メッシュが決め手! FlowDesignerの騒音解析(波動論的方法)

FlowDesignerの騒音解析で無制限メッシュオプションが必要な理由

FlowDesignerは、建物の音響設計や騒音対策に役立つツールです。騒音解析を行うことで、音の伝わり方や反響をシミュレーションし、快適な環境を実現できます。

騒音解析の重要性と活用事例

  • 室内音響設計:コンサートホールや会議室など、音響性能が求められる空間の設計に。残響時間や音圧分布を予測し、最適な音響設計を支援。
  • 騒音対策:工場や交通機関など、騒音源となる場所の対策に。遮音壁や吸音材の効果をシミュレーションし、騒音低減対策を検討。
  • 製品開発:家電製品や自動車など、製品から発生する騒音の評価に。製品設計段階で騒音を予測し、静音性の高い製品開発を支援。

高精度解析のためには高メッシュ数が必要

FlowDesignerの騒音解析は、音の波を詳細にシミュレーションする「波動論的方法」を基盤としています。この手法は、高精度な結果を得られる反面、計算負荷が高く、特に高周波数の音を扱う場合は膨大なメッシュ数が必要となります。なぜ、そこまで多くのメッシュが必要となるのでしょうか?

まずは音の速度、高低について

音の速度(音速)

空気中を伝わる音速は、媒質である気温に依存します。気温が高いほど音速は速くなります。

音速(C)と気温(t)の関係は、次式で求められます。実用上は、気温15℃(常温)の時の音速である340m / sを用いることが多い。

音速(C)=331.5+0.6t

音の高低(周波数)

音の高さは、音の振動数である「周波数」によって決まります。周波数の単位はヘルツ(Hz)で、1秒間に何回振動するかを表します。人間の耳に聞こえる音(可聴音)の周波数範囲は、一般的に約20Hzから20,000Hz(20kHz)とされています。

 

低い音高い音
振動数少ない多い
波長長い短い

周波数、音速、波長の関係式

周波数(f)、音速(C)、波長(λ)の間には、次の式が成り立ちます。

周波数(f)=音速(C) / 波長(λ)

上式から人間の可聴範囲における波長を求めると、約17mから1.7cmまでの範囲に及び、その差は約1,000倍にもなります。

最低周波数(20Hz)の場合波長(λ)=340(m/s)/ 20(Hz)=17m
最高周波数(20,000Hz)の場合波長(λ)=340(m/s)/ 20,000(Hz)=0.017m(1.7cm)

波を再現するには、メッシュは多く必要になる

音響解析において、音の波を正確に再現するためには、波長に対して十分な数のメッシュ(計算上の分割)が必要です。特に、高周波数の音を解析する場合には、波長が短いため、より細かいメッシュが必要となります。

ある規模の空間分割の例(周波数ごと)

では、波長の1 / 10ごとに空間分割した場合、空間サイズおよび周波数によって、総メッシュ数とPCの必要メモリーはどのように変化すのかを表1に記します。

室内解析(8×6×2.5m3)のメッシュ数と使用メモリー
周波数(Hz)メッシュ間隔(m)(波長の1 / 10)メッシュ数必要メモリー(GB)
1000.344,4461.1
2000.1729,7921.1
5000.068413,0491.3
10000.0343,163,9502.4
20000.01724,948,85810.5
30000.01191,841,30029.4
屋外解析(40×40×20m3)のメッシュ数と使用メモリー
周波数(Hz)メッシュ間隔(m)(波長の1 / 10)メッシュ数必要メモリー(GB)
1000.34907,8631.7
2000.176,911,8803.9
3000.1123,197,68410
4000.08554,150,95020.2
5000.068104,263,03830

FlowDesignerのPro版で使用可能なメッシュ数の上限は、1,000万メッシュです。上表の空間サイズで室内の音響解析を行う場合、2,000Hzを超える高周波の解析や、屋外の音響解析で300Hzを超える場合には、「音響解析オプション」に加え、「無制限メッシュオプション」をおすすめしています。

1波長を8分割以上にするのは、構造解析でも同じセオリーを用いる

マルチフィジックスな考え方になりますが、構造解析のうち衝突解析についても、応力波の分割数が全体の空間メッシュ数を決定するということがあります。クーラン条件という考え方となりますが、陽解法動解析において、解の安定限界を保証するためには、時間増分Δtがクリティカル時間ステップサイズ(Δt crit)よりも小さくなければならないことを表したものです。

無制限オプションで広がる騒音解析

FlowDesignerで騒音解析を行う際は、大空間を扱うことが多いため、無制限メッシュオプションを併用することをお勧めします。また、音の回折現象やノイズキャンセラーといった、位相を1 / 2波長ずらすことで音で音を消すなどの解析を行う場合は、高精度なメッシュ解像度が要求されます。

FlowDesignerの騒音解析を効果的に行うために、解析内容に応じて適切なオプションとコンピュータースペックを選択してください。