株式会社バンダイ
キャラクターを核としたさまざまな商品サービスで市場をリードする株式会社バンダイ。栃木県にあるエンジニアリングセンターでは、早くから3次元CADを導入し、『SolidWorks』の導入後は、既存の3次元CADとうまく使い分けながら設計部門において大幅な効率化とスピードアップを実現。同時に、金型設計においてソリッドワークス社のパートナー製品である金型3次元立体設計モジュール『NeoSolid Mold』『NeoSolid 3Dcam』を導入し、設計から金型製作までの3次元データの一元化を実現している。また、初心者でも扱いやすい『SolidWorks』は、人材育成の重要なツールとしても有効活用されている。
本ページは大塚商会が発行している 「αソリューション」 から転載したものです。
3次元CADの導入により、業務の大幅な効率化とスピードアップを実現。3次元データを共有することで、設計部門のみならず関連部門を含む組織全体としての生産性向上と品質向上にも努めている。
導入事例の概要
導入の狙い
- 設計から金型製作まで3次元データを共有できる環境の整備
導入システム
- 3次元CAD『SolidWorks』および『NeoSolid Mold』
- 3次元CAM『NeoSolid 3Dcam』
12年前から3次元CADを導入開発スピードの向上を図る
同社のエンジニアリングセンターは、主にキャラクター玩具の開発設計および金型製作、海外の生産対応まで行っている。現在のメインキャラクターは、テレビ朝日で毎週日曜日の午前7時半より放映されている『戦隊シリーズ』、8時より放映されている『仮面ライダーシリーズ』で、根強い人気を誇る『機動戦士ガンダムシリーズ』の商品もここから生み出されている。商品開発の流れは、デザイナーによって描かれたスケッチ画をもとに立体的な商品をイメージした設計を行い、それをもとに金型を製作。金型については、OEMで他企業の金型製作も行っている。そして、完成した金型は大半が海外の生産拠点に送られ、同社の品質管理下のもとで次々と製品化されている。
同社CS部ゼネラルマネージャー兼エンジニアリングセンター センター長の片瀬健二氏は、「当センターは、もともと玩具輸出工業団地として誘致された経緯があり、最盛期には玩具メーカーの大半がここで仕事をされていて、当社でも400名の社員で開発から製造まで行っていました。当初より玩具メーカーは協力会社への製造委託が中心で、内生比率は20~30%でしたね。現在、約80名の社員が開発・設計・金型・購買・管理チームに分かれて効率的に仕事を行っています。当然の流れとして、玩具業界は他の業界と違って海外生産へのシフトもすごく早かったですね。というのも、日本の外注に出すか、海外に出すかの違いだけですから。特に玩具業界では、90%以上が中国で生産されているのが現状です。これは日本だけではなく、アメリカを含めた世界的な傾向なのです。当社が取引きしている中国の生産拠点だけで200社くらいあります。その一方で、玩具は開発設計期間がすごく短くて、短いものは2カ月くらいで、一番メインのものでも3カ月半くらいで製品化しなければなりません。
当エンジニアリングセンターでは、昨年だけで年間70アイテムくらいを生産し、金型数は約500点にも上ります。一般的には、人気の出たキャラクターを商品化していくイメージがあると思いますが、当社の場合は、テレビ放映と同時か、あるいは、それよりも先に開発に取りかかる場合もあります。このあたりが、当社が得意とするキャラクターマーチャンダイジングの特長でもあります」と語る。
同センターでは、1991年からハイエンドの3次元CADを取り入れた製品・金型設計に取り組んでおり、社内の各事業部や協力メーカーとのデータのやり取りなどで、早い段階から3次元データを使いこなしていた。ところが、データ変換の手間やデータ修正の問題が発生し、工数のロスにつながっていた。そこで、1998年に新たに『SolidWorks』を導入。現在は、設計部門で主に『SolidWorks』を活用するとともに、金型設計・製造では、金型3次元立体設計モジュール『NeoSolidMold』・『NeoSolid 3Dcam』を導入し、設計から金型製作までデータを一貫して利用できる環境を整えている。
CS部ゼネラルマネージャー 兼エンジニアリングセンター センター長 片瀬健二氏
「設計から金型製作まで一気通貫でデータ共有できるようになりましたが、今後のテーマは全社組織で3次元データを活用していくことです。大塚商会さんに関しては、ユーザーの要望をメーカーに伝えるインタフェース機能の強化に期待しています」
『SolidWorks』で設計から金型製作までデータを一元化
玩具業界でいち早く3次元CADを導入した経緯について、片瀬氏は、「3次元CADを導入したのは、単に合理化のためではなくて、よりよいものを作り上げるためでした。特に当社の場合は、専門的な設計ノウハウよりも発想力豊かなデザイン性を重視しますから、導入時のスタッフも20代の若手が中心で、新しいものを積極的に取り入れようという姿勢が、3次元へうまく移行できた要因だと思いますね。それ以前は2次元CADを使っていたわけですが、2次元データからCAMを走らせるプログラムを自前で開発しました。当時、それを売って欲しいというベンダーさんもいたくらい注目を集めましたね。結局、お売りしませんでしたけど。その後、製品設計で3次元CADに100%移行したのが5年くらい前です。ただ、フィギアなどは3次元CADを使っていたら時間がかかってしかたがないので、アイテムによって試作造形設計と使い分けています」と語る。
数ある3次元CADのなかで『SolidWorks』を選定した理由については、「12年前の当時は、ハードを含めて1台2000万円くらいするハイエンドのものしかなかったわけですね。その後、2次元CADと併用しながら使っていたのですが、4、5年前に金型工場としての機能を強化することになり、それを機に、新しい3次元CADをもう一度選定しようということになったのです。そこで、できるだけ設計から金型製作まで一気通貫でデータ共有できるようなツールはないかと探しました。
