三次元CADシステムを導入。製品の開発ロスを削減し導入費用の早期回収を実現する

NECプラットフォームズ株式会社

NECプラットフォームズ株式会社は、電気通信機器や、事業所用電話システム、POS、IDカードシステムなどを製造する。国内のほか東南アジアや欧米など海外にも拠点を持って製造・販売活動を行っている。同社では、設計部門がある三事業部の開発・設計現場で、CADシステムの統合化や標準化を行うため、新たに3次元CADと構造解析ツールを導入した。導入後、短期間で設計業務の効率化と品質向上を図ることに成功した。

本ページは大塚商会が発行している 「αソリューション」 から転載したものです。

3次元CADの導入により、事業部間のデータ共有、また外部発注の際にもロスなく業務が進行する

3次元CADの導入により、事業部間のデータ共有、また外部発注の際にもロスなく業務が進行する

導入事例の概要

導入の狙い

  • 開発設計期間の短縮、製品品質向上

導入システム

  • 3次元CAD『SolidWorks』
  • 構造解析ツール『COSMOS/DesignSTAR』
  • 熱解析ツール『COSMOS/Floworks』
  • 製品情報コラボレーションツール『SMARTEAM』

導入効果

  • 設計期間のトータルな時間短縮を実現
  • 試作品の製作期間と費用を大幅に圧縮

ユビキタス社会の発展とともにさまざまなソリューションを展開

NECプラットフォームズ株式会社は、1918年に日本電話工業株式会社として創業され、2001年には、NEC インフロンティア株式会社と社名を変更した。国内はもちろん、東南アジアや欧米などの国外にも拠点を持ち、ユビキタス社会の発展に合わせて、電気通信機器や、事業所用電話システム、POS、IDカードシステムなどの製造・販売を行ない、国内はもとより、海外にも幅広いマーケットを築いている。

同社は、iコミュニケーションシステム、iアプライアンス、iソリューションの三つのセグメントで事業展開している。 iコミュニケーションシステムでは、ネットワーク系システムを中心に、キーテレフォン(事業所用電話システム)、無線機器、セキュリティ機器、および単独電話機等で事業展開している。そして、IP通信、モバイル通信、ブロードバンドによるユビキタス環境を実現するため、VoIP、無線LANなどの各種IP データ通信の対応製品の開発を行なっている。

iアプライアンスは、業種・業態に最適なPOS端末、業務用PDA、Web端末、デビット・クレジット端末、各種ワイヤレス端末、およびバーコードリーダやICカードリーダ/ライタ等、多様な端末機器を提供する。iソリューションでは、インターネット・モバイル等、IT を駆使してさまざまな業種業態に向けて最適なシステムソリューションを提供している。特に、中小規模事業所に向けた、コンパクトで導入が容易なビジネスのベースとなる最先端のネットワークソリューションの実現を得意としている。

そして、iアプライアンスとiコミュニケーションシステムは、ハードウェアも開発しており、それぞれの事業部で構造設計部門を設置している。今回、この二つの事業部門で、CADシステムの全面リプレースを行なった。

旧ソフトのサポート終了と開発工程のロス解消のため3次元CADソフトを導入

CADシステムの導入の経緯について、同社 iコミュニケーション事業部 構造開発グループ主任の中野博光氏は、「まず、iコミュニケーションシステムで利用していたCADソフトのメーカー販売が終了し、サポートもできなくなるということで、CADソフトの入れ替えを急遽行う必要がでてきたのです」と語る。

新しいシステムに対する条件は、誰もが使い慣れたWindowsのシステムで稼働するということと、操作性が高いものであるということだった。それまで使用していたCADソフトはハイエンド用のものだったが、外部の協力会社との設計データのやり取りがうまくいかなかった。このため、汎用性が高いものにしたいとの考えがあった。

同社では、機器の開発設計を行なった後、外部金型メーカーに金型製作を発注する。従来は基本設計を行なった後、図面を起こして試作のための金型製作を外部に発注していた。同社 iコミュニケーション事業部 構造開発グループ マネージャーの徳永光博氏は、「金型メーカーに製作を依頼した後に、構造に関する問題が発見されて、せっかく作った金型を改造することもあり、製作のコストも時間もロスしていました」と語る。

中野氏も「試作品を作る場合、図面を作成し、モデル屋さんにその図面を渡して、手作業で作ってもらっていました。この方法だと、電話機一台の試作品を作るのに、3~4週間かかるのです」と同様に語り、製品の開発プロセスに課題を抱えていた。

iコミュニケーション事業部 構造開発グループ マネージャ 徳永 光博氏

iコミュニケーション事業部 構造開発グループ マネージャ 徳永 光博氏

「構造に問題が発見されて、せっかくつくった金型を改造することがあり、製作のコストも時間もロスしていましたが、それもなくなりました」

iコミュニケーション事業部 構造開発グループ 主任 中野 博光氏

iコミュニケーション事業部 構造開発グループ 主任 中野 博光氏

「大塚商会殿が短縮したCADの教育プログラムを作っていただいたので、システム導入後1、2カ月で設計作業を始めることができました」

新しいCADシステムを短期間の教育で実践投入

同社は、こうした業務課題の解決のため、いくつかのCADソフトを集めて、導入の検討を行った。その結果『Solid Works』が上記の条件をもっとも満たしているということで導入が決定した。

