ヘリコプターに機材を装備する。設計業務に3次元CADを活用し、2次元設計の労力と時間を大幅に削減

セントラルヘリコプターサービス株式会社

業種
サービス業
事業内容
ヘリコプターの運航・受託運航、ヘリコプターの整備・修理改造、ヘリコプターの操縦士・整備士の養成、ヘリポートの調査・企画
従業員数
137名(2022年4月現在)
サイト
https://central-heli.com/

導入事例の概要

セントラルヘリコプターサービス株式会社は、高性能多用途双発ヘリコプター「BK117」に特化した運航・整備・教育訓練事業を展開。ヘリコプターに機材を装備するための設計業務に3次元CADを活用することで部品の形状や配置が一目で分かるようになり、設計業務の効率アップと若手社員のスキルアップに寄与している。

導入の狙い

  • 重量や重心、耐荷重などを考慮した設計業務を効率よく行いたい。
  • 若手設計者のスキルアップを図りたい。

導入したメリット

  • 設計から製作依頼までの時間を短縮。
  • 形状の把握が容易になり、若手設計者のスキルアップに貢献。

導入システム

高性能ヘリコプターBK117に特化。運航・整備・教育訓練のエキスパート

愛知県に本社を構えるセントラルヘリコプターサービス株式会社は、1967年にヘリコプターの運航業務に携わるエアーリフト株式会社として設立。その後、2007年に朝日航洋株式会社グループの一員となり、同年セントラルヘリコプターサービス株式会社に社名を変更した。川崎重工業株式会社とドイツのMBB社(メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム社:現エアバス・ヘリコプターズ・ドイツ社)が共同開発した高性能多用途双発ヘリコプターBK117に特化したビジネスを展開していることが大きな特長だ。

運航事業では、地方自治体の委託を受けてドクターヘリの派遣、および消防・防災ヘリ任務の操縦士や整備士を派遣。操縦士や整備士を乗せたBK117で現場に急行し、現地で医師や看護師、消防隊員などを乗せて、医療活動や消防・防災活動のサポートに従事している。

整備事業では、国内の警察庁や地方自治体などが所有しているBK117の定期点検や修理、改造、カメラなどの機材を装備する作業を一手に請け負っている。

教育訓練事業では、BK117の操縦士や整備士を育成するための各種訓練事業を実施。既にヘリコプターの免許を取得して活躍している人が、BK117に特化した操作技術などを習得するために派遣されるケースが多いという。

品質保証部 技術グループ 設計チーム チームリーダー 山﨑健次氏

「BK117の共同開発元である川崎重工のグループ会社なので、最新の技術情報を得ることが可能です。BK117に特化することで事業を効率よく展開できることが大きな強みです」

機材を装備する設計業務にSOLIDWORKSを活用

現在、山﨑氏がリーダーを務める設計チームは、整備事業の一環として、BK117に機材を装備するための設計作業に従事している。逃走車両の追尾も可能な高性能カメラやモニター、警察無線のアンテナや送信装置など、取り付ける機材の種類は多岐にわたる。

「ヘリコプターに機材を装備する際には、機材が破損して搭乗者に危害を与えたり、絶対に落下したりしないように、さまざまな確認事項があります。装備後は、設計図面、強度解析、試験方法の資料などを航空局に提出して厳しい審査をクリアしなければなりません」(山﨑氏)

ところが、以前は設計業務を2次元CADで行っていたので、重量や重心を考慮した機材の装備や機内の最適なレイアウトをイメージすることが難しく、また強度解析などは手計算で行う必要があった。そのため、経験豊富な設計者でないと円滑に設計業務が行えず、若手設計者の育成に課題を抱えていた。

そこで、以前からPCやサーバー、プリンターなどの導入で取引実績のあった大塚商会に相談し、3次元CAD SOLIDWORKS Premiumを6ライセンス導入した。

「SOLIDWORKSは、ほかのハイエンドの3次元CADに比べて、比較的簡単に操作ができるので、経験が浅い若手社員でもすぐに使いこなせるようになることが一番の魅力でした。そのうえ、Premium版には、強度解析の機能も実装されているので、業務効率を高めるうえで最適な選択肢でした」(山﨑氏)

  • 高性能多用途双発ヘリコプターBK117に特殊なカメラ機材を装備した3次元モデル

  • 装備するパーツや機器の3D画面。チェーンリンク機能でボルトやリベットを均等に配置

  • 大塚商会に部品データの管理方法を相談し、自社でモデリングした多くのボルトやリベットといった共通部品データを一元管理して共有している

  • Premium版に付属する静解析機能による強度測定モデル画面。強度解析の結果を色分けして表示することで視認性が向上

大塚商会のサポートサービスで、3次元設計へのスムーズな移行を実現

SOLIDWORKS Premiumを用いて2次元設計から3次元設計に移行する際には、大塚商会のサポートサービスをフル活用している。導入時には、設計チームで若手社員も含めて4名がCADスクールに参加し、SOLIDWORKS Premiumの基本的な操作方法を習得。その後は、たよれーる CADテレホンサポートサービスを利用しながら、BK117のオプション機材設計で必要な活用方法をマスターしていった。

