主な内容
- FlowDesigner 製品特徴
- 導入事例と製品動画
- 5分で分かる 解析事例
データセンターの冷却方式から温度分布を把握し、サーバー配置を考える
近年、都市近郊におけるデータセンター建設が急増しています。AIによる大規模データ処理の需要拡大に伴い、高性能GPUサーバーの導入が進んでおり、これらは高い消費電力と発熱を伴うため、空調設計の最適化が不可欠です。
今回は空冷方式に焦点を当て、FlowDesignerを用いた空調解析事例をご紹介します。
FlowDesignerでの空調解析では、「風量・熱量の収支が均衡している状態(収支ゼロ)」を前提にモデルを構築します。これは、解析対象空間において「入ってくるエネルギー」と「出ていくエネルギー」が釣り合っていることを意味します。
空調機モデルは、給気・排気の風量、熱量などを明確に定義できるため、収支を取るのが簡単です。
図1:空調室の収支
データセンターモデルの収支は、空調機モデルに比べて複雑です。
ラックサーバー自体からの機械排熱風量(ファンによる)と、空調機からの吹き出し風量が、アイルキャッピングされているため、収支が合うようにモデル化を行う必要があります。
図2:FlowDesignerで作成したラックサーバーモデル
図3:FlowDesignerで作成したコールドアイルモデル
データセンター設計において重要な課題の一つが「冷却効率の最適化」です。空調方式の違いによって、温度分布や冷却性能に大きな差が生じます。
ここでは、FlowDesignerを用いて解析した三つの代表的な空調方式についてご紹介します。
構造 | 床下に設けた空間を冷気の供給経路とし、コールドアイルの足元から冷風を供給する方法 |
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特徴 | 排熱はコールドアイルの外に排出するため、ホットアイルとコールドアイルが分離され、効率的に冷風を取り入れることができる |
解析結果 | ラック全体に均一な温度分布が形成されることが確認された。下層から上層にかけて温度が緩やかに上昇する成層構造が形成され、冷却効率が高い |
図5:システム図(空調床吹きタイプ)
図6:下から見上げた解析モデル図(空調床吹きタイプ)
図7:上から見下げた解析モデル図(空調床吹きタイプ)
図8:解析結果(空調床吹きタイプ)
構造 | 天井裏のダクトから冷風を供給し、コールドアイルの上部からラックサーバーを冷却する方法 |
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特徴 | 排熱はコールドアイルの外に排出するため、ホットアイルとコールドアイルが分離され、効率的に冷風を取り入れることができる |
解析結果 | 上部ラックは十分に冷却される一方で、冷気が下層まで届きにくいという課題がみられた |
図9:システム図(空調天井吹きタイプ)
図10:下から見上げた解析モデル図(空調天井吹きタイプ)
図11:上から見下げた解析モデル図(空調天井吹きタイプ)
図12:解析結果(空調天井吹きタイプ)
構造 | 空調機をラックの側面に平面設置し、アイルキャッピングされたコールドアイル内に直接冷風を供給する方法。冷風は横方向に流れ、ラックの吸気面に直接当たる |
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特徴 | 排熱はコールドアイルの外に排出するため、ホットアイルとコールドアイルが分離され、効率的に冷風を取り入れることができる |
解析結果 | 空調機からの距離が離れるほど圧力損失が生じ、冷風が届きにくくなるため、遠隔部は温度上昇の傾向がみられる |
図13:システム図(空調横吹きタイプ)
図14:下から見上げた解析モデル図(空調横吹きタイプ)
図15:上から見下げた解析モデル図(空調横吹きタイプ)
図16:解析結果(空調横吹きタイプ:空調機から近い断面)
図17:解析結果(空調横吹きタイプ:空調機から遠い断面)
空調方式により温度分布が大きく変化するため、FlowDesignerによる解析は設計初期段階での方式選定に有効です。また、空調方式ごとの特性も理解できるため、横吹き方式では、冷却効率の観点から高負荷ラックを空調機の近傍に配置する設計が望ましい……など効率的なサーバー配置の方針も立てやすくなります。
今回は、同一発熱量のラックサーバーを用いた解析でしたが、FlowDesignerは異なる発熱量のサーバー混在モデルにも対応可能で、より現実的な温度分布の予測ができます。
作成したラックサーバーモデルや空調方式パターンなどをライブラリとして登録できるため、さまざまなパターンを効率的に検討できます。レイアウト変更などの際の検討にも使用できます。
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主な内容
FlowDesigner解析事例26後編:オフィスビルの室内温熱環境解析(シミュレーション編)
今回は快適なオフィス環境を実現するために温度環境を調べます。後編では、ArchiCADからインポートしたCADデータを用いた解析を行います。人体、機械、日射による発熱条件や壁などの熱伝導条件を設定し、シミュレーションから見えてくる傾向や課題とは?
FlowDesigner解析事例26前編:オフィスビルの室内温熱環境解析(モデリング編)
今回は快適なオフィス環境を実現するために温度環境を調べます。前編では、ArchiCADと解析ソフトFlowDesignerの連携や、ライブラリ機能を用いたモデルの作成方法をご説明します。空調能力や温度ムラの発生もシミュレーションで解析できます!
FlowDesigner解析事例23後編:オフィスビルの空調解析(BIMデータ活用術編)
「これまでに使用したCADデータはどのように作っているの?」という声にお応えし、解析を行う前にどのようなCAD/BIMデータを準備しているのかご紹介します。前編:ArchiCADデータを用いたオフィスビルの空調解析(シミュレーション編)とあわせてご覧ください。
FlowDesigner解析事例23前編:ArchiCADデータを用いたオフィスビルの空調解析(シミュレーション編)
第23回前編はBIMデータを活用し、あるビルの1室の温熱環境解析を行います。後編ではどのようにしてBIMデータを用意したのかという解析以前の準備段階をご紹介しますので、前編後編あわせてご覧ください。