「平面的思考から立体的思考へ」を合い言葉に、3Dプリンターとの連携など活用の幅を広げる

株式会社酒井機材製作所

北海道石狩市で金属加工業・樹脂製品製造販売を営む株式会社酒井機材製作所(以下、酒井機材製作所)では、15年以上前にSOLIDWORKS製品(3次元CADおよび応力解析ソフト)を導入。多様化する顧客ニーズへの対応力と商品開発力のさらなる向上をめざし、高速・高精細3Dプリンター ProJet 3500 HD Maxとの連携などにも取り組んでいます。同社における、3次元データ活用の経緯と「3次元化」の効果について詳しくお話を伺いました。

酒井機材製作所

創業1958年(昭和33年)。鋼製二重床材料・各種架台・耐震材料・ケーブルラック、材料・ストラクチャー材料・高架、低架用立架材料・配線盤耐火材料、給電線支持器具、太陽光架台など、電気通信および移動用通信インフラにおける基礎部材の設計、製作、販売、施工を手がけています。近年では、その経験と技術力を活かし、太陽光発電分野におけるビジネスも拡大しています。

SOLIDWORKSおよびProJet 3500 HD Maxの利用状況

酒井機材製作所におけるSOLIDWORKSとProJet 3500 HD Maxの利用状況について教えてください。

弊社では、設計の効率化と時間短縮はもちろんですが、顧客とのコミュニケーションを深めるためにも、SOLIDWORKSを活用しています。

現在、SOLIDWORKSおよびSOLIDWORKS Simulationを3ライセンス導入済みです。さらに、人材育成・営業力の向上を目的とし、本社営業技術・東京支店・仙台支店に導入しました。

また、ProJet 3500 HD Maxに関しては、SOLIDWORKSで設計したデータの試作出力および製造に利用しています。

3Dプリンター ProJet 3500 HD Max

3Dプリンター ProJet 3500 HD Max

SOLIDWORKSによる設計の効率化と時間短縮

ではまず、SOLIDWORKSによる設計の効率化と時間短縮について教えてください。

弊社の場合は、顧客のニーズに合わせた少量多品種の商品を製造しています。そのため基本的な形状が似通っていても、寸法や細部の形状が異なるため、決められた寸法に合わせて設計をしなければなりません。

2次元、すなわち平面図だけで設計するよりも、3次元で設計を進める方が頭の中でイメージしたものを視覚的に確認できます。パーツをアセンブリした後でも、穴の位置など細かい点を調整、変更できるのも便利です。後で変更できる細かな部分はラフに作って、その分コア機能の設計に集中できます。そのため、より自由かつ柔軟な発想で設計に取り組むことができ、精緻なものづくりが可能となりますし、やり直しや修正、パーツの流用なども容易に対応できます。

SOLIDWORKSによる設計画面

SOLIDWORKSによる設計画面

また、形状や材質、加重、風力などの違いによる耐久性を応力解析でシミュレーションしながら設計できるので、作業の効率化と時間短縮を図ることができます。弊社では、卓上型引っ張り試験機なども導入していますが、設計段階で寸法や形状を問わず、多種多様な応力解析ができるメリットは計り知れません。

さらには、これまでは強度が高ければ問題のなかった製品でも、近年は「軽さ」や「複雑さ」といった強度とは相反する要素も求められるようになってきました。そのような製品を設計するのには経験やノウハウが必要ですが、SOLIDWORKSのような設計・解析ツールがあれば、経験の少ない技術者でもきめ細やかな開発が可能となります。

SOLIDWORKSによる顧客とのコミュニケーションの深化

「顧客とのコミュニケーションを深める」という点について教えてください。

営業担当者が顧客に製品の説明をするときに、SOLIDWORKSのモデリングデータを活用しています。

従来、お客様への製品説明は設計図面あるいは簡易絵図(いわゆるポンチ絵)を使って行っていました。しかしそうした二次的な図面よりも、直接、モデリングデータを使った方が、グラフィカルで理解しやすく、かつ設計意図を明確に伝えることができます。

このほか、各種解析の結果報告をするときも、解析数値にモデリング図を添えることで、解析結果を視覚的に提示することが可能になります。3次元CADの導入により、お客様への視覚的かつ明確な説明・報告が可能になりました。

SOLIDWORKSによる複数構造物の要素解析例

SOLIDWORKSによる複数構造物の要素解析例

SOLIDWORKSによる営業力のさらなる向上

営業力の向上についても教えてください。

「顧客とのコミュニケーションを深める」という点にも共通する部分はありますが、これまで営業の現場では設計された結果をカラープリンターで出力したり、ビューワーで見せたりといった使い方をしていました。

同業他社においては、まだ3次元CADの普及は進んでいないと認識していますが、3次元CADが容易に導入できる環境が整いつつある現状では、他社でも同様の使い方をすることが想定されます。そこで現在、弊社が進めようとしているのは、3次元が分かる営業担当者の育成による営業力の向上です。

これまでも、ものづくりの現場では「図面が読める営業」が重宝されてきました。それを3次元でも実現しようという取り組みとなります。結果が見えるようになるまでは時間がかかるかも知れませんが、3次元、すなわちSOLIDWORKS Simulationが分かる営業担当者が増えれば、説明の場でお客様から出された要望や要改善点を、そのままデータに反映し、改善されたデータをもう一度見せることも可能になります。