「大塚商会さんのサポートセンターに電話をかけて質問すると、リモートで画面共有しながら具体的な操作方法を教えてくれるので、とても分かりやすく助かりました。例えば、ボルトやリベットを均等に配置する方法が分からなかったのですが、いろいろなやり方を丁寧に教えてもらったので、頻繁に行う設計作業がスムーズに行えるようになりました」(山﨑氏)

共通部品を管理する運用ルールを明確にする

その一方で、設計時に共通部品データを流用するケースが増えるにつれて、新たな課題に直面。共通部品データを効率よく管理する方法が分からず、当時は苦慮したという。

例えば、ボルトやリベットは強度の高い特殊なものを使用しているため、3次元モデルを一から作成し、それを複数の案件にリンクする形で共有していた。しかし、共通部品が保存されているフォルダーを誰かが勝手に移動したり削除したりすると、共通部品を使用している全ての図面に影響を及ぼし、図面を作り直さなければならなくなる。

そこで、こうした事態を回避するため、部品構成管理に詳しい大塚商会の技術者に相談。共通部品を管理するための社内ルールを明確にすることで解決策を導き出した。

「3次元設計を行う際には、事前に運用ルールを明確にすることが重要であることを再認識しました。まだ試行錯誤を繰り返している段階ですが、大塚商会さんにどんなことでも気軽に相談できるので、安心して日々の業務が行えます」(山﨑氏)

設計業務の労力を3分の1に削減。若手社員のスキルアップにも貢献

SOLIDWORKS Premiumによる3次元設計に移行したことで、一番実感している導入効果は、設計業務の工数と時間が大幅に削減されたことだ。

「2次元設計のときは、同じような部品でも大きさが微妙に違うものがあるので、どんなに経験を積んでいても、部品の種類が増えると頭が混乱してしまいがちです。その点、3次元設計は、一つ一つの部品の形状を確認しながら作業を進められます。そのため、私の感覚では、以前の3分の1ほどの労力で設計業務が行えています」(山﨑氏)

特に3次元モデルから2次元図面に簡単に書き出せることが大きなメリットだという。例えば、機体に取り付ける機材は、同社が3次元モデルで設計し、その2次元図面を外部のメーカーに渡して製作を依頼している。しかし、以前のように、手間のかかる2次元図面を一から作成する必要がないので、設計から製作依頼までの時間が従来の半分くらいに短縮されたという。

SOLIDWORKS Premiumは、若手の設計者の育成にも大きく貢献している。

「2次元図面では、部品の細かな形状まで読み取るのは困難ですが、3次元モデルでは、部品の形状が一目で分かるので意思疎通がしやすくなりました。若手社員が作成したものをチェックしたときに、問題点があればすぐに見つけられ的確に助言ができます。そのため、若手社員の教育期間が短くて済み、スキルアップのスピードが速くなりました」(山﨑氏)

実際、入社2年目の社員は、SOLIDWORKS Premiumの基本操作を短期間で習得し、実業務で使いこなしている。

「SOLIDWORKSはある程度、直感で操作ができるので、初めて使っても簡単に設計業務が行えます。現在は、機体に機材を装備した3次元モデルを2次元図面に変換して加工する作業を主に行っていますが、板金モデルも簡単に生成できるので非常に便利です」(山﨑氏)

強度解析の機能で航空局に提出する資料の安全性を担保

2021年度からは、SOLIDWORKS Premiumに実装されている静解析機能も活用し始めている。機体に装備する機材や部品の強度を解析し、航空局の審査を受ける際に安全性の根拠となる資料を作成することが主な目的だ。

「以前は、強度解析を手計算で行っていたので時間と手間がかかり、安全性を高めるために過剰品質になりがちでした。そこで、大塚商会の強度解析に関する講習会に参加し、強度解析のやり方を伝授してもらいました」(山﨑氏)

具体的には、設定項目に数値を入力すると、自動的に強度解析が行われ、負荷が高い部分が赤く表示される仕組みになっている。第三者が見ても、強度の度合いが一目で確認できるので、航空局に提出する資料の説得力が増し、業務効率も格段にアップした。

「2次元図面で強度解析の経験がない人でも、設定項目さえきちんと入力すれば、正確な数値が算出されます。若手からベテランまで誰もが効率よく設計業務が行えることが、SOLIDWORKSを導入した最大の効果です」(山﨑氏)

今後も、3次元設計のメリットを最大限に享受しながら、若手社員の育成と設計業務の効率改善に努めていく考えだ。