3次元CADを導入し解析や干渉のチェックで手戻りを削減。2次元CADとの親和性も高評価

庄田鉄工株式会社(現:SHODA株式会社)

1926年創業の庄田鉄工株式会社は、世界初のNCルータを開発したパイオニアとして知られる、「削る」加工のプロフェッショナル集団だ。木材だけではなく、樹脂成型品・アルミ・軽量コンクリート・新素材などあらゆる産業分野に加工機械を提供しており、高いシェアを獲a得している。同社はこれまで、2次元CADシステムを活用してきたが、その開発・サポートの終了に伴い、新しいCADシステムの導入を検討。大塚商会を通して『Autodesk Inventor』シリーズとドキュメント管理システム『COOL CABINET』などを導入した。2次元CADを継続的に利用しながらも、3次元CADの活用を進め、ミス・工数・手戻りなどの削減に成功している。

本ページは大塚商会が発行している「αソリューション」から転載したものです。

導入事例の概要

導入の狙い

  • 旧CADシステムのサポート終了に伴うリプレース
  • 3次元CADと2次元CADの共存環境の構築

導入システム

  • AutoCAD Inventor Professional
  • AutoCAD Inventor Suite×7
  • AutoCAD Inventor Simulation
  • AutoCAD Mechanical
  • ドキュメント管理システム『COOL CABINET』

導入効果

  • 解析と干渉・重心チェックでミスや手戻りの削減
  • CADデータ活用による製造工程全体の時間短縮

小型精密機から航空機部品用までNCルータのパイオニア

庄田鉄工株式会社は1926年の創業以来、80年以上の歴史を持つ老舗企業だ。1930年、業界初となる「ホゾ取万能丸鋸盤」を考案。その後も、木工加工機械製造を主軸としながら事業展開してきた。1968年には、コンピューター制御により木材に彫刻を施すという画期的なNC(numerical control)ルータを世界ではじめて開発し、楽器業界や家具業界の生産システムに革命を起こした。以来、NCルータのパイオニアとして認知を広げ、ワールドワイドで累計8,000台以上の製品を提供している。

現在、同社はNCルータを軸とした産業機械メーカーとして、ドリルやカッターなどの刃物類・ソフトウェア・治具をワンストップで提供。同社のNCルータは、楽器・家具・住宅設備に始まり、自動車・鉄道車輌・船舶・航空機から人工衛星・スペースシャトルに至るまで、幅広い産業分野に展開している。

「あらゆる産業分野にかかわる多種多様な加工機械を作っています。NCルータにも標準機は用意していますが、加工する材質やどういった加工をしたいのかなど、お客様の要望に合わせてその都度カスタマイズするのが実態です。年間で130~140台ほどの注文がありますが、そのうちの3割ほどが標準機のカスタマイズで、あとの7割は個別受注生産となります」と、技術部 機械設計課 係長の吉林基支氏は語る。

同社はこれまで、ワークステーションの2次元CADを長年運用してきたが開発・サポートの終了を機に、CADソフトの入れ替えを検討し始めたという。

2次元との連携を念頭にシステム選定まずは1台からのスタート

「新しいCADシステムとして、当然3次元CADが候補に挙がりました。しかし現場では2次元CADで設計するケースが圧倒的に多く、さらに取引先においては、ほとんどが『AutoCADMechanical』などの2次元CADを活用しています。そこで、2次元CADと3次元CADの並行運用を目指しました」と、吉林氏は振り返る。

製造業、特に産業機械メーカーなどでは過去の資産を生かした設計を行うため、依然として2次元CADを利用している企業が多い。つまり外注設計とは、どうしても2次元での図面データのやり取りが必須になる。3次元CADと2次元CADの共存環境の構築を図るうえでは、社内はもちろん、取引先 が使用している2次元CADも考慮したシステムの導入を検討しなければならなかった。