そのなかでコンペを行った結果、最も適していたのが『SolidWorks』でした。操作自体が馴染みやすく、CAD操作の習熟スピードが既存の3次元CADに比べて格段に早いことが決め手になりました」と語る。
さらに、キャラクター玩具という製品特性上、画面上での色付けにも優れていることもポイントだった。同社の製品は、小さい部品でも3次元形状を持つものも多く、データが比較的重くなりがちで、『SolidWorks』はまだまだ操作レスポンスには改善の余地はあるという。
また、実際の導入に際しては、大塚商会をパートナーに選定。『SolidWorks』と『NeoSolid Mold』の導入設置や初期の運用指導などを大塚商会がソリッドワークス社と連携して行い、ソフトおよびハードの総合的なサポート体制が期待できる点が大きなメリットだった。
初心者でもすぐに扱える『SolidWorks』で人材育成
現在、同センターでは、『SolidWorks』25台と『NeoSolid Mold』6台、『NeoSolid3Dcam』7台を導入。この結果、金型設計や製造などの後工程へデータがスムーズに運ぶようになり、データの品質や作業効率が大幅に向上している。また、既存のハイエンド3次元CADとの併用体制で、それぞれ製品や設計する内容によって使い分ける工夫も行っている。各プロジェクトに参画しているスタッフの習熟度合いやモデリングの内容などに応じて適材適所で最適な3次元CADを活用し、既にスタッフの大半が複数の3次元CADを扱えるという。特に『SolidWorks』に関しては、初心者でもすぐに扱えるようになることが大きなメリットだ。
3次元CADで設計したデータをもとに金型を作成。設計から金型製作までの3次元データの一元化が可能
同センターでは、次世代を担う人材育成にも力を注いでおり、自社内に設計スクールを立ち上げ、技術のボトムアップと設計スピードの高速化に取り組んでいる。今後はスクールの公開と教育素材(人材・設備)の提供による異業種企業向けの短期研修や長期研修も予定している。「設計スクールのプロジェクトについては、大塚商会さんとソリッドワークス・ジャパンさんのテクニカルサポートに協力してもらいながら進めています」と片瀬氏は言う。
また、人材育成の一環として取り入れたインターンシップ制度でも『SolidWorks』が活用されている。参加した学生は2週間にわたる開発プログラムにおいて『SolidWorks』によるモデリングや3次元データをもとにしたCAMデータの作成、試作モデルの製作までを経験するもので、非常に好評だという。「一昨年から実施しているのですが、特に学生の採用を意図したものではありません。玩具メーカーでもこのような充実した設備で開発を行っているのだということを知っていただいて、それによって新入社員の応募が増えればそれに越したことはないという感じですね。デザイン画をもとに自分たちで設計して試作モデルまで仕上げていくのですが、これまでCADに接したことのない文系の学生も多く、第一回目に参加した男子は昨年4月に採用になりましたが、彼もそのひとりです」と語るように、習熟スピードに優れる『SolidWorks』が人材育成を支える重要な柱になりつつある。
今後は組織全体を視野にさらなる生産性向上を目指す
さらに同センターでは、3次元CADを導入した開発・設計部門のスピードアップと効率化だけに留まらず、生産管理や品質管理などの関連部門が3次元データを共有することで、組織全体としての生産性向上と品質向上にも努めている。
「これまでは『SolidWorks』などを導入して設計部門の効率化を図ってきましたが、そこだけ改善してもだめなんですね。生産管理や品質管理などを含めれば、大勢の生産スタッフがいるわけですから、彼らが3次元データを有効活用できる環境にしないと意味がないわけです。むしろ、これからは会社全体として、いかに3次元CADの情報を活用できるかが重要なポイントだと思いますね。そのため、現在、統合管理システムを導入しています。いわば3次元CADのデータをいろいろな形で活用するためのデータベース環境です。橋渡し役となるツールを用意して、生産技術に携わるスタッフが通常のパソコンの画面上で3次元CADのデータを共有しながら同時に作業が行えるようにしたいと考えています。特に図面の最新版管理がコンピュータ上で確実に行えるようになると期待しています」と片瀬氏は今後の展望を語る。
このように同社では、部分最適化から全体最適化を図ることで、開発工程全般におけるさらなる効率化とスピードアップ、品質向上に積極的に取り組もうとしている。その先進的な取り組みは、新製品の短期開発が求められる玩具業界において大きな注目を浴びている。
株式会社バンダイ
業界 | 製造 |
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事業内容 | キャラクターを核としたさまざまな商品の製造・販売ほか |
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従業員数 | 806名(2002年9月30日現在) |
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導入アプリケーション | SolidWorks、NeoSolid Mold、NeoSolid 3DCam |
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サイト | https://www.bandai.co.jp/ |
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株式会社バンダイのキャラクター玩具の開発・設計を行う同社エンジニアリングセンター。