オーダーメイドの製品設計に3次元CADを効果的に活用し、組立図の精度向上などを実現

有限会社輪野機器製作所

大阪市にある有限会社輪野機器製作所は、従業員8名の小さな会社ながら、開発力や技術力を活かした産業機械を開発し、製菓業界や食品業界の細やかなニーズに応えている。同社では以前から2次元CADを導入していたが、業務効率などの面から限界を感じ、3次元CADへの移行に踏み切った。その際、大塚商会から「SolidWorks Office Professional」を導入し、手厚いサポートを受けながら、設計業務の効率化と組立図の精度アップを実現。また、3次元CADを営業支援ツールとしても積極的に活用している。

本ページは大塚商会が発行している 「αソリューション」 から転載したものです。

上記機械の動作アニメーションが同社ホームページでご覧いただけます。 オーダー機械についてもお問い合わせください

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導入事例の概要

導入の狙い

2次元CADから3次元CADへの移行

導入システム

3次元CAD「SolidWorks Office Professional」

導入効果

設計業務の効率化と組立図の精度向上を実現し、3次元データを営業面でも有効活用

巧みな技術力と開発力で顧客の悩みを解消する機械を製造

有限会社輪野機器製作所は1963年の創業以来、製菓や食品業界などで使われる産業機械の設計・製造・販売を行っている会社だ。代表的な製品が、ようかんやゼリーなどの液体や粘体の食品を自動的に定量注入するポンプ式の充填機である。また「こういう機械は作れませんか?」という顧客の素朴な要望を実現するために、熟練した技術を駆使し、独創的なアイデアを絞り出し、自社内で企画・設計・加工・組立を行うことで低価格な特注製品を次々に世に送り出している。

「もともと機械づくりや修理が得意だった先代社長が会社を設立し、主にオーダーメイドの和菓子の機械をつくっていました。以来、商社を介してお客様の要望を実現してきたのですが、5年ほど前から、我々がお客様と直接コミュニケーションを取りながら、ものづくりを行うように徐々にシフトしました。その方がお客様の要望にジャストフィットする高品質の製品を効率的に製作できるからです」と営業・情報システム・購買担当の輪野 雄一郎氏は語る。

例えば、クリーム用の注入機は多くのメーカーが製品化しているが、バタークリームのような粘度の軽い生地は自然に下へと流れていかないので、注入機の中にスクリューをつけて、それを高速回転させることで下へ吹き飛ばしているのが一般的だ。ところが、その方式では泡立てたふわふわの生地が液状になってしまい、クリームの品質が下がってしまうという問題が生じる。しかし、同社はこの問題をある工夫を用いて解決している。

「バタークリームに非常にこだわりを持っている製菓メーカーのお客様が、丹精込めてつくったクリームの品質や味が落ちない注入器をつくってほしいと相談に来られたのです。そこで知恵を絞り、試行錯誤を重ねながら、これまでにない注入器を開発しました。具体的には、スクリューを低速で回転させながら、周りにへばりつくクリームをゆっくりとそぎ落とす仕組みを実現したのです。実際にその注入器を製造して納品したところ、『クリームの仕上がりがとてもよくなり、うちの製品にぴったりの機械だ』とお客様がとても喜んでくださったのです。そのお客様は、お菓子の中にバタークリームを注入しているのですが、ふわふわの状態で中に入れられるようになったことで食感もよくなり、以前に比べて注入量も減らせることになり、結果的に15%のコストダウンも図れたそうです」と雄一郎氏は、技術とアイデアを活かした同社のものづくりの強みを語る。

技術とアイデアを駆使してものづくりに努めているだけではなく、同社では、設計業務の効率化を図るため、CADシステムの活用にもいち早く取り組んでいる。そして2003年からは、それまで使っていた2次元CADから3次元CADへ移行し、大きな成果を得ている。

サポート体制が充実している大塚商会から3次元CADを導入

同社の設計業務をひとりで担っている代表取締役の輪野 耕治氏は、図面の管理が煩雑になる、製作を外注するときに手間がかかるといった理由から、2次元CADに限界を感じていたという。そうした中、CADの展示会に参加したことがきっかけとなり、思い切って3次元CADへ移行する決断を下したのである。

「2次元CADを使っている人は誰もが3次元CADに興味を抱いています。私もその例外ではありませんでした。そんなときに展示会で、たまたま大塚商会さんがCADに関するアンケートを取っていたのです。それに記入して提出したところ、営業の方がすぐに訪問してくれて、3次元CADの導入提案をしてくださったのです」と耕治氏は当時を振り返る。

その後、大塚商会が主催する3次元CAD「SolidWorks」の無料体験セミナーに参加し、3次元CADに挑戦したいという意欲が湧いてきたそうだ。

「3次元CADを導入すれば、これまで使っていた2次元CADのデータを、また一から作り直すことになるかもしれないと悩みもしました。しかし、うちのような小さな会社でも、3次元で設計ができれば、設計から製作までの一連の工程がもっとスムーズに運ぶのではないかと考えたのです。例えば、試作品を作る以前の設計段階で、完成品のイメージを確認することができますし、いろんな構造にチャレンジすることもできます。また、コンピュータの画面上で干渉チェックなどが事前に行えるので、製造工程に移行した際の手戻りが少なくなるのではという期待もありました」と耕治氏は3次元CADの導入に踏み切った理由を語る。

大塚商会との取引は今回が初めてだったが、3次元CADのサポート体制が充実していることも、導入を決断した大きな決め手になったという。「3次元CADを導入するのは初めてだったので、しっかりとしたサポートが受けられないと、やはり不安ですからね。その点、大塚商会さんは、最初からこちらの思いに誠実に応対してくれたので、きっと導入してからも面倒見がよいだろうと感じたのです」と耕治氏は語る。