吉林氏は、設計・製造ソリューション展などに通い、3次元CADソフトを具体的に比較検討した。「展示会ではいろいろなCADを操作してみました。その中で、『Autodesk Inventor』の感覚はすんなりとつかめましたね。操作感はもちろんですが、2次元と3次元間のデータ互換性の精度という部分も大きな魅力でした。また、他社製ソフトのデータのインポート/エクスポート機能も充実していたので、『Autodesk Inventor』を導入することに決めました」と吉林氏は当時を振り返る。

そこで同社は、AutoCADの取り扱い最大手である大塚商会をベンダーに選定した。「それまで大塚商会さんとは取引がありませんでしたが、AutoCADの実績が多く、カスタマイズ対応などの相談も可能という理由からお願いすることにしました。AutoCAD以外のさまざまなアプリケーションを取り扱っているという点も決定要因として大きかったですね」と吉林氏は選定理由を説明する。

2005年の年末、同社は『Autodesk Inventor』のパッケージ製品である『AutoCAD Inventor Professional』を導入した。「3次元CADはハードルが高く、すぐに全面移行はできません。当社では、ノウハウを蓄積するため、まずは、『AutoCAD Inventor Professional』1台からのスモールスタートとしました。はじめの1カ月は“とりあえず触ってみる”というレベルで、試行錯誤が続きました」と吉林氏は導入当時の苦労を思い返す。吉林氏は大塚商会が開催するスクールにも参加し、技術レベルを向上させつつ実績を積み重ねていった。その後、『AutoCADInventor Suite』7台と『AutoCADInventor Simulation』、2次元CADへの変換用に『AutoCAD Mechanical』を導入。吉林氏は培ったノウハウを横展開し、導入から3年半が経過した現在は、設計部門の社員全員が3次元CADの基本操作をマスターしている。

「設計を担っているのは10人ほどですが、大塚商会さんのスクールも受講して、今では全ての社員が3次元を使えるようになりました。現在でも 最終的な図面の仕上げは『AutoCADMechanical』を使っていますが、3次元からのシームレスなデータ連動で、効率のいい使い分けができています」と吉林氏は現状を語る。

技術部 機械設計課 係長 吉林 基支氏

「大塚商会さんは、最大手ということで安心して導入できました。サポートも非常に満足しています。特にリモートメンテナンスは同じ画面を見ながらアドバイスしてもらえるので、非常に助かっていますね」

解析やデザインレビューを活用し製造段階の手戻りやミスを削減

同社が運用している『AutoCAD Inventor Professional』と『AutoCAD Inventor Simulation』にはモーションシミュレーションや構造解析といった解析機能がある。同社では、荷重と負荷を仮に定義することで、実際に加工する際にどのような歪みが生じているのかという分析のほか、強度解析を活用し、過剰設計を防いでいるという。

同社では、これまで手計算と設計者の経験値から安全率を算出してきた。当然、多くの時間と手間が手計算に費やされることになる。図面だけでは、設 計の堅牢性を確かめることも難しく、安全率を高めるため、過剰設計となることも少なくなかった。さらに試作後に強度面での不具合が発生するケースもあり、手戻りも生じていた。

しかし『Autodesk Inventor』パッケージの解析機能を使うことで、過剰設計と手戻りがなくなり、その分のコストや工数削減が実現しているという。吉林氏は「特に金属加工用の機器は厳しい安全率を求められています。3次元データでの解析を使えば、その手間は半分以下に抑えることができますね」と証言する。

また、2次元CADでは各部品を組み合わせた状態を想像しにくく、試作してみて、はじめて部品同士が干渉していることに気がつき、手戻りが起きることもあった。干渉についても、3次元でのリアルなデザインレビューを活用することで、事前にチェックできるようになったという。