また、導入先のベンダーとしては、システム導入のサポートだけではなく、ソフトの利用法についての教育体制も整っているということから、大塚商会を選定した。

システムの導入にあたっては、大塚商会の教育サービスが大いに役立ったようだ。中野氏は次のように語る。「アプリケーションの操作法は、大塚商会殿に教育プログラムを用意していただきました。通常は一週間程度かかるプログラムが用意されるようですが、当社用に3日から5日程度に短縮した特別プログラムを作っていただきました」。そして、同社の設計担当者全員が大塚商会の教育スクールに通い、基本的な教育プログラムを受けた。その後は、On the jobで実務作業を行いながらサポートを受け、新しいシステムをマスターしていった。その結果、「システムの導入後1カ月から2カ月後には、新しいシステムでの設計作業を始めることができました」と中野氏は教育プログラムの効果を語っている。

事業部間の開発・設計現場で、CADシステムの統合化や標準化を行っている

事業部間の開発・設計現場で、CADシステムの統合化や標準化を行っている

とはいえ、初めての3次元データの取り扱いには、戸惑う点も多かった。そうした点について中野氏は、「例えば、紙の図面の場合、設計図上の寸法に対して、どこまで誤差を許容するかという寸法のレンジ幅である『寸法公差』を記入するようになっています。ところが3次元CADの場合は、そうした寸法を入れられません。それで、3次元データの場合はレンジ幅ではなく、センター値を使うことにしました。不明な点は、大塚商会殿のサポートに聞きながら、さまざまな取り決めを作っていきました」と、試行錯誤しながら、3次元CAD活用のための新しい業務ルールを決めたことを語る。

同社が製造・販売する製品群

同社が製造・販売する製品群

3次元CADで設計期間を短縮。構造解析ツールで品質管理も

社内的には、初めiコミュニケーションシステムでの導入が先行し、その後、iアプライアンスでも同種システムの導入を行った。これにより、事業部間におけるデータのやり取りは非常に楽になり簡易になった。また3次元で作成するため、視覚的に理解できチェックも容易になったため、単純ミスなどが激減した。希望していた汎用性の高い3次元CADであるため、設計データが外部に、互換性の良い中間ファイルとして渡せるようになり、設計期間はかなり短縮された。

製作プロセスの時間と費用の課題についてだが、この点について中野氏は「試作品製作に3~4週間かかっていたのが、今は3次元データを利用すれば、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)の光造形で作ることができるのです。これにより試作品は、約一週間で完成するようになりました」と語っており、3次元CADが開発期間の大幅な短縮に寄与している。

また、設計したデータの構造解析を同時に行うため、『SolidWorks』のデータをそのままデータ連携できる構造解析ツール『COSMOS/Design STAR』と熱解析ツール『COSMOS/ Floworks』も導入した。徳永氏は導入の目的について、次のように語る。「構造設計の品質を上げるために、それまでカンと経験に頼っていました。せっかく3次元CADを導入したのですから、強度や熱についての品質管理を、数値的に把握しようと考え、3次元CADのモデルデータを読み込んで、構造解析を行うシステムの導入を検討しました」。

導入にあたっては、『SolidWorks』との親和性が高いものを、ということで自然とCOSMOSに決まった。このツールに関しても、大塚商会が教育を行った。COSMOSのウィザードを使っていけば、自然と解析ができる簡単なインターフェイスであるため、ユーザーから高い評価を受けている。

二つの『COSMOS』の導入成果について、徳永氏は「『COSMOS』を使えば、金型メーカーにデータを出す前に構造解析ができます。製作工程でのコストと時間的ロスもなくなっています。導入効果を以前の製作ロスとの比較で試算すると、導入費用が3カ月で還元できたことになります」と語る。

また、一つの製品機器をパーツにわけ、複数の人間で設計する場合がある。それぞれの設計データの整合性をとることができる製品情報コラボレーションツール『SMARTEAM』も導入・活用している。設計データを中心とした製品情報の効率的な管理・運用に効果を発揮している。

『SolidWorks』をはじめとする、3次元CADシステムの導入で、大幅な業務改善に成功した同社は、これからも、教育サービスを含む大塚商会の幅広いサービスを利用しながら、より効果的なシステム運用を続けていく予定である。

NECプラットフォームズ株式会社

業界製造・販売
事業内容電気通信機器、事業所用電話システム、POS、IDカードシステムなどの製造・販売、設置、アフターサービスまでのトータルなサービス提供
従業員数3,292人(2005年3月期連結)
サイトhttps://www.necplatforms.co.jp/product/