「SolidWorks」を導入するにあたって、同社では、大塚商会の講習会に参加し、そのうえで訪問サポートやテレホンサポートなども受けたという。そのため3次元CADは初めてだったにもかかわらず、スムーズな導入が実現した。

「大塚商会のたよれーるのサービスは、電話で対応してもらえるのがいいと思います。電子メールだと、質問の回答までに時間がかかりますし、質問内容を要領よくまとめて記述するのも案外大変ですからね。また、同じ画面を見ながらリモートでもサポートしてくれたので、とても助かりました。こちらの事情に合わせた望み通りのサポートが受けられたと思いますね」と雄一郎氏も大塚商会のサポート力を高く評価している。

代表取締役 輪野 耕治氏

代表取締役 輪野耕治氏

「今や部品メーカーもネット上で部品データを提供していかないと生き残れない時代です。その意味では3次元CADが利用しやすい環境が整いつつあります。設計業務が効率化されれば、その分、新しい機械のアイデアを考える時間が増えるので有り難いですね」

営業・情報システム・購買担当  輪野 雄一郎氏

営業・情報システム・購買担当 輪野雄一郎氏

「実は、3次元CADを使った当社の取り組みは業界内で評判となり、NHKがテレビ取材に来たことがあるのです。テレビ放映されたのはわずか5分ほどでしたが、3次元CADがもたらす影響は予想以上に大きいですね」

組立図の完成度が大幅に向上。顧客との打ち合わせも効率化

3次元CADを使い、整合性を確認しながら設計段階で最終の修正まで行うことによって、組立図の精度を大幅に上げることができた。オーダー生産の場合、自社で製作した機械の改良も多いので、このことは非常に大きい効果だという。

「設計者の立場では、3次元CADを使ってパーツを改良して入れ替えることによって、組立図の完成度が即座に上がっていくところが一番のメリットです。というのも、2次元CADの場合は、パーツの寸法などを変えても製品の制作を優先させるので、組立図には反映させる時間がありません。完成した製品でも組立図は不完全ということがままあったのです。また当社では、試作品の造形モデルを業者に発注してつくってもらっているのですが、3次元データをそのまま電子メールで業者に送ったら、その3日後には造形モデルが送られてきました。これは、業者が導入している機械に『SolidWorks』のデータが対応していたからです。その意味では、汎用性の高い『SolidWorks』を選定してよかったと思いますね」と耕治氏は「SolidWorks」を導入したメリットを実感している。

バタークリームをふわふわのまま注入するための押し込み装置

バタークリームをふわふわのまま注入するための押し込み装置

同社では、「SolidWorks」を設計業務以外でも積極的に活用しており、その導入メリットは多岐にわたるという。

「オーダーメイドの機械を発注するお客様の中には、2次元の設計図を見ても製品を想像できない人もいますので、3次元データによって設計段階からリアルなイメージがお客様と共有できることは、すごく大きなメリットだと思いますね。最近では、部品メーカーさんがインターネット上で自社の部品の3次元データを配布しているので、そこからデータをダウンロードして活用できる利点もあります」と雄一郎氏も3次元CADの導入メリットについて語る。

さらに3次元CADを活用によって、思いがけない導入効果も出てきたという。「これまではお客様の現場で機械を見て、その寸法などを測定して手書きでノートにスケッチし、それを会社に持ち帰ってから2次元図面に起こしていました。しかし今は、現場にパソコンを持ち込み、その場で3次元のイメージを作成して相手に確認してもらえるので、お客様へのスピーディな対応が可能になったのです」と雄一郎氏は3次元CADの導入効果を強調する。

パーツの流用率アップが課題。営業支援ツールとしても活用

現在、同社では、「SolidWorks」と「SolidWorks Office Professional」を導入しており、「SolidWorks Office Professional」のデータ管理ツールである「PDMWorks Workgroup」も活用している。これにより、一つの製品だけで1,000点にも上るパーツの管理を行っている。特にオーダーメイドの場合は、自社で製作した機械を改良して別の顧客に納入するケースも多いため、3次元CADの導入でパーツの流用が簡易になったことは大きな利点といえる。そのため、同社では、3次元データがある程度蓄積された段階でパーツの管理を行うようになった。

「SolidWorks」によって設計の完成度が格段に高まっている

「SolidWorks」によって設計の完成度が格段に高まっている

さらに同社では、大塚商会にカスタマイズを依頼し、3次元CADファイルのコピーがしやすくなる流用コピーツールも導入し、煩雑なパーツ管理をより効率的に行える環境を整えている。

「今後は標準部品を増やし、パーツの流用率を高めていきたいと考えています。それによって、設計業務の効率化がより進められると考えています」と雄一郎氏は今後の展開に期待を寄せる。

また同社では、「SolidWorks Office Professional」のデザインコミュニケーションツールである「PhotoWorks」や「Animator」も効果的に活用し、3次元データを利用したカタログ作成やプレゼンなどに使う動画コンテンツの作成も始めている。

「今後は『SolidWorks』で作成した3次元データを営業面でも積極的に役立てていきたいと思います。リアルな3次元データをお客様にも見せることで商談もスムーズに運びますからね」と雄一郎氏は3次元CADを営業支援ツールとして活用することにも大きな期待を寄せている。

今回、3次元CADを導入したことで、設計業務の効率化を実現した同社だが、今後も3次元データの有効活用を進めることで他業務の能率もあがり、同社の事業発展につながっていくことだろう。

有限会社輪野機器製作所

業界製造
事業内容産業機械の設計・製造・販売
従業員数8名(2007年4月現在)