ディーゼルユナイテッドの業態について教えてください。
ディーゼルユナイテッド(以下DU)は船舶用の大型ディーゼルエンジンを作る会社です。石川島播磨重工業(現 株式会社 IHI)と住友重機工業(SHI)の船舶ディーゼル部門が合併して1988年に設立されました。主力製品は「DU-バルチラ形ディーゼルエンジン」と呼ばれる2ストロークディーゼルエンジンで、大型タンカー、コンテナ船、貨物船など、海上物資輸送の原動力として活躍しています。
株式会社ディーゼルユナイテッド
船舶用ディーゼルエンジンメーカーであるディーゼルユナイテッドは、SolidWorksを活用し、エンジンの周囲に組み付く複雑な配管および格子の設計において、最適設計に大きな効果を上げている。同社で設計を担当する皆さんに詳しく聞いた。(写真左から種村祥明氏、中山昭氏、課長 榎本明生氏、山本伸剛氏、赤岸由昴氏)
ディーゼルユナイテッドの業態について教えてください。
ディーゼルユナイテッド(以下DU)は船舶用の大型ディーゼルエンジンを作る会社です。石川島播磨重工業(現 株式会社 IHI)と住友重機工業(SHI)の船舶ディーゼル部門が合併して1988年に設立されました。主力製品は「DU-バルチラ形ディーゼルエンジン」と呼ばれる2ストロークディーゼルエンジンで、大型タンカー、コンテナ船、貨物船など、海上物資輸送の原動力として活躍しています。
ディーゼルエンジンは、受注生産です。お客様である造船所や船主の要望に合わせた仕様のエンジンを設計し、ここ兵庫県相生市の工場で製造、試運転をしたのちに船で出荷、国内外の造船所において船に搭載されます。DUが扱っている最も大きなエンジンは、長さ約25メートル、高さ14メートル、幅11メートルで、5階建てのビルに相当する大きさです。
DUはSolidWorksをどのように活用していますか。
DUは2001年にSolidWorksを導入、ディーゼルエンジンの周囲に組み付く配管と格子装置(エンジン付き足場)の設計に使っています。現在SolidWorks2008を自社で6ライセンス保有するほか、外注の設計会社においても4社で11ライセンスを使っています。
ディーゼルエンジンの設計はどのような特徴がありますか。
ディーゼルエンジンの設計の特徴は大きく二つあります。
一つ目は、「二本立て」の設計であること。
舶用大型ディーゼルエンジンは、エンジン本体の周囲に配管・格子が組み付く構造になっています。エンジンの設計は、バルチラ・スイス社とのライセンス契約による「ライセンス生産」※です。DUの主力製品である「DU-バルチラ形ディーゼルエンジン」は、バルチラ・スイス社とのライセンス契約で舶用大型ディーゼルエンジンの製造を行っています。
一方、エンジン本体の周囲に組み付く配管・格子部分は、ライセンサーであるバルチラ・スイス社の設計はDIN規格でおこなわれているため、日本のJIS規格に合わせた設計をDU独自で行っています。
二つ目は、「構造が複雑」なことです。
舶用大型ディーゼルエンジンの周囲に組み付く配管は複雑に交差しています。配管同士の干渉が起きやすく、時には「仕損」(仕掛かり途中での不具合)を発生させていました。
こういった干渉は2次元CADでは設計段階ではつかめず、実際に組立ててみないと分かりませんでした。そのため、組立中に部品を改造するために、現場の作業を止めてしまい、工程に遅れを生じさせることもありました。
配管・格子の設計は、干渉を発見しやすい3次元CADが向いています。そこで1994年に解析のモデリング用として導入したハイエンドの製品Aを設計にも使うようになりました。
DUでは2005年からはSolidWorksをお使いです。ハイエンド製品から乗り換えた理由は何ですか。
製品価格と保守料の問題です。製品Aは初期導入費用が高く、保守料は年間100万円もかかります。お付き合いをしている外注設計会社にも3次元CADを入れてもらいたくても、「一人親方」の会社や、大きくても20人程度の規模のため、受け入れてもらうのが大変でした。
2000年頃、バルチラ社が製品Bを導入したため、DUも一時はそれに追随しようということになりました。しかし同じくハイエンド製品であった製品Bはやはり高額なため外注設計会社にとって導入の垣根が高いこと、DUには不可欠の配管設計のアプリケーションが弱いこともあり、見送りました。
SolidWorksに決めた理由は、ミドルレンジであるため価格が手ごろであったことのほか、「パイピングアプリケーションがあったこと」「製品Aとの操作性が似ているため移行がしやすかったこと」です。
中山氏
「外注設計会社に、あまり高額な製品を薦めることはできません」
SolidWorksを使ってみての使用感を教えてください。
製品Aはエラーが起きるとエラー修復するまで3Dモデルを開くことが出来ず、操作ができなくなるので作業が止まってしまっていました。しかし、SolidWorksは、製品Aと比べると、エラーが起きたままでもモデルを開くことが出来るので、エラーを修復しやすく、作業が止まらないことが良いと思います。また、履歴を変更するのも簡単です。
