株式会社中部コーポレーション
アイススライサー、アイスクラッシャーなど電動氷削機のパイオニアである中部コーポレーションは3次元設計への再挑戦としてこのたびSolidWorksを導入。大塚商会によるコンサルティングを活用してわずか1年足らずで新製品の開発に成功した。同社機器開発室の安田室長、石川氏にSolidWorks による製品開発について詳しく伺った。
中部コーポレーションの業態~桑名の鋳物業からスタートした氷削機のパイオニア
中部コーポレーションの業態を教えて下さい。
中部コーポレーションは業務用調理器および建材の製造販売を行う会社です。鋳物の町として知られるここ桑名で1942年に創業、鍋・釜などの鋳造から始まり、1949年にかき氷機の製造を開始しました。当時のブランドであった「白雪」(現在は「初雪」))と書かれた手動式のかき氷機を海の家などで見たことがある方も多いのではないでしょうか。
今では一般的になった「フラッペ」という呼び名も、もともと中部コーポレーションが作った言葉です。昔、かき氷は夏場の海の家が主な販売場所でしたが、これを喫茶店でも販売してもらおうと、一貫氷ではなく製氷機のキューブアイスでもかき氷が作れる氷削機を開発、「フラッペ」という新しい名前も考案し、メニューごと提案する形で全国に販路を広げていきました。現在、アイスクラッシャー、アイススライサー合わせて年間25,000台を販売するほか、その他さまざまな調理器、厨房機器を扱っています。
また、長年培った鋳造技術を活用してグレーチング、ルーフドレン、マンホールカバーなどの建材の製造を行っており、こちらも大きく売上げを伸ばしています。社員数は266名 (平成20年4月現在)、売上高は88億円(平成18年度)です。
1951年製造の動力式かき氷機「白雪」
最初の3次元CAD導入がうまくいかなかった理由
中部コーポレーションではSolidWorksをどのように使っていますか。
SolidWorksは2008年6月に4台導入し、現在8台を製品設計に使っています。
実はSolidWorksを導入する6年ほど前、別の3次元CADの製品Aを導入しましたが、残念ながらあまり活用できていませんでした。
しかし今回のSolidWorksの導入は非常にスムーズでした。先日、SolidWorksで設計した初めての製品である「アイスクリーマー」の開発が終了し、まもなく出荷を迎えます。
前回の3次元CAD導入はなぜうまくいかなかったのでしょうか。
私は前職でSolidWorksを使っており、その良さを知っていたため、3次元CADを導入することになったときにはSolidWorksをと思っていました。しかし選定の際、製品AがSolidWorksと比べて値段が半分以下だったこと、それまで使用してきた2次元CADとの互換性がよかったことに加え、担当者に「どの製品も大差はありません」と言われたことで社内での協議の結果、製品Aの導入が決まりました。
しかし、実際に製品Aを使ってみると、サーフェス機能が弱いだけでなく操作の面でも使いにくく、3次元化が社内で定着するにはかなり厳しいものがありました。その後、3次元化推進を担当していた私が中国に出向することになったため、3次元化は保留の状態になっていました。
2008年になって私が4年ぶりに中国から本社に戻っても状況はあまり変わっていませんでした。その間中国や東南アジア諸国では3次元CADが常識化しており、それもSolidWorksのシェアが大きかったことから、今度こそSolidWorksを入れようということで稟議を上げ、導入が決まりました。
導入後は基本操作のスクールに加えて1カ月半から2カ月ほど業務ルール、採番ルール、設計ルールおよびアセンブリ手法について、大塚商会のコンサルティングを受けました。また、当社の設計者には3次元CADの経験者も複数いたため、導入後すぐに設計を開始することができました。
機器開発室 取締役 室長 安田典充氏
「中国から帰ってすぐにSolidWorks導入を行いました」
導入後1年足らずで新製品を開発
SolidWorksで設計した新製品「アイスクリーマー」の開発がどのように行われたかお聞かせください。
アイスクリーマーは2008年3月から企画を開始した製品で、有害な冷媒ガス(フロンなど)を使用せず、氷と水と塩のみを使って冷やすエコロジー製品です。自家製アイスクリームをメニューに置くレストラン向けに開発しました。
製品のデザインは売れ行きに影響する非常に大事な部分なのでデザイン事務所に委託しています。今回も社内で機構の部分を設計し、仕様、大きさなどの要求事項を伝えて依頼しました。