「重量重心についても3次元データならビジュアル的に確認しながら設計ができるのが便利ですね。当社では手戻りが納期的に許されないケースも多いので非常に助かっています。また、3次元でアセンブルすれば、部品の設計のし忘れもありません。当社の主要製品であるNCルータは、型式によっては数百から数千の部品でできているため、ミスを減らすという意味でも、3次元CADは非常に有効なツールです」と、吉林氏は3次元CADのメリットを語る。

一般的に3次元CADは、2次元CADと比べて設計作業に多くの時間が必要だ。設計そのものに工数がかかるほか、データ容量が大きいため、出図の時間も増える。しかし、設計だけではなく製造工程全体で考えると、時間の短縮が図れるのだ。同社の場合、取扱説明書や顧客に提出する資料に3次元データを流用しており、社内的には製造現場の作業指示書にも活用している。これらの図版は、これまで別途用意するか平面の組図を渡してい たが、一度作った3次元データを活用することで、手間と時間を削減できるようになった。

「3次元データは、製品の完成イメージを伝えるのに適しています。お客様にデータを見てもらうことで、営業しやすくなったと聞きます。また、3次元データを活用した作業指示書も分かりやすいと評判です。そもそも3次元CAD導入に際して、製品製造にかかるトータル時間の短縮と、ミスを事前に防ぐ体制作りが、主要な目的でした。3次元化は、全社的な業務効率向上に大きく寄与していると思います」と、吉林氏はそのメリットについて語る。

  • 世界初のNCルータ(NC111型)。「80余年の歴史」と「先端技術への挑戦」の象徴だ

  • 現在はパーツファイルも増え、徐々に3次元設計にかかる時間も短くなっている

既存データを蓄積・管理し技術情報の活用効率を上げていく

同社では、『Autodesk Inventor』に続けて、出図した図面の管理を主たる目的にドキュメント管理システム『COOL CABINET』を導入し、3次元CADの図面データをTIFF形式で保存・管理している。

「CADの設計データは改版してしまうので、部品メーカーに実際に渡した図面がどれなのか不明になるという問題がありました。そこで、『COOL CABINET』を導入し、CADの生データと図面データを分けて管理するようにしたのです。設計部門用の図面履歴の管理には『Autodesk Vault』を使っています」と吉林氏が説明する。個別受注生産が多くを占める同社のNCルータはライフサイクルが長く、10年から長いものでは30年以上も顧客企業で愛用されている。そのメンテナンスに対応するため、過去図面の正確な管理は同社にとって重要なファクターである。

サーバやPCなどのハードウェアも大塚商会から導入している

また、設計部門以外の社員が『COOL CABINET』を活用することで、さらなるメリットを得ている。従来は、設計部門以外のスタッフが図面データを必要とする際には、その都度、設計部門に依頼し出図していた。資材部門のスタッフが今すぐに必要だとしても、設計部門の業務が立て込んでいる間は、ただ待つしか方法はない。設計部門にしても、他部門からの要望にあわせて作業を中断し、出図作業に時間を割かなければならなかった。

今回の『COOL CABINET』の導入によって、設計部門以外の社員でも簡単に図面を出図できるようになった。手間の削減はもちろん、必要なときに出図できるため、設計部門と他部門、互いにストレスフリーな作業環境を整備できたのだ。

以上のように同社では、設計データを有効活用することで、全社的な業務の効率化を図っている。「理想としては、各部署が必要な情報を吸い出して使える環境を確立したいですね。社長からも積極的に3次元化を進めるようにと発破をかけられています。設計部門に関しても現在、『Autodesk Vault』にデータが蓄積され、流用設計が進んでいます。将来的には、部品の標準化を進めてライブラリ化したいと思っています。データ活用が進めば、もっと相乗効果が現れるでしょう」と吉林氏は熱く意気込みを語った。

庄田鉄工株式会社

業種製造業
事業内容木工加工機・各種産業加工機・各種刃物製造販売
従業員84名(2009年5月現在)
サイトhttp://www.shoda.com/