三信化工の業態をお聞かせください。
三信化工は、業務用・給食用食器の製造販売を行う会社です。保育園、学校、病院、高齢者施設等で給食用に使われる食器を企画製造し、代理店を通して販売しています。特に強みがあるのは学校給食用食器で、業界のトップシェアを誇っています。
港区新橋に本社、全国に10カ所の営業所があり、ここ千葉県成田市には工場と物流センターがあり、商品開発も工場内にあります。社員数は合わせて114名です。
三信化工株式会社
給食用プラスチック食器の大手メーカー三信化工では、SolidWorksと切削RPマシンを活用して試作品を内製、開発コストと期間短縮に成功している。「食器」という分野で3次元CADがどのような役割を果たしているのか。同社商品開発部の加藤氏に詳しく聞いた。
三信化工の業態をお聞かせください。
三信化工は、業務用・給食用食器の製造販売を行う会社です。保育園、学校、病院、高齢者施設等で給食用に使われる食器を企画製造し、代理店を通して販売しています。特に強みがあるのは学校給食用食器で、業界のトップシェアを誇っています。
港区新橋に本社、全国に10カ所の営業所があり、ここ千葉県成田市には工場と物流センターがあり、商品開発も工場内にあります。社員数は合わせて114名です。
給食用食器のデザインには、どのような条件が求められるのでしょうか。
三信化工の製品には、大きくわけて、学校用と病院・高齢者施設用がありますが、この二つのデザインは大きく異なります。
まず、学校給食用の食器に求められるのは「シンプル性」そして「スタック性」です。スタック性とは、「たくさん積み重ねられること」です。保管時だけでなく、学校給食の食器はかごに入れて持ち運んだり、食器洗浄機に入れやすいコンパクトな形状が大事です。
しかし最近では小中学校の生徒数の減少により、これまでの実用性重視から、かわいらしさ、やさしさなどのデザイン要素が求められるようになりました。例えばスープ用の食器にしても、従来型のすりばち状のものから、丸みのあるお椀型のものがトレンドになっています。
また、材質についても変化してきています。これまでのプラスチック製食器はカレーやケチャップなどの着色汚れや、細かい傷がつきやすいことが弱点でしたが、当社のヒット商品「E-エポカル」は、世界で初めてPEN樹脂(ポリエチレンナフタレート)を採用し、着色汚れや傷に強い上、リサイクル可能という、食器としてはほぼ理想型に近いため、最近では従来のものから「E-エポカル」に買い換える学校が増えています。
一方、高齢者施設用の食器は、シンプルなデザインではなく、複雑なデザインが好まれます。施設規模も学校と比べて小さいため、スタック性もさほど重視はされません。
高齢者用の食器デザインに求められるものは、以下三つです。
特に3番目の「陶器に近いもの」という点がデザインをする上での一つの指標になります。高齢者施設の入所者は本来ならば陶器で食べたいところを、落としても割れないプラスチック食器を選んでいただいている状況があります。シンプルすぎると味気なくなりますから、割烹などで使われる高級食器を参考に、食の楽しみを味わっていただけるようなデザインにしています。
三信化工ではSolidWorksをどのように使っていますか。
SolidWorksは2005年3月に導入しました。その年の12月にはローランドDG社製の切削RPマシンを導入し、試作品を社内で製作する体制が整いました。2007年5月、そして今年(2009年)2月にも増設し、現在4台のSolidWorksを使用しています。全て3次元で製品設計を行っているのではなく、これまで使用していた2次元CADと併用しています。
三信化工が3次元CADを導入した理由を教えてください。
三信化工が3次元CADを導入した最も大きな理由は「新製品決定の迅速化」のためです。
三信化工の食器ユーザーはお子様や高齢者、入院患者の方ですから、「安全であること」「使いやすいこと」が最も重要です。
三信化工では、毎年数十点の新製品を発売しており、新製品を出すにあたっては毎回食器の形状を社内でよく検討します。持ちやすいかどうか、置いて倒れないかどうかなどについて、これまでは平面図で検討していましたが、平面図では製品イメージがすぐにわかず、特に上層部の承認を取るのに非常に時間がかかっていました。
新しい形状のものに関しては試作品(木型)を作っていましたが、木型の職人さんによる手作りの木型は、納期に1~2週間、コストも一つにつき数万~数十万もかかっていました。SolidWorks導入の直接のきっかけとなったのは、この職人さんが高齢のため廃業するという知らせを受けたことでした。
社内で検討した結果、3次元CADと切削RPマシンを導入して試作品を内製しようということになりました。3次元CAD製品選定に当たっては三つの製品を見比べた結果、製品機能に比べて導入しやすいコストであるという点でSolidWorksに決定しました。
新製品の食器ができるまでのプロセスを教えてください。
