私たちが目指す教育の実現のためにはいまやSolidWorksはなくてはならない存在になっています

職業能力開発総合大学校東京校

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職業能力開発総合大学校東京校 機械系 前田晃穂教授(左)中村佳史教授(右)太田和良講師(中央)

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職業能力開発総合大学校東京校について教えてください。

職業能力開発総合大学校東京校は、厚生労働省の所管のもと、独立行政法人雇用・能力開発機構が運営する工科系の国立大学校です。職業能力開発促進法に基づき、機械系、電気・電子系、情報系、建築系、化学系、デザイン系の各専門分野における実践教育を、1コース定員20名の少人数体制で行っています。

ここ小平市にある東京校は、専門課程2年、応用課程2年の4年制の大学校です。1974年の創設当初は2年制8学科のみでした。その後1999年に応用課程4学科が新設されました。

私たちが指導を行っている「生産機械システム技術科」は、応用課程4学科の一つで、ものづくりの基本となる「創造力」「企画力」「技術力」の総合的な育成を実践的なカリキュラムを通じて行い、製造業の現場で活躍する人材育成を目的としています。

職業能力開発総合大学校東京校
(小平市)

仮想工場とは何か

生産機械システム技術科の教育の特徴を教えてください。

私たちの教育の特徴をあらわすキーワードの一つに「仮想工場」があります。職業能力開発促進法に基づき10年前に応用課程(3-4年)が新設された理由として教育現場に仮想工場を作るという考えがありました。

仮想工場についてもっと詳しく教えてください。

実際の生産現場にできるだけ近づけた教育現場のことです。施設や設備はもとより、ものづくりのプロセスも生産現場で実際に行われていることを実施します。

学生たちは、2次元CAD、3次元CAD、CAM、CAEなどで設計の基本技術を学びますが、設計するだけで終わることはなく、必ずそれを実際に作ってもらいます。実習室にはマシニングセンタ、ワイヤーカット放電加工機や射出成形機など、製造業の現場で使われる工作機械が一通りそろっており、考えたものを実物に置き換える時に何が必要なのか、実習の中で学びとっていきます。

さらに、製造現場に不可欠な「コラボレーション」について学ぶことも「仮想工場」の重要な部分です。そのため4年生では他科との混成グループで課題を行っています。これについては後ほど詳述します。

中村教授

「製造業界で活躍するために必要な実践教育を行っています」

卒業生はどのようなところに就職しているのですか。

卒業生はほぼ100%の就職率で工作機械メーカー、金型メーカー、エレベーター会社、缶メーカーなどに就職しています。実際の現場に即した図面をかけるように教育をしているため、 各企業からは即戦力になるという評価をいただくことが多いです。

生産機械システム技術科のカリキュラムの例をご紹介ください。

カリキュラムは大きく4段階あります。3年生で行う精密加工応用実習、標準課題および4年生で行う開発課題1と開発課題2です。それぞれについてご説明します。

1.精密加工応用実習(3年生10単位)

精密加工応用実習は3年生になって最初の3カ月間で行う実習で課題はマシンバイス(万力)課題です。主目的は2次元CADや機械および工具の新しい活用法を覚えることと、学生2名で一台を作ることでグループ最小人数での取り組みを体験させることです。皿小ねじと六角穴付きねじ以外は全て製作させます。

2.標準課題(3年生20単位)

標準課題は精密加工応用実習終了後の6カ月間(2・3期)で行う実習で、課題は「自動ワーク選別・組立装置」です。5~6人でグループを組み、提示された課題基本仕様を満たす装置の設計、製図、加工、組立調整、制御装置組み込みおよび自動運転までを完成させます。標準課題の設計、製図では2次元CADを使い寸法公差、幾何公差、機械加工および組立調整を考慮した機械図面作成技術を習得し、最後に各グループは完成品の自動運転デモンストレーションと発表報告のプレゼンテーションを行います。

(左)マシンバイス部品 (中央)マシンバイス組立 (右)標準課題完成品

3.開発課題1(ハノイの塔)(4年生16単位)

全国の職業能力開発大学校の応用課程11校に標準課題はありますが、この開発課題1は東京校のオリジナルとして4年前にスタートし、東京校だけ行っている課題です。ハノイの塔とはパズルゲームの一種で、3本のポールに積み重ねられた大きさの違うコマを一定のルールで移動させるものです。課題1では、このゲームを自動で行う機械を製作します。

この開発課題の目的は、先ほど申し上げた通り「コラボレーション」です。この開発課題1の大きな特徴は「機械」「電子」「情報」の三つの科の学生各3~4人、総勢9~10人を混成したグループ学習により、実際のものづくりの現場におけるコラボレーションの実際を学びます。「機械」の学生は、この開発課題1から3次元CAD「Solidworks」で全て設計をし、機械図面を2次元CADで編集します。
6カ月という決められた期間でのコラボレーション製作ですから、当然「機構はできているけれど電子の部分が間に合わない」などのタイムラグが発生しますので、計画通りに行うというプロジェクト管理についてもここで学ぶことができます。指導側は、6カ月の間に2回報告をさせて進行状況をチェックします。最後に発表報告会とグル-プ対抗スピード競技会で終了です。