デザイナーから6種類ほどのデザイン案が提案され、その中の一つを選び、固めていきました。これまでは試作してからの直しに時間がかっていましたが、今回 SolidWorksでの設計では不具合や干渉などを早い段階で見ることができたため、試作の段階ではほとんど直しの必要がありませんでした。
既存製品のバリエーションではなく、このアイスクリーマーのようにゼロから商品化する場合には、これまで開発期間は2年ぐらいかかっていましたが、今回はその半分以下、1年足らずで量産までを行うことができました。
「アイスクリーマー」のSolidWorksの設計画面(左)と試作品(右)
SolidWorksの四つの導入効果
SolidWorksの導入効果を教えてください。
SolidWorksの導入効果は以下四つがあげられます。
1.量産化までがスピードアップされたこと
試作後の手戻りがなくなっただけではなく、承認手続きがスピードアップされました。これまでは、試作品ができて初めて製造部門、営業部門などの他部署に見せて承認をとっていましたが、SolidWorksではデータの状態でデザインレビューができるからです。これにより量産化するまでを半分の期間に短縮することができました。
2.「好みの形」ができること
例えば、このアイスクリーマーには攪拌のための羽根がついています。よい攪拌のためにはこの形が非常に重要ですが、こういった立体の形を2次元CADではうまく書くことができませんでした。そのため、図面に落とさず直接形状を作って試作をしていました。金型の製作のときにも同様で、再現性に問題がありました。しかし、SolidWorksでは2次元CADのように形の制限がなく、自由に好みの形をモデリングできます。
3.金型製作がスムーズにできるようになったこと
金型業者とのやりとりがスムーズになりました。間違いや手戻り、問い合わせが来ることもなくなりました。
4.設計者のミスがいちはやくチェックできること
管理者側から見ると、できあがった図面のチェックを早い段階でできるということも大きなメリットです。例えば、最初のモデリングではアイスクリーマーの蓋の意匠面に細い溝が入っていたのですが、それだとその溝に水やゴミがたまりやすくなるため、これを溝ではなく段にして掃除がしやすいデザインに変えました。ほかにも、波状の模様の向きが逆だったことに早い段階で気づくなど、図面では気づかない細かいミスが3次元のモデルだと発見しやすくなりました。
設計担当 石川浩太氏
「攪拌のために重要となる羽根の形状が自由にできます」
大塚商会への評価
大塚商会への評価をお聞かせください。
前職の会社でSolidWorks導入したときに大塚商会にお願いしていたのですが、そのとき対応もサポートもよかったので、SolidWorksを導入するなら大塚商会と思っていました。
大塚商会のサポートは非常にいいと思います。設計に関して大抵のことは社内で分かりますが、時には「こんなこと電話で相談して理解してもらえるのかな」、ということも起きます。これまでそんなことが3度ほどありましたが、「たよれーる」の電話で言われた通りに操作すると見事に解決しました。操作方法で分からないときなども気軽に利用しています。
また、営業の方も熱心にやっていただいています。営業なのに技術のことが詳しいので、3次元CAD以外の相談もしています。
今後の展望
今後はSolidWorks製品をどのように活用していくご予定ですか。
製品データの管理のためSolidWorks EnterpisePDMの導入を進めているところです。現在はWindowsのエクスプローラで管理をしていますが、これだとデータの流用がやりにくく不便でした。当社の氷削機は多数種類がありますが、刃物の種類は限られており、また、それに伴う部品も共通のものが多いため、データを簡単に取り出せてかつ安易に変更できないようにするなど、データ流用の効率化が非常に重要です。
また、SolidWorks EnterpisePDMを入れることでチーム設計にも挑戦できます。納期の面でも質の面でも開発力をますます高めていきたいと思っております。
今後は新しい開発に関してはSolidWorksで設計をし、従来の製品についても、部品を新しく改良をするタイミングでSolidWorksを使い徐々に2次元から3次元データに変えていく予定です。SolidWorksおよび大塚商会には今後ともお世話になりますが、どうぞよろしくお願いします。