まず始めに行うのは製品企画です。商品開発部がそのときのトレンドなどを考慮し、「こんな製品がよいのでは」というアイデアを出します。時には現場でお客様と直接接している営業担当からの意見も参考にし、製品コンセプトやサイズ、生産個数を決めておおまかなデザインをします。その後予算が取れたらそれを SolidWorksで設計を行います。
デザインが決まった後はどうするのですか。
SolidWorksの3次元データをCAMソフトに送り、切削RPマシンで樹脂製の試作品を作ります。先ほども述べた通り、できあがった試作品を実際に見ながら、持ちやすいかどうか、つかみやすいかどうかなど最終形状を社内で検討します。上層部のOKが取れたあと、金型の製作を発注し、量産となります。
金型が出来上がるまでには1カ月ほどかかりますので、その間、色を検討します。
次に製品テストです。衛生試験、落球試験、高熱の洗浄に耐えられるかどうかの耐熱試験、着色試験など各種の試験を行います。着色試験はカレー、タバスコ、ケチャップ、からしなど着色しやすい食材を入れて一定期間放置をしておくので最も時間がかかります。その試験結果はカタログの製品説明に明記されます。
商品のネーミングも非常に大事です。企画段階から考えるものの、なかなか良い名前が浮かばずぎりぎりまで決まらないこともよくあり苦労するところです。色の名前そのままの「グリーン」とか、開発時のコードネームをそのまま使ってしまったりすることもあります。社内でアンケートをとったり、営業の人に売れそうかどうかを聞いたりして社内全体で考えるようにしています。
SolidWorks、および切削RPマシンの導入効果を教えてください。
導入効果は以下三つです。
SolidWorksおよび切削RPマシンを活用することで、導入の最も大きな目的であった「検討期間の短縮」を実現することができました。これまで1~2週間かかっていた試作が切削RPマシンを使うことで1日から2日でできるようになり、開発期間が大幅に短縮しました。
私は今まで別の部署におり、3次元CADどころか2次元CADも扱ったことがなかったのですが、大塚商会で操作の基礎講習を受けただけで今では設計業務を行っています。操作が分かりやすいので、私のような新人でも先輩を見本にして半年たらずで覚えて設計業務に携われるというのはすごいことだと思います。
「抜き勾配チェック機能」や応力解析など、SolidWorksの機能によってこれまで時間のかかっていたことが簡単にできるようになりました。
「抜き勾配チェック機能」は一番よく使っています。形状が複雑なデザインは、金型から抜けない場合もあります。これまで金型が抜けるような形状にする方法については金型屋さんに相談してお任せしていたところですが、この機能により、社内で事前に抜けるかどうかチェックし、ある程度固めてから金型屋さんにお渡しできるので、金型の作り直しのリスクが大きく減りました。
また応力解析(SolidWorks Simulation)も活用しています。食器の強度を確保するためにリブを使う場合が多いですが、解析によって、リブ形状の最適な厚みや高さを割り出すことができるようになりました。計算結果の画像は製品紹介のカタログにも掲載されていて商品の安全性のアピールに役立っています。
商品開発部 加藤世二氏
「わずか半年ほどで操作を覚えることができました」
大塚商会の評価をお願いします。
大塚商会は2次元CADを導入したときからのお付き合いで、今回3次元CADと切削RPマシンを導入するにあたって親身に相談に乗っていただきました。大塚商会を評価する点は以下三つです。
大塚商会のサポートはレスポンスが早いのでよいと思います。切削RPマシンのメーカー(ローランドDG社)との連絡体制もよくできており、2回ほど私の入力ミスで調子が悪くなった時には大塚商会がすぐに連絡をしてくれました。その後メーカーから電話がきて修理をしていただき、すぐにまた使えるようになりました。
「たよれーる」の電話サポートは、対応もきちんとしているし、電話のヒアリングによって「その場合はこのようにしてください」という指示だけで直ることもあります。何か分からないことがあってもすぐに解決するので便利です。
三信化工では、水道橋の大塚商会本社で行われる4日間の基礎講習をSolidWorksの使用者全員が受けることになっています。その後はみな実践でそれぞれの設計分野で必要なことを使いながら覚えています。随時社内の各設計者同士情報共有を行って、それぞれ使っている機能を教え合ったりして試行錯誤しながら技術を磨いています。それができるのも、講習によって全員が基本的なことを習得しているため、知識レベルが統一されているからだと思っています。
今後の展望をお聞かせください。
三信化工では、これからもあらゆる食のシーンを想定し、快適かつ安全に使っていただける食器のデザインを模索し、挑戦し、作り続けて行きます。現在はまだ 2次元設計との併用ですが、今後は完全3次元化を目指していきます。SolidWorksおよび大塚商会には今後もお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。