また、ディーゼルエンジンにおいて配管設計は重要な部分ですが、ここが劇的に変わりました。
配管設計がどのように変わったのですか。
もともとは、2001年頃に配管設計用ソフトを導入しましたが、操作が難しいので誰も使えませんでした。そこで、これまでは、配管径等を毎回スケッチし、SolidWorksのスイープ機能を使って配管設計を行っていました。しかしこれでは間違いが多く発生する上に時間もかかります。また、スキルを要することなので、設計出来る人が限られてしまっていました。
2005年にSolidWorks Routingを導入したことで、配管の設計は大きく改善されました。フランジ等を配置すると、フランジサイズに合った配管が自動で選択されるので、あとは配管ルートを作成するだけでよくなり、設計時間がほぼ半分になり、正確性も増し、誰がやっても同じ操作で作業をすることが出来るようになりました。
SolidWorksの導入効果を教えてください。
SolidWorksの導入効果は大きく三つあります。
第1に、「仕損費を大幅に削減できた」こと。
第2に、「業務時間を有効活用できるようになった」こと。
第3に、「使用部材の統一によるコストダウン」です。
では順々に伺っていきます。第1の導入効果「仕損費を大幅に削減できた」とは、具体的には。
これまで舶用大型ディーゼルエンジンの配管設計は、実際に組立しはじめてからが大変でした。先に述べたようによく干渉が起き、特に初号機では干渉しては図面を修正し、干渉しては図面を再度修正しの、不具合を修正する作業の繰り返しでした。しかしSolidWorksの導入後は、「干渉」を設計段階で発見できるようになりました。
船体へエンジンを据え付ける際の干渉も、事前に船体データを入手し干渉を画面上で確認し、船体側の形状を変更することなく干渉を回避することが出来ました。
また、以前は組立途中に手配部品が足りないことが発覚するなど、「部品の手配漏れ」も起きていましたが、DU独自でSolidWorksの部品表をカスタマイズし、部品の数を自動計算し集計するシステムを作り、手配ミスを無くすことが出来ました。
その結果、DUでは仕損費を最大で5分の1に押さえることに成功しています。
第2の導入効果、「業務時間を有効活用できるようになった」とは、具体的には。
干渉により、仕損費というコストロスだけでなく、担当者の時間と労力のロスもありました。事前の干渉回避や組立作業の効率化によって後戻りの時間が減り、その時間を新しい設計など本来の前向きな作業に向けることができるようになりました。
これは設計だけでなく、設計とつながる製造現場も同じです。これまでは設計が止まると現場を手持ちさせなければなりませんでしたが、それがなくなりました。
これまで、トラブルが起きると休日返上で対策をしなければならなかったところを、今では休日はしっかりと休めるようになっています。
第3の導入効果「使用部材の統一によるコストダウン」とは、具体的には。
これまでは、エンジンだけでなく配管格子設計もバルチラ社からの図面参考に使っていました。しかし外国エンジンメーカーは、こちらの製造コストを考慮したり、作りやすさを優先して設計はしてくれないため、そのままの設計だとバラバラの使用部材を使うことを余儀なくされ、無駄が生じていました。SolidWorks導入後は、従来機種の対比分析を行うことで、入手しやすい大きさのH鋼や配管などの部材を割り出すことに成功、一括購入で材料費のコストダウンが実現しました。
SolidWorksのベンダーである大塚商会への評価をお願いします。
これまでの長いお付き合いの中で、大塚商会への評価は三つあります。
メールでの質問の回答が早いし、電話の対応も良いので、分からないことがあってもストレスを感じずに回答を得ることができます。
先日姫路の商工会議所で行われた大塚商会主催の製造業フェアに参加した時に、技術担当者にお会いしました。その頃ちょうど64ビットのマシンに換えたばかりだったのですが、当時使っていたSolidWorks2006がうまく動かないと言ったところ、すぐにDUまで駆けつけてくれてオンサイトでサポートを行ってくれました。
2005年にSolidWorksRoutingの購入を検討していた時に、商品を見に神戸の大塚商会に行きました。しかしあいにくその時神戸にはRoutingが分かる方が不在だったため、すぐに営業の方が大阪の大塚商会関西支社に連れて行ってくれてそこで使い方についてのレクチャーを受けました。「ここがだめならあそこで」というようなサービスは、関西だけでも何カ所も拠点がある大塚商会ならではだと思います。
DUの今後の展望をお聞かせください。
DUは、これからも高い品質のディーゼルエンジンの製造を通し、日本の造船業界に貢献していきたいと思います。SolidWorks、そして大塚商会にはこれからも良い製品を提供し、私たちをサポートしていただければ幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。