太洋マシナリー株式会社
大阪市大正区の太洋マシナリーは、80年の歴史を持つ鋳物鋳造機械メーカー。製品の多くが振動機械という同社は、設計段階での解析のためCOSMOSWorksを導入、活用している。同社で設計を担当する皆様に、導入の経緯と効果などについて詳しく伺った。
太洋マシナリーの業態 ~振動機械に強みを持つメーカー
太洋マシナリーの業態について教えてください。
太洋マシナリーは、鋳物鋳造機械メーカーです。鋳物は砂で出来た鋳型により作られます。その砂を固めるための「ミキサー」など鋳物プラント用機械を、注文を受け設計・製造し、機械据え付けから試運転、アフターサービスまでを一貫して行います。1927年の設立以来、鋳造機械ではトップクラスを保ってきました。
ここ20年ほどは、産業廃棄物処理機器にも力を入れています。バネを使った振動で産廃物を搬送・選別する「ハイバウンドスクリーン」、「スーパーフィニッシャー」などが代表的な製品です。
これらの製品の多くに、振動機械が含まれます。耐久力のある大型の振動機械の設計・製造の技術が太洋マシナリーの強みです。
解析ツールCOSMOSWorksを製品設計に活用
太洋マシナリーでは、SolidWorks製品をどのように活用していますか。
太洋マシナリーでは、2006年11月、設計検証ツールCOSMOSWorksを導入、主に振動機械の設計段階での応力解析に活用しています。COSMOSWorksの解析用3次元モデリングのため、同時に3次元設計ツールSolidWorksも導入しました。
振動機械の設計において、解析はどのような役割を果たすのでしょうか。
長期間にわたって振動を繰り返す振動機械は、振動しない機械に比べ、疲労破損(クラック)を起こすリスクがあります。振動によりどの部分にどのような応力が発生するのかを材料力学をもとに計算、解析し、クラックの生じる恐れのある箇所は鉄板を厚くしたり補強材を入れるなど、解析結果を機械の設計に反映させています。
COSMOSWorks導入のきっかけ
COSMOSWorksを導入するまでは、解析はどのように行っていましたか。
計算式が Excel に入れてあり、それを活用する、いわゆる「手計算」で解析を行っていました。
手計算からCOSMOSWorksを導入したきっかけは何ですか。
手計算は手軽にできる反面、構造が複雑なものや過去の経験則が通用しない新製品では、設計段階での解析値と製造後の実測値の乖離が見られ、解析結果の正確性に欠けるという問題がありました。解析値の精度を高めることが大きな課題の一つになっていました。
2005年頃、取引先の鉄鋼会社から解析ソフトというものがあると紹介されました。太洋マシナリーの設計でも使えるかどうか検証を行うため、製造業の技術支援機関である大阪市立工業研究所に行き、製造中の振動機を解析ソフトでテストしてみました。解析値と測定値がよく合っていることが確認できた結果、十分活用できると判断し、さっそく導入するべく製品の選定を開始しました。
解析ソフトと設計ソフト、数製品を比較検討
製品の選定はどのように行いましたか。
マルチベンダーである大塚商会に相談したところ、解析ソフト単体ではなく3次元設計ソフトと連動して使うほうが解析の効率が上がるという提案を受けました。そこで「解析ソフト」+「3次元設計ソフト」の組み合わせで数製品・数パターンの組み合わせで比較検討を行いました。うちいくつかは、メーカーの方に来社いただき製品デモを見せてもらいました。
解析ソフトの選定条件は以下です。
- 設計者が使いやすいこと
- 解析対象:線形応力、振動、伝熱、熱応力
- 解析条件:溶接接合、締結接合、ゴムプッシュピン固定
- データの流用性
3次元CADの選定条件は以下です。
- 3次元設計への移行のしやすさ
- 将来主流となるCADであること
- 使用しやすいこと
- データの流用性
数候補の中で、COSMOSWorksとSolidWorksの組み合わせを選んだ理由は何ですか。
検討した中で最も振動解析に適しているのがCOSMOSWorksであったこと、COSMOSWorks、SolidWorksとも使いやすいソフトであること、同メーカー製品であるため連動性がよいこと、価格が手ごろだったことがこの組み合わせを選んだ理由です。
導入はスムーズに行われましたか。
とてもスムーズでした。導入時に大塚商会による2日間の指導を受けました。これまで電卓、Excelで行っていた計算をそのままソフトに置き換えるだけで基本的な解析の考え方は同じでしたから、初めてのソフトでしたが、すぐに慣れることができました。COSMOSWorksもSolidWorksも、ソフトとしてとても使いやすかったことも導入がしやすかった理由だと思います。
COSMOSWorksでの解析実務において何か特に気をつけていることはありますか。
必要以上に解析時間をかけないようにしています。そのため、2次元図面を3次元化するときには、解析上意味を持たないと思われる部分は省いて、SolidWorksで簡素化したモデルを作って解析を行っています。そうすることで、解析時間は5分から10分ほどで済んでいます。
COSMOSWorksの導入効果
太洋マシナリーが解析にCOSMOSWorksを使うようになって2年がたちました。これまでのところの導入効果をお聞かせください。
太洋マシナリーでは、COSMOSWorksを導入したことにより以下四つの効果がありました。
