令和3年のリクワイヤメントはBIM/CIM活用ガイドラインにヒントあり!

令和5年度の原則BIM/CIM化が進む中、BIM/CIM対応を行う上でますます重要度が高くなっている「リクワイヤメント」。リクワイヤメントとは、発注者の要求事項を意味しますが、毎年その内容が変更されているのはご存じでしょうか。

令和2年度までは「1.円滑な業務執行」と「2.基準要領等の改訂に向けた課題抽出」の二つの目的で運用されていましたが、実際の事業ではその対応が難しかったり、非常に手間がかかって生産性向上につながらないものがあったそうです。

これまでの試行で得た知見によって要領・基準類の整備が進んだこともあり「2.基準要領等の改訂に向けた課題抽出」はなくなり、令和3年度のリクワイヤメントは「1.円滑な業務執行」に限定されて「業務」と「工事」のそれぞれに整理されています。では、「業務」「工事」それぞれの令和3年度のリクワイヤメントを見ていきましょう。

BIM/CIM 業務のリクワイヤメント

業務の場合、詳細設計におけるBIM/CIM適用では「3次元モデル成果物作成要領(案)令和3年3月」の適用が必須となります。「3次元モデル成果物作成要領(案)」には、詳細設計の当初から3次元モデルを作成し、工事における契約図書として利用する前提で3次元モデルから切り出した2次元図面に寸法や注記を記載するといった、3次元モデル成果物の作成方法や要件が規定されています。

3次元モデル成果物作成要領では、従来のように2次元図面を作成した後で3次元モデルを作成するのではなく、基本的にはBIM/CIMモデルを3次元で作成してモデルから切り出した2次元図面に寸法や注記を記入することになります。これがリクワイヤメントの必須項目となります。

下図にあるリクワイヤメント表の6項目はいずれも選択項目となり、円滑な事業執行に必要と判断した場合に活用項目が選定されます。

例えば「(3)対外説明」では、円滑な合意形成を必要とする場合や「(5)4Dモデルによる施工計画等の検討」では現場で切り回しが多く発生する場合など、その業務において効果が高く生産性向上が見込めるような項目が選択されることになります。

BIM/CIM 工事のリクワイヤメント

工事では、下図のリクワイヤメント表の4項目はいずれも選択項目で「(3)リスクに関するシミュレーション」「(4)対外説明」は業務と同じです。工事におけるBIM/CIM適用では、「3次元モデル成果物作成要領(案)」に基づく成果品がある場合、これを用いた設計図書の照査、施工計画の検討が令和4年度から必須となります。

「(1)BIM/CIMを活用した監督・検査の効率化」や「(2)BIM/CIMを活用した変更協議等の省力化」は、例えばリモートを利用した現場臨場であったり、監督員が検査などを行う際の省力化・効率化が見込まれる場合に選択されることになります。

BIM/CIM活用ガイドライン

今年度のBIM/CIM関連の基準・要領は下記サイトに掲載されています。

国土交通省 BIM/CIM関連基準・要領等(令和3年3月)

例年と同じく数多くの基準・要領が改訂されているため、目を通すだけでもひと苦労ですが、その中でもぜひ読んでおきたいのが「BIM/CIM活用ガイドライン(案)令和3年3月」です。

これまでの「CIM導入ガイドライン(案)」が全面再編された「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」ですが、今回の改訂で「事業の実施に主眼を置き、各段階の活用方法を示す」内容が新たに盛り込まれています。読んでいただくと分かりますが、対象工種ごとの活用事例が紹介されており、BIM/CIMの活用目的やリクワイヤメント項目選定の参考とすることができます。

設計段階のBIM/CIM活用事例

ここからは、BIM/CIM活用ガイドラインから設計段階のBIM/CIM活用事例をご紹介します。

景観検討での活用事例

坑門工の検討において、2次元図面により行っていたものをBIM/CIMモデルを活用して実施した事例です。3次元モデルにより坑口およびその周辺の形状や色彩等が分かりやすく、景観性を容易かつ迅速に判断・評価することができます。業務のリクワイヤメント項目「(1)設計選択肢の調査」に当たる活用事例ですね。

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現地踏査での活用事例

現地踏査で確認した高圧線や地下埋設物をモデル化して活用した事例です。設計図書に基づいた設計範囲と現地との整合性、自然状況や沿道や交差点、用地条件等の把握などにBIM/CIMモデルを活用しています。業務のリクワイヤメント項目「(2)リスクに関するシミュレーション」は、このようなイメージになりますね。

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関係機関との協議資料作成での活用事例

関係機関との協議用資料にBIM/CIMモデルを活用した事例です。BIM/CIMモデルでより分かりやすく事業計画を説明でき円滑な合意形成が図れる、業務のリクワイヤメント項目「(3)対外説明」に当たる活用事例です。

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数量計算での活用事例

BIM/CIMモデルを活用して数量算出を行った事例です。算出した結果等はBIM/CIMモデルの属性情報として付与しています。業務のリクワイヤメント項目「(4)概算工事費の算出」はこのようなイメージになります。

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施工計画での活用事例

施工ステップの各段階の3次元モデルに時間軸を設定して、施工手順を可視化した事例です。これは、業務のリクワイヤメント項目「(5)4Dモデルによる施工計画等の検討」に当たります。

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施工段階のBIM/CIM活用事例

BIM/CIM活用ガイドラインから施工段階のBIM/CIM活用事例をご紹介します。

施工管理(品質、出来形、安全管理)での活用事例

法面工の出来形管理において、点群データやBIM/CIMモデルを活用してPC上で出来形計測や監督検査を実施した事例です。工事のリクワイヤメント項目「(1)BIM/CIMを活用した監督・検査の効率化」に当たる活用事例ですね。

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設計図書の照査での活用事例

前工程から引き継がれたBIM/CIMモデルを参照・確認して、設計条件と施工条件に不整合がないか設計図書の照査に活用した事例です。工事のリクワイヤメント項目「(2)BIM/CIMを活用した変更協議等の省力化」は、このようなイメージでしょうか。

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最後に

本年度改訂された「発注者におけるBIM/CIM実施要領(案)令和3年3月」では、発注者の役割として「事業実施にあたり、活用目的を踏まえBIM/CIM活用項目を選定し要求事項(リクワイヤメント)として整理する」ことや「発注図においてBIM/CIMの活用目的、項目等を明記する」ことなどが規定されました。

これまで受発注者協議で活用方法を決める流れだったものが、これからは発注者主導に転換していく方向性が示されたものといえますね。

今後は「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」をヒントにしながら、発注者・受注者がBIM/CIMの活用目的を考え、リクワイヤメントに対応していくことになりそうです。