顧客のニーズやその変化へと柔軟に対応して、より付加価値の高い商品を迅速に提供できるようになると期待しています。

営業部 開発担当部長 四戸則義氏

営業部 開発担当部長 四戸則義氏

3Dプリンターによる試作出力および製造

試作出力および製造についても教えてください。

SOLIDWORKSで設計したデータを3Dプリンターで試作出力しています。さらに、材質や精度に問題がなければ、そのまま製品として納品することも少なくありません。

3Dプリンターを導入したねらいを教えてください。

これまで、3Dモデリングマシン(切削加工機)を使って、社内で試作品を成形することもありましたが、使いこなすためにはある程度の技術や経験が必要です。3Dプリンターを利用すれば属人化せず、だれでも、簡単かつ短時間で、試作品を成形することができ、結果として設計工数の短縮や品質の向上につながると期待しました。

また、商品によってはそのまま納品できるようにもしたいとも考え、予算が許す限りの精度が高く、材料の種類が選べる製品を選択しました。数十万円の3Dプリンターでは、精度が低く材質も選べないので、弊社にとっては試作品成形の利用価値も低いと考えました。

ProJet 3500 HD Maxによる成形例(ハゼルーフサポート:太陽光パネル設置部品)

ProJet 3500 HD Maxによる成形例(ハゼルーフサポート:太陽光パネル設置部品)

SOLIDWORKSおよびProJet 3500 HD Maxの導入効果

SOLIDWORKSとProJet 3500 HD Maxの導入効果について教えてください。

正直なところ、SOLIDWORKSを使い始めた当時は不満もありました。しかし、最近は使い勝手や機能が大幅に向上して直感的に操作でき、ProJet 3500 HD Maxとの連携も含め、経験やノウハウの少ない技術者でもベテラン技術者に匹敵する高い品質の製品を短期間で設計できるインフラとなっています。

そういう意味で、SOLIDWORKSや3Dプリンターの導入・活用は、技術継承という課題を解決する手段の一つになっているとも捉えています。現在は、これまでのように時間と手間をかけてゼロから人材を育てていくのは難しくなっています。一方、大学などでPCや3次元CADを経験した人材は数多くいますので、このような設計インフラを活用すれば、即戦力とはいかないまでも、これまでほど時間をかけずに戦力として計算できるようになります。

営業部 開発担当 主任 二村悠太氏

営業部 開発担当 主任 二村悠太氏

また、弊社のように比較的小さな規模で、地域に根ざして活動している企業にとって課題となっている人材の確保を解消する手段の一つにもなっていると考えています。

分かりやすく言えば、「先進的な環境をそろえれば、それが技術者または学生にとって魅力となり、優秀な人材を確保しやすくなる」ということです。

15年前にSOLIDWORKSを導入したときも同様のねらいがありました。実際、二村をはじめ「3次元CADが使えることが酒井機材製作所への入社理由の一つだった」という技術者もいます。 今回、3Dプリンターを導入したのにも、同様の背景があります。「この機械が使えるなら…」と技術者に感嘆されるくらいのスペックも必要だと考えました。

SOLIDWORKSを選んだ理由

SOLIDWORKSを採用した経緯、理由を教えてください。

導入にあたっては、東京で開催されている展示会に足を運び、数種の製品を比較検討しました。

コスト負担が大きく、弊社では手が届かない製品も多かったのですが、SOLIDWORKSは機能、使いやすさ、コストパフォーマンスのどの点でも優れており、弊社の導入目的である会社全体の技術品質の底上げや顧客への説明の改善に最も適していると思われました。

また、応力解析ができることも必須要件でした。当時はまだサードパーティ製品だった解析ツールSOLIDWORKS Simulationとの連携がスムーズであることも大きな評価ポイントとなりました。

SOLIDWORKSの導入を検討している企業へのアドバイス

SOLIDWORKSの先輩ユーザーとして、導入を検討している企業へのアドバイスがあればお聞かせください。

弊社ではゼロからのスタートだったのでとても苦労しました。実際に目に見える成果を上げるまでには時間もかかりました。

そういう意味では、これから本格的に導入・活用しようとしているのであれば、ゼロから人材を育てるのではなく、経験者を迎え入れたり、大塚商会のような経験とノウハウが豊富なパートナーを見つけて、ロケットスタートする体制を整えることが重要だと思います。

そうすれば、すぐに導入の成果も出ますし、若手の育成にもつながりやすいと思います。

大塚商会への評価・期待

大塚商会への評価と期待をお聞かせください。

SOLIDWORKSを導入した当時は、北海道で弊社規模の企業が3次元CADを導入した例はまだ少なく、サポートどころか取り扱っているところも大塚商会以外にはなかったと記憶しています。そういう状況でしたので、当初は大塚商会のサポートに満足できないこともありましたが、それにめげることなく、粘り強く対応してくれたことにはとても感謝しています。

現在の大塚商会は技術力も高く、SOLIDWORKSだけでなく、例えばProJet 3500 HD Maxもそうですが、関連する先進的なソリューションも積極的に紹介・提案してくれるので、弊社にとって不可欠なパートナーとなっています。 現在進めている各拠点へのSOLIDWORKSの導入・トレーニングに関しても、手厚くサポートしてもらっているので助かっています。

また、業種・業態の異なる企業での利用状況に見知が広いことも、大塚商会ならではの強みだと思います。「平面的思考から立体的思考へ」という弊社の合い言葉を具現化するために、今後もSOLIDWORKSに限らず幅広い情報の提供と手厚いサポートに期待しています。今後ともよろしくお願いします。