導入効果1:設計に対する信頼性の向上
手計算で解析を行っていた頃は、解析値の正確性に不安がある場合には、お客様に製品を納入した後にも機械の強度を測定に行くこともありました。COSMOSWorks導入により、製品納入前に正確にシミュレーションができるため、設計に対する信頼性が向上し、万全を期してお客様に製品を納入できるようになりました。
導入効果2:材料コストの削減
材質を決めるに当たっては、どの部分にどれぐらいの鉄板の厚さが必要で、補強材はどこに入れるべきか、これまでは設計者の経験則によって判断していた部分も多く、必ずしも正確なものではありませんでした。COSMOSWorksの解析によって各箇所の最適な材料が割り出せるので無駄がなくなり、材料コストが削減しました。
導入効果3:開発時間の短縮
製品にもよりますが、太洋マシナリーでは、開発は2~3人のチームでおよそ3カ月をかけて行います。COSMOSWorks導入によって、人員は変わりませんが、開発期間を約半分に短縮することができました。大幅短縮が実現できた理由は以下の通りです。
- 設計に不完全な点が生じた場合、手計算の時には考えられる原因について一つ一つ検証していったのに対し、COSMOSWorksでは原因を直感的に特定できる。
- 手計算での解析は、設計から生産部門に移った後も改良のトライアンドエラーが必要だった。しかしCOSMOSWorksでシミュレーションを行うようになってからは、設計部門だけでなく生産部門での工数も大幅に削減した。
導入効果4:製品の性能向上
あるとき、既に設計が固まったものに対しての解析だけでなく、性能向上の研究にもCOSMOSWorksを使えるのではないかと思いついたので、大塚商会に相談をし、やり方を教えてもらいました。これにより、例えば、搬送コンベヤーのバネの動きを何パターンかシミュレーションし、より性能が高い製品づくりに役立てることができました。
解析用ツールの一部としての利用から製品設計にもSolidWorksを活用
ところで、太洋マシナリーでは、COSMOSWorksの活用を機にSolidWorksで3次元設計を始められたとお聞きしました。これについて詳しく教えてください。
SolidWorksを導入したのは、COSMOSWorksを利用する上で2次元のモデルを解析用に3次元モデルにするためでした。しかし、使ってみるとSolidWorksによる3次元設計は「複雑な設計に強い」「2次元設計のスキルのない新人にも使いやすい」など太洋マシナリーの製品設計においても多くのメリットがあることが分かりました。
そこで最近では、鋳造用機械、産廃機械ともに新しい製品の開発にSolidWorksを使うようになりました。今後はSolidWorksの台数を増やしていき3次元設計を拡大していく予定です。
大塚商会への評価
大塚商会への評価をお願いします。
大塚商会には導入時のアドバイスからその後のサポートまで、常に私たちの立場に立った親身な対応をしていただいています。評価する点を具体的に上げれば以下三つです。
評価1:サポートがきめ細やかである
太洋マシナリーは、大塚商会のサポートサービス「たよれーる」を活用しています。導入当初は解析専門の技術の方に頻繁に来てもらって操作方法を教えてもらいました。また、電話、メールによる相談も利用しています。
また、先ほど述べた通り、COSMOSWorksを性能向上のためのシミュレーションに使いたいと相談したときには、こちらの質問に丁寧に答えてもらい新たな使い方を教えてもらいました。
評価2:営業担当が力を尽くしてくれた
製品を選定するときには、大塚商会の営業の方と一緒に行いました。私たちは製品知識がまったくありませんので比較しようにも分かりません。しかし、大塚商会の営業担当の方が太洋マシナリーの業務をよく理解してくれて、その上での各製品の「比較表」を作ってくれました。それがそのまま稟議書類となって導入が実現し、結果として大きな導入効果をもたらしました
評価3:製品を活用してほしいという強い意図がある
定期的にセミナーや展示会などの情報発信をされていることもそうですが、営業、技術の方ともに大塚商会の方と話をしていると感じるのは、製品を「売って終わり」ではなく、「活用してほしい」という強い意図です。ですからこちらももっと活用しようという気持ちになります。
「もっとこうしてほしい」という大塚商会へのご要望もあればお聞かせください。
COSMOSWorksやSolidWorksのようなよい製品があれば、経営陣にも同席をしてもらい、今後はどんどんプレゼンやデモを行ってほしいと思います。また、同業他社の事例なども紹介してもらうと、自社にとってどんなメリットがあるのかが具体的な活用イメージを持ちやすいと思います。
今後の期待
太洋マシナリーの今後の展望についてお聞かせください。
太洋マシナリーでは、今後も引き続きCOSMOSWorksを活用していくとともに、SolidWorksの台数を増やし新製品の開発に活用していきたいと思っています。また、お客様へのプレゼンツールとしてもSolidWorksを使っていく予定です。太洋マシナリーは、今後もお客様により満足していただける高品質の機械づくりを目指します。大塚商会にはこれからも変わらぬ厚いサポートを期待しています。今後ともどうぞよろしくお願いします。