建設コンサルタントの課題はデジタル技術で解決するしかない! 大日コンサルタントのDXを支えるBIM/CIM自動化戦略

一方で、必ずしも詳細なモデルだけがBIM/CIMで求められているわけではありません。前述したようにBIM/CIMを「デジタルで業務プロセスを変革する」ことと捉えれば、LOD 100程度の簡単なモデルを利用した業務改善にも大きな価値があります。

例えば、国交省BIM/CIM業務のリクワイヤメント項目に挙げられている「可視化による設計選択肢の調査」や「対外説明」などは、LODの低いモデルでも十分に効果を得られます。LODの低いモデルは作成難易度も低く、短い時間で作成可能です。そのモデルを利用して従来業務の資料作成や協議時間が大幅に短縮し、業務を効率化できる可能性があります。

AEC Collectionに含まれている「InfraWorks」は、モデルビルダー機能を使って公開情報から自動的に現況の地形や構造物を作成できるだけでなく、直感的な操作で簡単に道路や橋梁、トンネルといった構造物を作成できます。簡単なソフトウェアの操作で技術的な検討(例えば橋梁の配置検討や建築限界の確認)ができることで、技術者自身がBIM/CIMモデルを活用して業務を変革することができます。

InfraWorksで作成した橋梁。直感的な操作で簡単に橋梁モデルを作成できる

ここまで幾つかソフトウェアの名前が挙がったように、オートデスクはさまざまなツールを提供しています。そして、それらのツールは相互に連携可能です。

例えば、Civil 3Dの道路モデルをInfraWorksで使用したり、InfraWorksで作成した橋梁モデルをRevitで使用したりできます。またツール間の連携だけでなく、データ共有のプラットフォームとして、AEC Collectionに含まれている「Autodesk Docs」をはじめとした「Autodesk Construction Cloud」というクラウドサービスを提供しています。

単にBIM/CIMモデルを作るだけでなく、作ったモデルやデータを発注者や協力会社などの関係者間で共有してシームレスに活用できることが、オートデスクのこれからのビジョンであり、ユーザーのDXを支援するために必要だと考えています。

次回はオートデスクの今後のビジョンを2022年10月に開催された「Autodesk Univercity 2022」(現在はオンデマンドで配信中)にも触れながら話をしたいと思います。

植田 祐司

オートデスク株式会社 技術営業本部

土木工学修士課程を修了。建設コンサルタントにて電力設備の土木構造・地盤の設計・解析業務に従事。その後、建築・土木構造物の3DFEM解析の業務を経験。オートデスクでは、土木分野を中心に、Architecture, Engineering & Construction CollectionによるBIM/CIMソリューションの提案を行っている。