(左)「ハノイの塔」のルール (右)学生が作った製品。機構と制御装置、PCモニターで一つの製品となる

4.開発課題2(4年生36単位)

開発課題2は、応用課程2年間の総まとめとなる卒業製作です。ここでも開発課題1と同様に混成チームによるコラボレーションで行います。決まっているのは予算だけで、何を作るか、どのように作るかなどの制限はありません。例えば介護の椅子、空き缶の選別機、金型、ゲームなど、テーマや内容によってグループ数および構成人数が決まり、学生は自分たちが作りたいものを考えてそれを完成させます。

設計は全てSolidWorksで行います。この段階になると、CADに関しては指導側はもう教えることがないほどになっており、学生たちはSolidWorksをフル稼働させて使いこなしています。

開発課題2の例。AMC(Auto Mold Changer:金型自動交換機)のSolidWorks設計画面(左)と実機(右)

AMC(Auto Mold Changer:金型自動交換)システムの開発 詳細(PDF)

2次元CADと3次元CAD

―職業能力開発総合大学校東京校において、CAD教育がどのような方針で、どのように行われているかお聞かせください。

当校ではCADの操作を教えるのではなく、CADの根本的な考え方を教えています。CADを使うとどうなるか、使わないとどうなるか。2次元CADと3次元CADはどう違うか、というように、設計におけるそれぞれのツールの役割を実際にものづくりを行いながら覚えていきます。

応用課程で最初に行うのは2次元CADによる設計です。

2次元から入る理由は、学生に「図面に寸法を入れ、それをぴったり合わせる」という感覚を覚えてもらいたいからです。今は3次元CADでモデリングしたものをワンクリックすれば簡単に2次元図面が作れてしまいますが、それでは公差もなく設計の勉強にはなりません。まずは学生たちが頭を使って2次元CADで正確な図面を書くことが設計教育の基本だと考えています。

そして、これが非常に重要なステップなのですが、2次元で設計したものを実際に製作し、その後半年なりの時間をあけてから今度は同じものを3次元設計で行います。例えば前出のマシンバイスは、3年の1期で設計を行い、実際に作り、これを半年後にもう一度3次元CAD(SolidWorks)で設計します。実際に製作を間に挟むことで、学生は2次元CADとは何か、3次元CADとの違いは何かをより深く理解するようになります。

4年生になると、製造業の現場に即して3次元CADで設計を行います。設計段階では2次元CADは使いませんが、モデリングした後に機械図面を2次元図面に落として確認を行っています。

前田教授

「まず2次元CADで設計の基本である寸法の書き方を学ばせます」

SolidWorksを200ライセンス使用

ここからは、SolidWorksの活用についてお伺いします。まず、SolidWorksは何名に対して何ライセンス使用していますか。

当校の機械系の学生数は4学年合わせて120名で、それに対して200ライセンスを使用しています。

SolidWorksを選んだ理由を教えてください。

学生が使いやすいこと、価格が手ごろであることが決定の理由です。あまりコマンド等が多すぎて 操作に時間がかかるものでは授業時間のほとんど操作になってしまってこちらがやりたい教育ができません。その点SolidWorksは使いやすさ、価格、シェアの大きさなど、全ての条件をまんべんなく満たしています。

以前からSolidWorksを100ライセンス使用していましたが、さらに増設をしたいと考えていました。2008年のリプレイス時に大塚商会に相談したところ、SolidWorksの教育版ライセンス200本パッケージがあるということを聞き、他科(産業デザイン科)でも使用することにして購入を決めました。

教育ツールとしてのSolidWorks

教育ツールとしてSolidWorksが優れている点は何だとお考えですか。

限られた時間の中、学生全員を最終到達点まで到達させるというのが私たちの役割です。SolidWorksは学生の目標到達をサポートする上で、いまや欠かすことの出来ないものになっています。私たちが感じているSolidWorksの具体的なメリットは以下です。

1.習得の時間がかからないこと

CADを使ってものを作る上で習得する時間がかからないことが教育ツール向きだと思います。私たちが力を入れている「コラボレーション」においても、学生が自分で操作を覚え、アセンブリなどを自由自在に行えるので便利です。

2.SolidWorks Simulationがあること

4年生では解析の授業を行います。SolidWorksの中には解析ツールSolidWorks Simulationがあるので、解析ソフトを別に用意する必要がありません。

3.実習室でも気軽に使えること

200ライセンスあるので、CAD専用室だけでなく実習室の工作機械の隣でも使えるようにしています。設計変更の必要があるとき、わざわざCAD室まで行く必要がなく現場で変更を行うことができます。気軽に、まるでメモ書きのように使えるところが教育ツールとして非常に良いと思います。

太田講師

「実習室でもSolidWorksを使っています」

大塚商会への期待

大塚商会への今後の期待をお聞かせください。

大塚商会には、教育用ツール導入に際していつも相談に乗ってもらっています。今後もSolidWorksを始め最新のツールを活用しながら今後もものづくりの現場で活躍できる実践技術者教育を行っていきます。大塚商会には、今後も引き続き私たちのサポートと、優れた教育ツールの紹介を行っていただいきたいと思います。大いに期待しています。